ついにと言うかやっとと言いますか。
十代の終わりころTeamLifeJacketsで登山を初め、年数回ほど、夏もしくは秋の無雪期限定で北アルプスや南アルプスに行くという登山を続け、はや十数年。
冬の高所登山は常に憧れの対象で、いつか行きたいと夢見つつも、でも自己流で誰に教わるわけでもなく登山をしてきた自分たちにとって、冬山は簡単に足を踏み入れてはイケナイ世界と思っていた。
でも、ついに踏ん切りをつけて。
行ってきました、初めての本格的雪山登山。
夢が夢のまま終わったら、人生面白くないじゃん、と。
と言っても、自分だけで行くほど身の程知らずでもなく、またそこまでおバカができるほど若くもないし。
誰か経験者に連れて行ってもらうのが一番良いと思いつつ、そんな冬山エキスパートがそのへんに転がっているわけもなく。
こういう場合、身近に経験者がいない素人が誰かと一緒に冬山に入るには、大きく分けて3つの手段があるのです。
一つは、山岳会に入ること。
しかし、他にも釣りとか趣味も多く、また休日出勤もままあるジブン。
会のために休日すべてを山に捧げる人生など送れるはずもなく、人間関係も難しそうなイメージもあって却下。
もう一つは、ガイド登山。
つまり、個人で山岳ガイドさんを雇って、いろいろと教えてもらいながら安全の確保をしてもらいつつ登山するというものである。
しかし、当然ながらガイドさんの人件費をすべて出すことになるため、非常に高額。
爺さんになって小金を持つ身分になったら選択肢に入ってくるかも知れないが、当然ながら今はそんなことに大金を突っ込めるほど裕福ではないため、却下。
そして最後の一つ。
多人数参加のツアーで、ガイドさんの引率があるガイドツアーである。
これならば、多人数の他の素人さんと一緒なので、そんなに厳しい体験こそできないが、比較的安価に安全に冬山を体験できる。
安全に行くことが大前提、かつ経験値を上げるべくスキルのある人と一緒に行きたい。
なおかつ、あわよくば同じレベル・同じ趣味の人が集まるツアーなら、今後も一緒に山に行く友達もできるかも。。。
そんなわけで、好日山荘で見つけたガイドツアー登山に申し込んだわけです。
2013年2月16日(土)
集合場所は渋の湯。
名古屋から特急しなので塩尻を経由し、茅野へ。
そこからバスに乗って1時間弱。
茅野駅で電車を降りて着替えを済ませ、バス出発まで時間があるから切符を買ってから蕎麦でも食おうか・・・と思いつつバス停を探すと、そこには既に長蛇の列。
さすが通年営業の山小屋のある雪山登山のメッカ、八ヶ岳へ向かうバス。
結局、臨時便が出て2台で出発。
予定通り、11時半前に、渋の湯へ到着。
今回ジブンが参加するツアーは、総勢30名ほど。
それ以外にも山小屋主催のスノーシューハイクツアーの集合場所でもあったらしく、予想以上の人数である。
渋の湯から登りはじめ、最初はアイゼンもつけずに、北八ヶ岳らしい樹林帯の中を進む。
天気は快晴。
樹林帯の中は風もなく、登っていると暑いほど。
昨日かなりの積雪があったらしく、気温が低いこともあってさらっさらのパウダースノー。
ここでスノーシューとかして遊んでいるだけでも楽しそうである。
予定通り2時間弱ほどで、黒百合ヒュッテに到着。
小屋前で、ガイドの早川さんからアイゼンの装着やピッケルの使い方の講習を受ける。
世界の高峰を登ってきた国際山岳ガイドだそうだ。
ただのツアーと違い、添乗業務はすれど、所謂お客さん扱いはしてはくれない。
アイゼン着けるときは絶対立ったまま、片方1分以内でねー。雪の斜面で座ったり膝着いたりして装着してたら、すぐ滑り落ちてくからねー。
手袋は、絶対に3枚以上重ねて、インナーの一枚はどんな時でも絶対に外さないでねー。
稜線上の低温下で素手でアイゼンとか金属に触れると、すぐ凍り付いて皮めくれるからねー。
手袋外して一回手先が冷えてしまったら、そのあとどれだけ手袋をしても絶対あったかくならなくてそのまま凍傷になるからねー。
稜線上で風が吹いてるとき、絶対にザックとか手袋とか、物を雪の上にそのまま置かないでねー。
あっという間に飛んでなくなって致命傷になるからねー。ザックを下ろしたら、ピッケルで必ず確保してねー。
などと、冬山で気をつけるべき点の説明をいただく。
飾らない話し方、その眼光の鋭さ、ガイドさんという馴れ馴れしい呼称より、むしろ軍曹ないし教官とおよびした方が良いような雰囲気が漂う。
気温はおおよそマイナス十数度。
立ってじっと聞いていると、恐ろしく寒く、そして手足の指先がジンジンしびれて非常に痛い。
おかげさまで非常にリアルに「凍傷って痛いんだろうなあ」とか「極寒の中での体温維持って本当に大切なんだなあ」とか、想像できました(笑)
夕暮れ。
小屋の夕飯は質素。ご飯とみそ汁がお替り自由なので良しとしよう。
普段は夜の炭水化物を控えているけど、山に入るとご飯をモリモリ食べても結局痩せる。
使用するエネルギーが半端ないからだろう。
冬山は、体を温める熱量も必要なので、余計に腹が減るようだ。
今回も帰ってきたら体脂肪率が2%弱減っていた。
お腹周りの希望・・・じゃなかった脂肪も減り、見た目でわかるほど体型が変わっていた。
ダイエット女子、冬山に向かうべし。
夜。
消灯時間の20時半まで時間があるので、薪ストーブの前であったまっていたら、大蔵喜福さんが近くにやってきた。
椎名誠の怪しい探検隊のメンバーで、野田知佑さんや沢野ひとしさんらとお友達の、あの大蔵さんである。
実は、大蔵さんは好日山荘登山学校の講師をされているそうで、出発時のガイドさんの紹介のとき大蔵さんが出てきたときにはかなりビビった。
が、周囲の参加者は無反応。
年配者もいたのだけれど、みなさんあまりご存じなかったようで。。。
おかげさまで、薪ストーブの前に大蔵さんと座り、マンツーマンで1時間ほど話し込む至福の時間。
「大蔵さん、いつも本で拝見してます。怪しい探検隊のときからのファンです!」
と話しかけると、気さくに話をしてくれた。
「最近、怪しい探検隊もみんな歳とっちゃってね。めっきり活動してないよ。
僕が最年少なくらいだから、野田さんなんて70代半ばだし、椎名さんだって67か8くらいじゃないかな。」
「僕はね、マッキンレーに22回くらい登ってるの。今年も23回目に行くんだよ。アラスカ大学と共同でしてる研究があってね」
「チョー・オユーには4回登頂したよ。僕より年配のお客さん連れてね。酸素使えば自分の身体だけ上げる力があるならだれでも大丈夫」
「エベレストのサウスコルにいっぱいあった遺棄されたボンベとかね、今はもうほとんどないよ。なぜかと言うとね、再利用で売れるから、最近は、みんな持って帰るの。ボンベって10時間ぐらいしか持たないけど、1本8万円くらいするから」
「キリマンジャロって、大きい山でなだらかで、1,000m毎に小屋があって泊れるし登りやすいの。アイゼンなんて必要ないよ。あんまり簡単に登れるから、最後の山小屋でみんな高山病でぶっ倒れるけど。椎名さんたちとキリマンジャロ行ったときね・・・」
「若いころ雑誌とかの関係でね、沢野さんと知り合って、あの人も山をやるから、そこから仲良くなって・・・」
「栗城は、出発前には必ず僕に連絡くれるよ。年に2・3回は会うかなあ。野口健も僕が育てたようなもんでね」
などの至高のお言葉。
質問を挟む前に矢継ぎ早に話し出すほど、アグレッシブな話し方をされる方だった。
いやー、雪山に来て良かった!
などと幸せを噛みしめながら就寝。
翌朝、6時前起床。
外のテントはバキバキに凍っていた。
放射冷却もあり、おそらく夜間はマイナス20度ほどには下がっていただろう。
今日も快晴です。
日ごろから良い子にしていて本当に良かった!
朝飯を食べ、7時半に出発。
今日の行程は、黒百合ヒュッテから東天狗岳に登り、西天狗岳まで縦走して黒百合ヒュッテに降り、下山するというもの。
ヒュッテから歩き始めてすぐに中山峠を越え、20分ほどで森林限界を越える。
やはり木がないと風が強い。
一気に顔が痛くなり、バラクラバ(目出し帽)を着用する。
風が1m吹くと体感温度は1度下がるそうで、つまり気温がマイナス15度の稜線上で風速15mの風が吹くと、体感温度はマイナス30度近くになる。
今まさに、そんな感じ。恐ろしく寒い。
息苦しくて息で湿ったバラクラバを顔のしたにずらし、ちょっとしてもう一度着用したらカチカチに凍っていた。
前方に真っ白の西天狗岳を見ながら、東天狗岳頂上に向けて進む。
1時間半ほどの登りだったろうか。
東天狗岳登頂。
これから、眼下に見える稜線を縦走し、真正面に白く輝く西天狗岳へ向かう。
稜線をたどりつつ東天狗岳を振り返る。
目の前に、西天狗岳が白く輝く。
東天狗から30分ほどだろうか。
西天狗岳(2,646m)登頂。
ぐるっと周囲、360度すべて見渡せる。
風も穏やかになったので、しばし休憩。
赤岳、権現岳などの南八ヶ岳主稜方面。
南アルプスも見渡せる。
北側を向くと、蓼科山などの北八ヶ岳の山々。
その向こうに北アルプス。写真ではわかりづらいけど、槍ヶ岳、穂高連峰、その前に蝶ヶ岳、常念岳、右奥に立山連峰、鹿島槍ヶ岳。
北側には妙高山などの信越国境の山々、東には浅間山、南西側には御岳や乗鞍岳、中央アルプス。
まさに絶景。日本アルプスの名山をほとんど見ることができた。
下山開始。
やはり、登りよりも下りの方が緊張する。
でも今回のルートは初心者向けでほとんど危険個所もない。
さくさく降りて、予定時刻の11時ころ、黒百合ヒュッテに到着。
下山前に、記念に大蔵さんと一緒に写真を撮っていただきました(笑)
黒百合ヒュッテから1時間ほどで、登山口の渋の湯に無事下山。
路線バスの出発時刻(14時55分)まで2時間ほども時間があったので、温泉に入浴。
・・・の前に、温泉宿の廊下で前を歩いていた女性陣が何やら窓の外を指さしている。
猿かなんかいるのかな?と、見てみると。
天然記念物やんか!
温泉宿のすぐ裏に、なぜかカモシカ。
逃げるそぶりもなく、悠然としている。
こんな至近距離で見たのは初めてだ。
渋の湯にゆっくり浸かり、まだ有り余る時間のために風呂あがりの缶ビールと行動食のナッツで、山友達になってくれた仲間とプチ宴会。
バスやら電車の接続が悪く、茅野で夕飯がてら蕎麦を食べ、塩尻でさらに1時間ほどの乗り継ぎ時間があったので、一旦駅の外に出る。
スタバ的なカフェを探したがそんなものは塩尻駅前にはなく、その代わりにオサレなワインバーが!
場違いな山装備で登山靴をガッタンガッタン言わせながら、迷うことなくバーに入り、またプチ宴会(笑)
だんだん帰るのが面倒臭くなってきた・・・とか思い出すころにようやく特急に乗り込み、無事に帰宅したのでした。
いや、冬山サイコーでした!
死ぬことを怖がって冬山への一歩を踏み出せない方、死ぬ前に行っとくべきですよ、絶対!
死んだら行けないんだから!