かれこれ16年以上前のことになるのだけれど、
私は東宝芸能という芸能事務所のダンスセクションに所属して、舞台やテレビや映画の仕事をしていたの。
事務所に入って最初に頂いた仕事が、
先日お亡くなりになった世界のNINAGAWAこと蜷川幸雄様演出の音楽劇『火の鳥』という作品だったことは本当に幸運だった。
３年ほど所属し、様々な作品に出演させて下さり世界を広げてくれたこの事務所にとても感謝しているのだけれど、
無料レッスンをたっぷりと受けさせて頂けたのも本当にありがたかった。
ダンサーとして仕事をしている人間向けの内容だからついていくのが大変で落ち込むことも多かったのだけれど、
ある先生のレッスンの時には自信を持ってのびのびと取り組むことが出来たの。
その先生のお名前は、忘れもしない。
村田香織さん。
アンドロイドみたいなスタイルの良さ・姿勢の良さ、そして凛とした佇まい。
教え方が論理的でそれでいて温かくて。
女優として活動されていた（確か不朽の名作・北の国から に大切な役柄で出演していたという噂があったわね…）こともあるというだけあって、
踊りのテクニックだけではなく、表現するという事をとても大切にするレッスンだった。
その村田先生が、ある日のレッスンの時 こんな風に言ってくれたの。
「みんなもっと自分をアピールして！！表現して！！ 依田を見てごらん！！」
・・・嬉しかったなぁ・・・
踊りの上手い子達に囲まれて（ダンサー事務所だから当たり前よね）肩身の狭い思いをしていたから。
踊るという事は、演じるという事。表現するという事。
上手く踊れればそれに越したことはないけれど、
でもそれだけじゃない。
自分なりに演じ、自分なりの表現をすることが大切なのだ。
私の中に舞台人としての礎を築いてくれた、大切な恩師。
連絡先の交換もしないまま事務所を辞めてしまったために、
一度もお会いすることなく時が過ぎてしまっていたわ。
あれから１６年。
先日、香和の営業が終わって送りの車の中で出発を待ちながら新聞を読んでいた時の事。
ある記事を見つけて、腰を抜かすほどビックリしてしまったの。
それはなんと村田先生のインタビュー記事。
とっても大きな扱いで、この度映画の主役をやるのだとその記事は伝えていたわ。
えぇーーーーッ！？((((；ﾟДﾟ)))))))
映画の主役ーーーッ⁉︎
映画のタイトルは『ダンスの時間』。
「ダンサーであり、水族館などでショーディレクターを務める村田香織の日常を追いかけながら、
私たちのこころとからだを自由にするダンスの秘密を探っていく」ですって。
ドキュメンタリー映画ね。
現在はお亡くなりになってしまったとのことなのだけれど、
撮影中は認知症のお母様の介護をされていて、そういった様子も映し出されているという。
わぁ・・・行くしかないでしょ！！(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o)))
渋谷のイメージフォーラムという小さな映画館だったけれど、
平日の午前中にもかかわらず沢山のお客さんでにぎわっていたわ。
スクリーンの中の村田先生は、16年前と全く変わらずに美しかった。
思うように身の回りのことが出来ず
「ダメです」
と繰り返す認知症のお母様に、
「上手にできているよ、ダメじゃないよ」
優しく語りかける姿がレッスンの時の先生の姿と重なって、溢れてくる涙を止められなかった。
村田先生。
私は今、六本木にある香和というお店のステージに立たせて頂いております。
相変わらず踊りは上手ではないけれど、
私なりに、先生にご覧頂いても恥ずかしくない表現をしているつもりです。
(大好きな仲間とハロウィンイベントで仮装したり。)
人生って本当に面白いので、近いうちにショーをご覧頂けるような気がしております。
(こんな風に20歳も年の離れた後輩におっぱいを掴まれたりしています。)
私の出演日は土日月のみなのでお気を付けくださいね。
お母様の御冥福をお祈り申し上げますと共に、再びお会いできる日を心より楽しみにしております。
依田花蓮.
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