朝起きると何時も思い出すシーンがある。 

私が誕生日プレゼントで贈ったニット帽を被って、

底が磨り減った靴を履いて、

出掛けに私に優しく穏やかな微笑みを投げかけて、

部屋を出ていった君。

 私は、君の後ろから「気をつけてねって」声を掛けたっけ。 

 今思い返すといままでに見たことのない微笑みだったな。

 何か悟ったような、

人を慈しむような、

そんな優しい笑顔だった。

それが君との最後になったね。

 色々と追い詰められていたんだと、

後になって解ってきたけど、

ぜんぜん気がつくのが遅いよね。

 そんな気持ちにはちょっとやそっとではならないよね。

何日も過ごしてるうちにどんどんどんどん考えて、

行き場を失っていったのかな。

 そんな時、自分の事しか考えられないで毎日過ごしていたダメダメ親父。

何度思い返しても許せません。

最低の父親だ私は。 

君を思いとどまらせることは絶対出来たはずって思っている。 


人は必ず死を迎えます。

 順番は逆になったけど、

あと10年耐え忍ぶ人生。

 はやく過ぎてほしいと願うばかりです。

 君に会って、

「やあっ久しぶりっ」

て、しっかりと抱きしめたいな。