13.「パラダイス・クローズド」汀こるもの | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

13冊目
「パラダイス・クローズド THANATOS」
汀こるもの



自分のまわりで次々と人が死ぬ「死神体質」の兄・美樹と、兄の体質ゆえに幼い頃から警察や司法と関わりを持ち続けることを余儀なくされる「名探偵」の弟・真樹という美形双子が出掛けた小笠原諸島にある水鱗館では案の定密室殺人が発生。


世間でも有名な双子を暴漢やストーカーから守るため、そして美樹のもたらす被害を出来る限り穏便に済ませるために八代目(先代までの七人がどうなったのかは明白)の付き人をさせられている巡査部長・高槻は、予想通り過ぎる展開にげんなりしながらも捜査をし始める。犯人は招待客のミステリー作家たちの中にいるのか、館の使用人の中にいるのか、それとも…。



帯に「なまいきな新人」と書かれている通り、一般に「本格」と呼ばれるものを皮肉たっぷりに批判していくのはなかなか痛快だった。



十戒や二十則なんて今更全部守ってる人なんかいないだろうけど(忠実に守ってたら東洋では書けないし)、職業上(もしくは信条上)それに拘ってしまうミステリー作家たちを痛烈にこきおろすところとかは、これまでにない読み応え。


その点、ミステリー初心者にはやや敷居が高いかも。



笑ったのが真樹と高槻が初めて会ったシーンの回想。
「ぐちゃぐちゃの轢死体を前に、丁寧に現場検証をした上に写真まで撮ってから通報して、新米警官をドン引きさせていた。」



あのアニメで人気の小さい探偵さんも、きっと周囲をドン引きさせながらも頑張ってるんだろうなぁ。