在庫削減で、強くなる会社と苦しむ会社 | 依田会計IT室長によるOBC奉行活用術

依田会計IT室長によるOBC奉行活用術

OBC商蔵奉行を中心とした奉行シリーズの最新情報や活用方法を紹介しつつ、中小中堅企業の経営とITの融合を目指してみたり、みなかったり。。。

2010.09.08は、日経新聞で在庫関連の記事が3本もありました。

「財務が変える経営(上)」より

金融危機後の世界同時不況を経て、企業は財務戦略の重要性を改めて認識した。戦略的な財務は安定性のみならず、効率的な経営を促しグループ全体の競争力を向上させる。独自の財務戦略を通じ強い企業を作ろうとする取り組みを追う。


東芝は、CCCと呼ぶ経営指標を使って、効率化を目指しているとのこと。
CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)=売掛金回転日数+在庫回転日数-買掛金回転日数

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※売掛金は売掛債権、買掛金は買掛債務とするほうが、一般的か。
※売掛債権回転日数=(売掛債権/売上高)×365
 在庫回転日数=(平均在庫/売上原価)×365
 買掛債務回転日数=(買掛債務/当期仕入高)×365

CCCを短縮すれば運転資金に必要なお金は減るので、設備投資や有利子負債の圧縮に向ける事ができる。
東芝のCCCは、2008年3月期は34日だったが、前期に27.8日まで短縮した。

また、コマツでは自社在庫だけでなく、販売代理店の流通在庫までも、限りなくゼロを目指している。
リーマンショック後に18000台まで膨らんだ在庫は、7000台まで半分以上減り、中国・米国の流通在庫も
ゼロに近づいているという。

どちらの例も在庫を減らしつつ、販売機会は取り逃さないよう試行錯誤を繰り返し、
製造部門や販売部門だけでなく、物流、マーケティングなど、様々な部署が組織の壁を超えて連携し、
強さを磨いている。

特に、東芝が指標としているCCCについては、なかなか面白いかもしれません。
ためしに中小企業白書(2010年版)からCCCを算出してみました。
法人企業の従業員6-20人という、我々がお付き合いすることの多いところで見てみると、
なんと、27.9日と、東芝とほぼ同じでした。
なんだ!中小企業も悪くないじゃないか、と一瞬思ったものの、良く考えてみたら
東芝のように全世界に拠点があって、つまり在庫が分散している巨大な企業なのに、
1ヶ所にしかなくて、在庫もたくさん持てるほど大きい倉庫があるわけではない中小企業と同じって、
ある意味すごい。
これより悪かったら、見えて、手に届く範囲にある在庫すらきちんと管理できていないと言うことです。
それに、無駄にお金を寝かせていると言うことです。

より早く債権は回収し、無駄な在庫を持たず、債務は適切に支払う。
そんな当たり前のことがきちんとできているかどうかを、この指標なら管理できるのかも。


この記事は在庫を減らして強くなる会社の話でしたが、
一方で同じ日の新聞に、在庫が減らない、減って困る
という記事も出ていたのが興味深いですね。



「企業の在庫削減恒常化-倉庫会社の株化に逆風」
「素材・燃料、在庫に過剰感」

先の記事のようにありとあらゆる会社が在庫削減努力を重ねており、在庫を預る倉庫業者は
『商売上がったり』だそうです。15年ぶりと言われる円高水準でますます工場の海外移転が
進むかもしれないといわれていますので、これから更に厳しくなりますね。
保管品質のアップや付加価値を高める動きが増えているように差別化を目指すことになるのでしょう。

また、鋼材や石油化学製品などの素材・燃料の業界では、内需の低迷だったり、円高だったり
原因は一様ではないようですが、いずれも在庫削減に苦慮しているという記事でした。
厳しいですね。


システムの活用により、在庫を減らす努力は大企業ではもはや当然のことです。
しかし、中小企業では、システムは納品書・請求書を発行する為だけに使われていて、
在庫削減には役に立てられていない会社が意外に多いのが実態ではないでしょうか。

でも、頭では分かっていてもできない。
そういう方はもしかしたら在庫に対する意識が間違っているのではないか。
在庫はお金なんです。ほんとに分かってますか?
しかも、お金は腐らないけど、在庫は腐るので、腐ったらお金すてるんですよ。
そんなことするくらいなら従業員にボーナスで配ったほうがどれだけ喜ばれるか。
そっちの方がみんな喜んで会社の為に働くのに。。。

でもきっと、このブログを読んでくれた方はそれが分かっている方なんですよね。
我々がお仕事させていただくときはその意識がない方は無理なので、
それで良いのかもしれませんが。

今日は在庫の記事が1日に3本もあった日経新聞からご紹介しました。
では。