蓮花文の瓦

 

 

ハスと睡蓮の花を指して「蓮華(花)」と呼ぶが、水芙蓉(すいふよう、みずふよう)、もしくは単に芙蓉(ふよう)、不語仙(ふごせん)などの異称もあるくらいに風情のある色や形をしている。

水中に咲く夏の花は、春の桜のように見飽きることがない。

 

日本での古名「はちす」は、花托の形状を蜂の巣に見立てたとするのが通説で「はす」はその転訛だが、花托と花びらが同時に存在しているは独特だ。

天上に咲く花の例えもあって、古来より特別な場所の荘厳に使われた。

 

 

奈良・飛鳥寺の鐙(あぶみ)瓦(飛鳥時代)

 

 

奈良・山村廃寺の鐙(あぶみ)瓦と宇(のき)瓦(白鳳時代)

 

生の蓮の花に勝るものはないが、588年に百済から渡来した「瓦博士」に依って始まった「瓦」にも蓮の文様が使われていることが多い。

 

 

鐙瓦細部の名称

 

 

複弁蓮花文鐙瓦 奈良・川原寺址

1枚の花弁に子葉2個を配する複弁蓮花文で蓮子は大粒

*昭和49年(1974年)、川原寺の裏山の板蓋神社から、千数百点におよぶ塑像の断片や塼仏が発掘された。

 

 

単弁蓮花文鐙瓦 奈良・山田寺

 

 

飛鳥資料館第二展示室・山田寺趾東回廊

蘇我倉山田石川麻呂が、641年に建設をはじめた初期仏教寺院。

1982年の発掘調査によって、その東回廊が、倒れた状態で地中に埋もれているのが発見された。

飛鳥の大寺院の多くは時代の流れとともに地上から姿を消しており、山田寺東回廊は、現存する世界最古の木造建造物である法隆寺よりも古い例となる。

 

蓮花文の瓦の一つくらいは断片でもいいから持ちたいものだ。

 

*果実の皮はとても厚く、土の中で発芽能力を長い間保持することができる。

1951年(昭和26年)3月に千葉葉市の落合遺跡で発掘され、理学博士の大賀一郎が発芽させることに成功したハスの実は、放射性炭素年代測定により今から2,000年前の弥生時代後期のものであると推定された(大賀ハス)。

その他にも中尊寺の金色堂須弥壇から発見され、800年ぶりに発芽に成功した例(中尊寺ハス)や、およそ1,400年から3000年前の地層のものが発芽した例(行田蓮)もある。

蓮花文の瓦、断片でいいから手元に置きたい。