私は、着付の依頼を受ける時、帯結びのご希望を聞くことはありません。

「帯結びは、実際に帯を見てから、全体の雰囲気に合った形に作らせて頂きます」と申し上げて、ご納得頂きます。
なぜなら、持ち込まれる帯の長さや硬さによって、希望通りに作れないことがあるからです。
希望を聞いておきながら、「作れません」では、がっかりさせてしまうだけですよね。
しかし、この時は、お客様の方から先にご希望を言われてしまいました。
見せてくださった写真は完成形だけで、レシピなどは勿論載っていません。

その上、ママ振(母が着た振袖)なので帯は短めだと思う、との自己申告。

「なるべく近い形になるように頑張らせて頂きますが、帯の状態によってはできないかもしれません」とお答えして、創作に取りかかりました。

そうして出来上がったのが、この帯結びです。

この帯も、私の母から譲り受けた帯なので、二重太鼓がギリギリ作れるくらいの、かなり短い帯です。

それが、ここまで豪華に広がりました。

全く同じ形とはいきませんでしたが、ポイントを押さえて再現できたと思っています。

成人式当日、お客様には、希望通りだと喜んで頂くことができました。

思えば、私の帯結びレシピは、こうして持ち込まれる帯それぞれの難題を突破しようとするごとに、増えていったのです。