『清貧の思想』中野孝次 (草思社 1992年)
著者の中野孝次は「まえがき」で、日本及び日本人とは一体いかなるものかと質問された時に『わたしは話を求められるたびにいつも「日本文化の一側面」という話をすることに決めてきた。内容は大体日本の古典―西行・兼好・光悦・芭蕉・池大雅・良寛などーを引きながら、日本には物作りとか金儲けとか、現世の富貴や栄達を追求する者ばかりでなく、それ以外にひたすら心の世界を重んじる文化の伝統がある。ワーズワースの「低く暮らし、高く思う」という詩句のように、現世での生存は能う限り簡素にして心を風雅の世界に遊ばせることを、人間として最も高尚な生き方とする文化の伝統があったのだ。
―清貧を尊ぶ思想と言っていいー』として、24章の人物について具体的な事例で示している。
1992年の初版から再版を重ねベストセラーとなり共感を得たのだが、約30年を経過した現在は、当時よりさらに金銭欲と所有欲が世界的にも強くなり「清貧を尊ぶ」思想は失われたように思える。
コロナ渦の時代だからこそ「清貧」を尊ぶ生活でありたい。
どの章も読みきりで、どこからでも読み始められる。
古典を引用し分かりやすい言葉で説明してあるのでわかり易い。
座右書として毎日ひもとき、登場人物や書物に更なる興味を持てばより深く知るための手引き、入門の書でもある。



