72冊目
「忌館 ホラー作家の棲む家」
三津田信三
ある文学賞の新人賞応募作品に、私・三津田信三の名前がある、と友人から連絡があった。
応募した覚えがない私は戸惑うが、応募者ではなく登場人物として名前が出ているのだという。
しかし、「僕」という一人称で語られる、覚えのない「三津田信三」の物語に気味の悪さを感じるが、作者の意図は全く掴めなかった。
一方その頃、自分好みのイギリス式の古い洋館を見つけた私は、その洋館が賃貸物件だと知り、何とか貸してもらえないかと奔走する。
露骨に洋館に関わるのを避けたがる不動産業者たちの言動で、何やら曰く付きの物件であることは分かったが、自分好みの洋館に住めるという魅力には抗えず、ついに賃貸契約にまで漕ぎ着ける。
折しも関西地方を中心に発行されている老舗ホラー小説同人誌から連載の執筆を依頼されていた私は、その洋館をモチーフにしたホラー小説を書き始めたのだが…。
…………………………
いやこんな家住まんだろ普通(笑)
実際に洋館に住み、小説を書いている「私」と、
同じ間取りの洋館に引っ越してきて暮らし始める一家を描いた小説「忌む家」。
その二つが徐々に混ざりあってくる気持ち悪さは、流石です。
そのせいで、ちょっと分かりにくい所もありましたが、それも二つの世界が混ざりあっている、という表現のひとつなんだと思います。
そして、段々と明らかになる、洋館の過去。
そして、とても嫌な余韻を残すラスト。
読者に選択を委ねるラストですが、より嫌な方が真実だとするならば、途中で感じていた違和感は、そこで解決してしまいます。
嫌でない方だと、説明がつかない所がありますので。
そう考えると、ミステリ仕立てのストーリーテリングが上手い三津田さんのことだから、やっぱり「嫌な方」が真実なんだろうな、これは。
嫌なオチだ…。
嫌いなオチではないですけど。
それはそうと、講談社文庫版で読んだのですが、読み終わった後に、ふとブックカバー外して表紙を見たら……、
これ、ネタバレしすぎじゃね?