家庭用の蛇口は一体いつから、


【ひねる】という左右の動きから、


【上げ下げ】という上下の動きに、


シフトチェンジしていったのか。




【ひねる】
photo:01






【上げ下げ】
photo:02






僕がまだ、


「プロ野球選手になって、ホームランを年間100本打つ!」


という夢を、


野球部でゴリゴリの補欠だったにもかかわらず、


異様に強く持っていた小5の頃は、


友達ん家の蛇口は全て、


【ひねる】


だったと思うんだが、


僕がその後、


「東大に入って、久米宏の後釜としてニュースステーションのキャスターになる!」


という夢を、


担任に怒られて模試で東大を志望する事すら出来なかったにもかかわらず、


異様に強く持っていた高2の頃から、


友達ん家とか行くとチラホラ、


【上げ下げ】


がお目見えするようになり、


今や、


【ひねる】と【上げ下げ】が双璧で、


【自動センサー】がごくたまに、


といった勢力図と相成り、


そして結局、


久米宏の後釜は古館伊知郎に取られ、


ホームラン数0本の僕は現在、


【上げ下げ】


に四苦八苦する日々を送っている。




うちの蛇口が、


(上げ:水止まる)
(下げ:水出る)


という【上げ下げ】なのだが、


場所によって、


(上げ下げ)と(出る止まる)が、


真逆をかっ飛ばしてきたりして、


そこで僕は惨事に陥るのだ。




「止めるつもりが逆に超出る」




何度もこの惨事に出くわしてるのに、


毎度一瞬呆然としてしまう。


何度もこの惨事に出くわしてるなら、


何度も引っかかるなよという話だが、


何度も引っかかってしまうのだった。


そして、


なけなしの脳みそを駆使して、


ここは家とは真逆なのだ!


と自らに言い聞かせ、


体が真逆を覚えるのは、


そこを後にする頃だったりする。




この上手く行かなさは何事だ。




止めるつもりが逆に超出たおかげで、


水が結構な量はね返り、


お腹らへんを若干濡らしながら、


僕は思うのだった。


「ここの蛇口は家と真逆だったなあ」


そして胸に深く刻むのだった。


「家と真逆だと覚えとこう」


これを記憶しなければならないせいで、


幼い頃の楽しい思い出が、


どこかへブッ飛んでしまうと思うと、


情けなくて泣けてくる。


しかし、


帰宅した僕に、


追い打ちをかけるように、


惨事はさらなる牙を剥くのだった。




「止めるつもりが逆に超出る」




真逆で覚えたからだ!


家にいた時は出来てたのに!


いったん真逆で覚えたもんだから、


もうあべこべになっちゃった!


プギャー!


もうやだ!


こんな脳みそ、


ダンボールに入れて、


誰か拾ってくださいと書いて、


駅前に捨てちゃいたい!


ま、でも拾われないだろうな!


雨風にさらされて寒いだろうな!


かわいそうだな!


だからきっと雨の日に、


結局僕が拾いに行くんだろうな!


ゴメンとか言ったりしてさ!


泣きながら抱きしめたりしてさ!


毛布にくるめながら家に帰ってさ!


頭にセットし直してさ!


泣いた顔を洗ったら、




「止めるつもりが逆に超出る」




やっと帰って来れた。


脳みそを捨て犬扱いし始めてから、


変なアクセルを踏んでしまって、


本題への帰り道を完全に見失ったが、


やっと帰って来れた。




そんな訳で、


蛇口の【上げ下げ】に、


四苦八苦してしまう僕なのだ。


捨て脳みそのくだりを、


全く必要ないのに書いてしまう、


残念な僕でも出来るように、


(上げ下げ)と(出る止まる)を、


どうか統一してくれないものか。




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