依田洋司(よだひろし)。
満州生まれ。
祖母が命からがら引き揚げ船で日本に連れ帰って来てくれたから、今私がいる。

真面目で不器用。
「国民年金なんて、将来貰えないんだから払わなくていいんじやない?」と言う私に、「自分のために払うのではなく、今のお年寄りのために払うのだ」って言う。
だからそのつもりで、ちゃんと払ってる。

2年半ほど二人で暮らした事がある。
ある日、ゴミ捨ての事でご近所とちょっとしたトラブルがあったのだけれど、「お父さんが悪かったのだから」と、しばらくごみ捨て場のお掃除を買って出ていた。
そういう人。

退職してからは民謡に打ち込み、定期的に発表会で腕前を披露する。
いい声で歌う。私の声は、父似(笑)
ちなみに顔は、母似。

カミングアウトの時、母は認めてくれるだろうけど、父は難しいと思っていた。
けれど、逆だった。
「あなたの将来を思うと、不安で涙が止まらない」母は嘆き悲しんだ。
ある日父から手紙が来た。「あなたは私達の子供なんだから、胸を張って帰って来なさい。お母さんの事は、お父さんがなんとかするから」

そしてすぐにやって来たお正月。
父は本家の長男なので、毎年親族が大勢集まる。ドキドキしながら帰省すると、拍子抜けするほど皆すんなり受け入れてくれた。
「やっぱ時代よねぇ」とお気楽な私に、イトコ達がそっと教えてくれた。
「お前のオヤジが涙ながらに話したんだぞ。“まもなく 秀亮(しゅうすけ)が女性となって帰って来ますが、どうかこれまで通り接してやって下さい”って」

花蓮という名前に変えて、すぐに花蓮って呼んでくれたのも父だった。

70をとっくに過ぎた今も、時々東京に遊びに来てくれる。車で5時間も6時間もかけて。
写真は、今年のGWに遊びに来てくれた時のもの。弟一家も一緒。
皆笑ってる。

真面目で不器用。
声だけじゃなく(笑)、私は父に似ていると思う。
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