

医療に選択肢を増やしたい
今や2人に1人ががんになると言われる時代、いつご自身やご家族ががんになってもおかしくありません。そんななか、それがご自身に降りかかることも考えておかなくてはならないでしょう。
ある日、突如として降りかかる余命宣告。
それを受け止めることができますか?
自宅に戻り家族にそれを伝えられますか?
実際そのときになると、必死に治療法を探すと思います。そこで新薬や新しい治療法に加えて、選ばれることが多いのが漢方です。
この漢方、すなわち中国医学をもっとメジャーにしたい、そして、その結果、医療に選択肢を増やしたいという想いを込めて企画しました 。
そもそも中国医学とは何なのか、ということですが、皆さんになじみのあるのは漢方薬や鍼灸ではないでしょうか。これが中国では、医療の最先端で活躍しています。脈診や顔色、その他患者さんの様子を観察し、体質を元から改善するのです。そして虚証と言われる衰弱傾向を回復させることができます。具体的に言うとICUで人工呼吸器を使わずにツボ療法(手を使うだけ)で、回復させたりします。これが、2400年以上受け継がれてきた中国医学の実像です。

看護師さんをはじめ医療従事者にこそ中国医学を知ってもらいたい
中国医学を学ぶことで、患者さんと向き合う医療従事者の意識が変わります。
咳が止まらなくてつらい思いをしている入院患者さんが目の前にいたとしましょう。看護師さんであれば担当医に咳を止めてくれるように依頼しますよね。すると担当医は咳を止める薬を処方すると思います。その結果、咳止めの薬の副作用で治療が遅れたり、他に新たな疾患が発生したりすることがあります。しかし中国医学は副作用を出さない治療も可能です。がん患者さんが咳に苦しむ原因を中国医学からみることで、患者さんを楽にしてあげることができるのです。
その他にも、ターミナルケアで疼痛に悩まされる患者さんを例にとっても、ツボ療法を学んでいれば、薬を使わずとも痛みを止めることも可能です。もちろん、そのためには病態生理の基礎を学ぶ必要がありますが、明日からでもすぐに活かせることも少なくありません。
また、皆さんにとって大切なことは、患者さんの症状や病気をみることだけではありません。病原以外の環境因子をアセスメントして、衣・食・住の生活環境の改善をサポートすることも重要です。看護、介護ともに患者さんの環境を知ることで病気の原因を知り、環境を改善することで元から改善してQOLを向上させることが可能になります。そのためには、衣、食、住の指導やケアを行うことも大切です。中国医学にそのエビデンスを求めることができます。
これらを実行するためには、患者さんから話を聞き、患者さんのことを十分に知ることが大切ですが、これは皆さんが普段からされていることだと思います。そのうえで、明らかとなってきた主訴以外の症状や痛み、つらさがあれば、和らげてあげたいと多くの医療従事者が思っていることでしょう。そのヒントが中国医学にはあります。
例えば、入院中の浮腫や不眠、四肢の筋萎縮、褥瘡が挙げられます。それら主訴ではないけれども、とても悩ましい症状が緩和できれば、医師が他の薬や治療の副作用に悩まされることもなく、治療の効率も高まる はずです。皆さんがツボ療法や食事、アロマケアなどを行うことによって環境改善を行うことができます。
ターミナル期の患者さんに対して、できることが少ないという声を看護師さんから聞くことがありました。そんなことはありません。日々、ベッドサイドを頻回に訪れ、患者さんの様子や変化を敏感に感じ取っている人たちにしかできないケア (中国医学のツボ療法や入浴療法、ストレッチケアなどの運動養生、食事や温熱療法など)が、中国医学を知ることでもっと増えていきます。

まず現場で使える中国医学の本が必要
患者さんを楽にしてあげたい、笑顔にしてあげたい、その皆さんの思いに、中国医学が必ず役に立ちます。そのために、まず中国医学を知ってほしいと思います。「現場で使える中医診断学の本」を作ります。ぜひ、一緒に中国医学を学びましょう。
この本は、中国医学の診断をベースにした現場で使える体質診断をテーマにします。中国医学の診断法の舌診、顔色や患者さんの体質に合わせた診断法、そしてそれに合わせた環境づくりとして食事や生活改善法などによるケアを具体的にお伝えします。
この本が、医療に選択肢を増やす第一歩となることを願って…!