りさぽん🎸🦔


寤寐思服⑥の続きです


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理「小林さーん、お腹空いた…なんかちょーだい」




え、なんかめちゃくちゃ可愛いんだけど。少し甘えた声で、椅子に全体重をかけて頭を後ろにそらす先生。目だけ、私のほうに向けて。




かわいい…。ぎゅーってしたくなる。最近先生は心を開いてくれたのか色々な顔を見せてくれる。



由「あーん」




調子に乗って、私も恋人ごっこのように、先生の口にアメを入れる。



理「ん〜!おいしい!これ、リンゴ?私一番好き!」



私の中の、"先生情報コーナー"に書き込まれる新情報。"好きな果物、リンゴ"ってね。



「私一番好き!」って言葉だけ、頭の中で繰り返される。先生、そんなこといつも誰かに言ってるのかな?誰かに甘えたりするのかな。彼女の前では、先生はどんな風に笑うの?




だめだ、私、どんどん欲張りになってってる。。
見てるだけでいい。好きなだけでいいって思っていた私はもういないんだ…。



理「夜ご飯、食べてから行く?」



先生はさりげなくすごいことを言う。えぇ、夜ご飯、一緒に食べていいの?



由「…いいの?」



驚きを隠せない私に、不思議そうな顔をする先生。




理「小林さんはお腹すいてない?」



由「すいてる!でもいいのかな?先生と一緒に食べても…」



理「あぁ、そーゆうことね。忘れてた。小林さん、生徒だったね、えへ、」



生徒のこと忘れてたの?今日1日でどれだけ素敵な言葉をもらっただろう。今までの100倍くらい、話した気がする。



理「あ、言おうと思ってたけど、かわいいね。そのジャージ私が着たら似合わないのになぁ」



可愛い、かわいい、カワイイ…ん?お世辞だよ。お世辞。



理「制服に着替えなくていいからね、そのまま夜景行こ」



そう言って、先生の手が私の頭に触れた。



由「…はい!」



車の中には、今日もクッションがあった。



理「小林さん、補習減らしてあげるよ。今日のお礼にね」



先生のばか、



由「私、勉強したいの!この夏は、勉強したい気分なの」



意味のわからないことを言ってる私に、先生はまた優しく笑う。



理「勉強したいって…小林さん、基礎問題も解けないでしょ」



由「ばかばか!!」



私は先生の左の腕を叩いた。




理「はいはい、わかりました〜!あと10回でしょ?みんな減らしたから、最高でも5回の人しかいないよ?」



由「え、そうなの?…先生、いや?」



理「ん?なにがー?」



由「補習、結構大変だよね?めんどくさい?



そんな質問をした私に、先生の左手が近づく。
前を向いたまま、先生の左手が頭に…



理「ばーか!私、教師です!補習受けに来る生徒がいるってことは幸せなこと。逆に楽しいよ?」



先生はほんとに素敵な先生だと思う。




由「そうなの?ごめんね?」



理「いいよいいよ。色々しなくちゃいけないことあるから、どうせ学校来るし。小林さんがスラスラ解けるようになるまで補習はやめないからね?わかった?」




え、、そんなのむり、




由「先生…?それはひどいよ…。私がどれだけ数学苦手か知ってる?」



理「数学以外はまぁまぁできるんだから、大丈夫!」



こんなこと…ほかの生徒にも言うのかなぁ。
先生は、少しでも私のこと"特別"って思ってくれてるの?



理「何食べる?小林さんの食べたいものでいいよ」



由「じゃあ、、パスタ!」



即答する私に、目を細くして笑う。



理「黙ってると思ってたら、食べたいもののこと考えてたんでしょ!」



違うよ、先生のこと考えてるんだよ…。1秒1秒、先生のことをどんどん好きになる自分が怖い。




先生が向かってくれたパスタ屋さんは満席で、外まで人が並んでいた。順番の名前を書きに行った先生は、残念そうに帰ってくる。結局、その店はやめた。うちの高校の制服を着た人がいたから。




先生はそのままコンビニに行って、私の注文通り、カルボナーラを買ってきてくれた。少しだけテンションの下がった私を気遣ってくれたのか、私の大好きなチョコレートまで買ってきてくれた。



理「こーゆうのも、ありだよね」



先生は、山道の途中で車を停めた。



先生が食べてるドリアを物欲しそうに見ていた私に、



理「もしかして…狙ってる?」



なんて言いながら先生は、私の口にドリアを入れてくれた。



関節キス…。先生にとってはなんでもないことが、私にとっては大事件なんだよ。



由「カルボナーラ、いる?」



そう聞いた私に、先生は首を横に振った。
なーんだ…。ガッカリする私に先生は明るい顔で言ってくれた。



理「プリン半分こしようね!」



ひとつのスプーンで、ひとつのプリンを食べた。



理「ちょ!今のひと口は多すぎるって!」



なんて言いながら。
食べ終わると、先生は車のシートを倒して横になった。



理「小林さ〜ん、」



え、なに今の声、えろくない、?



理「眠くない?今日色々疲れたでしょ、小林さんも倒しなよ」



勝手にどきどきしてる私は、思うように体が動かず、声も出ない。ただ言われるままにシートを倒して横になる。



理「今度買う車は、もっと広い車がいいな。こうして倒したらしっかり寝れるやつ。」



由「うん…」



緊張で声が震えている私。



理「小林さんはどう思う?」



なんでそんなこと私に聞いてくるの、?
なんか付き合ってるみたいじゃん。



由「いいと思う…。白い車がいいな…」



ぜんぜん面白くない返事…。頭が回らなくて、話したいことが話せない。



由「先生…こんなことしてて、彼女に怒られない?」



大胆な質問をしている自分にびっくりした。緊張しすぎてる私は、いつもと違う自分になってる。しかも"こんなこと"って言うほど、先生と何もしてないし。



理「どうして…そんなこと聞く?」



窓の外に向けていた視線を、私に向ける先生。



由「ううん。私が彼女だったら、いくら生徒でも妬いちゃうから」



理「私、彼女いないよ?小林さんだけに言うけど」



ほんと?噂はぜんぶ嘘だったの?



由「え、みんな彼女いるって思ってるよ。それにこのクッションも」



私は、自分が枕にしてるクッションを指さす。



理「それは、私がお昼寝する時に使ってる」



由「嫌じゃないの、?嘘の噂。」



理「嫌じゃないよ。生徒にはいるって言っておいた方がラクなんだよね、」



由「でも信じてるファンにとっては残酷だよ」




理「そうだよね…でも今の高校生の恋って、よくわかんない部分が多いんだよね。私を好きだとか言ってても、彼女がいるって知ったらすぐ同級生と付き合ってる」




私は、ひかるのことを思い出した。



理「私としては、真剣に悩んで、できるだけ傷つけないように断ろうって…。でも、思いを寄せる女の子の中には、軽いノリの子も多いって気づいてた。」



先生はまだ寂しげな表情で窓の外をみる。



由「でも…真剣に恋してる子もいるよ、先生のこと本気で大好きな子もいるんだよ」




先生の目をじっと見つめながら思いを込めて話す。




理「ありがと、嬉しくないわけじゃないけど、好きって言われても断ることしかできないから…私たちって、」



先生の言葉はどんどん私の心の中に染み渡り、静かな悲しみが広がる。やっぱり…無理なんだよね、



理「誰にも言わないでね!彼女がいないこと。小林さんを信じて言ったからね」




嬉しい言葉も、今は涙が出そうに悲しかった。
生徒…だもんね、先生…だもんね。




理「これも小林さんには話すけど、、そろそろ転勤あるかもしれない」



私は、ダブルショックで、涙がこぼれ落ちそうになる。先生の左腕を掴んで、




由「やだ!絶対やだ!お願い…先生、遠くに行かないで」



困ったような表情の先生は、




理「そうだよねー、私は小林さんのこと守らないといけないもんね。近くにいないと」




そう言って、先生の腕を掴む私の手を引っ張った。抱きしめてくれた。



理「どこにも行かないよ」



先生は静かな声で言ってくれた。



由「せんせ、わたし、せんせいのことが…」



"好き"って口から出そうになった瞬間、先生は、私の唇に指をあてた。



理「それ以上、言っちゃだめ。言っちゃったら、今のままでいられなくなる…」




先生は、私の頬に伝う涙を拭ってくれた。




理「今までのように、小林さんと廊下でしゃべったり、こうして夜景見に来たり、心配して家まで行こうか悩んだり、今のこの幸せを大切にしたい…



せんせ…?



理「小林さんの気持ちは、卒業までコースターの裏にしまっておくね」



え、コースター?先生…気づいたんだ。。はずかし、



理「えへ、気づいてないとでも思った?私、結構几帳面だからね〜、嫌いになっても消えないよ?」




さっきまでとは違う先生。なんだかすごく近くに感じる。



由「嫌いになんかならないもん」



理「ありがと。私も、小林さんは特別な生徒だと思ってるよ」




ずっと欲しかった言葉。やっと言ってくれた。



私は胸の奥が締め付けられるような喜びを感じて、外の景色を見ながらまた涙が出た。




先生は黙ったまま、車を夜景の見える場所まで走らせた。そこは、誰もいない場所。どうしてみんな来ないんだろってくらい最高の夜景スポット。



由「きれい、、先生!ありがと!」



理「今日の掃除のお礼ね」




先生はそう言って手を繋いでくれた。先生の手は大きくてあったかかった。すごく安心した。



その手で、私をどこかに連れてって…




coming soon…

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お読みいただきありがとうございました!
これで第1章が終了です。。かなり長いです、!
ここまで読んでくれてありがとうございます🙌これからもよろしくお願いします!