54.「ジェネラル・ルージュの伝説」海堂尊 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

54冊目
「ジェネラル・ルージュの伝説」
海堂尊



海堂尊さんみずからが語る半生・自作解説や、これまでの作品の登場人物一覧や相関図・年表などとともに、「ジェネラル・ルージュの凱旋」の前日譚として「ジェネラル・ルージュの伝説」という短編小説が収録されています。
ので、ここではその小説の感想を。




東城大学附属病院に勤める新米外科医・速水晃一は、自他ともに認める「期待の新人」。



しかし、傲岸不遜な態度や要領よく勤務をサボるその態度から、煙たがられ嫌われてもいた。



いつものように屋上の給水タンクの上で昼寝をしていた速水は、東城デパートから黒煙が上がっているのを発見する。



大量の搬送者が予測される事態だが、外科のトップ・佐伯院長を始め医局員のほとんどは学会のため東京に出張しており、留守組の責任者・黒崎助教授たちも江尻教授が講演をする公開市民講座に参加しており、外科にいる医師は実質速水のみ。



現時点での外科の責任者として非常事態宣言を発令し、受け入れ体勢を整えたまではよかったものの、次々に運び込まれる重症患者たちに迫り来る『死』に、入院患者のゆるやかな死しか経験していなかった速水は打ちのめされる。



自信を喪失した速水に喝を入れたのは意外な人物で…。



「ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)」という異名の元となった速水の伝説的行動が、今明かされる。



……………………



かっこええなぁー。
海堂作品の中でも「ジェネラル・ルージュの凱旋」が一番好きな私からすると、とても嬉しいサプライズプレゼントとも言える一編でした。



「ブラックペアン1988」や「ひかりの剣」で小生意気な若者だった速水は、こんな修羅場をたどって「凱旋」に繋がっていくんだなぁ、と感慨深いものがありました。



あと、一応オチ隠しのために名前は伏せますが、日和っていた速水に喝をいれたシーンはものすごくかっこいい。



これからも重要な脇役として活躍してほしいものです。