41.「妃は船を沈める」有栖川有栖 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

41冊目
「妃は船を沈める」
有栖川有栖



二つの別々の中編が、登場人物が何人かリンクしてて、ひとつの物語のようになる趣向。



前半が「猿の左手」

後半が「残酷な揺り籠」


「猿の左手」
夜の大阪港に一台の車がブレーキも掛けずに飛び込み、中に居た中年男性が溺死した。



男が多額の借金を抱えており、妻を受取人として一億円もの死亡保険に入っていたことから、当初は借金返済のため自殺したと思われていた。



しかし被害者の体内から睡眠薬が検出され、殺人の可能性がでてくる。寝ている被害者を乗せたまま海に飛び込み、そのあと車から脱出した犯人がいたのではないか、と。



しかし、向かいの埠頭で釣りをしていた目撃者たちは犯人が海から出てきた姿を見てはいなかったし、飛び込む直前の車から脱出した人影もなかったと証言する。



浮かび上がった容疑者は、それぞれ、『車は運転できないが泳げる』『足に障害があるため運転できないし、昔は泳げていたがもう泳げない』『運転はできるが、水恐怖症で膝元くらいですら水に入れない』という三人。共犯関係ならできるかと思いきや、結局運転者が水に入らないといけないので無意味。



一体犯人は?



超がつくほど正統派の有栖川ミステリーは健在。ロジカルな解法もよかったです。



「猿の手」なんていうベタなアイテムを使いつつ、しかしあくまでひとつのアイテムとして、効果的に使ってるのは流石です。



ちゃんと後半にもリンクしてくるし。



しかし探偵役・火村の過去はなかなか語られないな…。



急に過去エピソード総浚えしてシリーズ完結、となるよりはいいと思うけど。



もうひとつのシリーズの探偵役・江神二郎にも過去があるから(こっちはある程度語られている)気になるし。



どんどん本を出していってほしいと思います!