りさぽん🎸🦔
寤寐思服⑦の続きです
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あのドライブから、1週間が経とうとしていた。
あれから先生のことを考えない日はない。あの日、家まで送ってくれた先生は私に言ってくれた。
理「何かあったら連絡して。心配で仕方ない」
先生は、財布からレシートを取り出して、その裏に電話番号を書いてくれた。私は、そのレシートを見つめながら毎晩枕を濡らす。
お姉ちゃんの部屋から聞こえる大音量の音楽を聴きながら。お母さんとお父さんの深刻な話し声を聞きながら。
でも先生に電話をかけることはできなかった。先生の気持ちはわかったようで…わからない。まだ高校2年生の私には難しい。
みいちゃんの解釈では、
美「今は付き合えないって意味だよ。卒業したら…ってことじゃない?」
あれから一度、数学の補修があった。意識しすぎて、先生の顔をまったく見ることができなかった。あからさまってくらいに避けちゃったこと、今でも後悔してる。
今日は、あのドライブから2回目の補習の日。今、先生は他の女子生徒と仲良く話してる。
先生が…遠い。あんなに近くにいた先生が、今は手の届かない存在に感じる。これが、先生の言ってた『今のままでいられなくなる』ってこと?
好きだと言ってしまうと、今までみたいに無邪気に先生の元へ走っていけないよ。
理「この問題解けた人から帰っていいよー」
先生のいじわる。私が最後になるってわかってるくせに。
美「わざとじゃない?渡邉先生、由依ちゃんと話したいんだって!」
みいちゃんのそんな言葉も素直に喜べないくらい、何を話していいのかわからない。
案の定、最後のひとりになった私。
由「先生のいじわる…」
ポツリのつぶやいた私に、先生が、
理「あのコースターお気に入りなんだよね」
なんて言うから、恥ずかしくて笑いながら先生の背中を叩いた。
理「やっと笑った!最近元気ないから心配してたんだよ」
先生は何も変わってなかった。いつも通り、先生は私の大好きな先生のままだった。
理「私、まんまとハマったかと思った」
由「なにが、?」
理「小林さんの、押したら引く作戦にハマったのかと思った」
そんな作戦を考える余裕ないよ…
理「小林さんはそんな器用じゃないよね」
先生は笑ってそう言った。
理「でも、私にはかなり効いたよ。悔しいけど…」
先生はちょっと照れた顔をした。
由「え?」
理「小林さんのことだから、すぐに電話かかってくると思ってた。無意識に毎日、小林さんからの電話待ってた」
先生…ほんと?先生が私からの電話を待ってたなんて。
理「あれから泣いた?」
由「何回か…」
私が答えると同時に、先生が私の髪を触る。
理「ばかだなぁ…。なんのために番号教えたか分かってる?小林さんが泣かないようにって思って教えたんだよ?」
優しく、子供に何かを言い聞かせるような穏やかな話し方。
先生は、少し首を傾けながら、私のおでこにキスをした。
動けない、、心臓が口から出たかもしれない。
由「先生…?」
私がやっと声を出せたのは、かなり時間が過ぎてからだった。
理「小林さんの泣き顔見たくない…。あんな風に辛い顔見たくない…」
私は涙が溢れて…
理「ほらぁ、また泣く…」
先生が手が私の頬に触れる。
由「この涙は、嬉し涙だから、、」
理「私、この前からけっこう泣かせちゃってるね。」
由「先生、、!」
私は、大好きっていう言葉の代わりに、先生の胸に飛び込んだ。
そのあとで、1時間みっちり問題を解いた。というか解かされた。先生のキスは、どんな困難でも乗り越えられる勇気をくれた。
その夜、私は先生のキスを思い出し、先生の一言一言を思い出し、幸せな気持ちで眠った。
夏休みもあと半分。寂しいはずの夏休みがこんなに楽しいなんて…。欲張りになった私は、来週まで先生と会えないことが寂しくて仕方ない。
会いたい。話したい。触れたい。
私はどんどん貪欲になってる。遠くから見つめてたあの頃を思い出す。先生に怒られたこと。先生に褒められたこと。廊下で初めて、「おはよう」って言ってもらった日のこと。初めて呼び止められたときのこと。あの時感じた気持ち、今も変わってない。先生は、私の元気の源。エネルギー源。
とうとう、渡邉先生に電話をかける日が来てしまった。
お父さんが出張に出かけた日。
その日、お姉ちゃんと私が唯一交わした言葉。それは「おはよう」でも「おやすみ」でもなく、、
「あんたさえいなければ。」
私のささいな一言が、お姉ちゃんを怒らせた。小さい頃から何度か言われたそのセリフは、私の胸に突き刺さったままだった。
私はいつになったらお姉ちゃんの"妹"になれる?
理『もしもし、?』
coming soon…
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お待たせしました…第2章もよろしくお願いします!