ともかく、現時点ではギルガメッシュとガンダムが戦っている。
私の存在理由なんて考えてもどうせわからないことだが、彼女とガンダムが戦っていることは今目に見えている事実である。
その光景は今更になって異様に感じられた。こうして戦いを観る側に後退できたからだろうか。比較的冷静に現状を見ることができる。
とは言えいつ私に流れ弾が飛んでくるかわからない。みるを「観る」なんて言い方をしたが、本来はそこまで悠長にしているどころではないだろう。
だが、冷静になってひとつ気付けたことがあった。
金の杯がホールのど真ん中に置かれているのだ。
あれこそが異様たるものだろう。時折ビームライフルのピンクの光を反射するあの杯は、ギルガメッシュにもガンダムにも見向きされていない。見向きされないのなら、二人がそれに気付いていないのか、またはそこにそれがあることが当たり前かのどちらかだろう。そして、彼女がこれまでに言っていた言葉から察するに、あれはあそこにあって当然のものなのだろう。
と、よく耳を澄ませば小さく銃声が聞こえる。ふとガンダムを見てみても頭部バルカンを撃っている訳ではない。というか頭ない。どこかで違う戦闘が起きている。
そうか、言峰さんだ。ギルガメッシュはここの建物に着いた時に先走ったなとか何とか言っていた。衛宮切嗣なる人物との戦いのために。
小さい銃声は先ほど聞こえたっきり聞こえない。おそらくマシンガンと思われる連射された銃声。その後一発だけ聞こえた重い一発。
銃声が聞こえないということは勝負が決したか、膠着状態に陥ったか。はたまた弾切れになって拳で戦っているのだろうか。
だがそれより、私にとって関係あるのは目の前のギルガメッシュ対ガンダムである。もう一度言うが、流れ弾を避ける努力を怠ればここまで生き延びられた結果が水泡に帰す。両者の射撃一回一回を見逃せない。
二人の戦いは拮抗していた。素人目線では、だが。あのショッピングモールでの戦いのように、ガンダムの攻撃はギルガメッシュが全て躱し、ギルガメッシュの攻撃はガンダムに全て躱されるか弾かれる。
何だか彼女らしくないちょこまかとした戦いに見えるが、恐らくあの鎖とエアとかいう剣の一撃を食らわせるための隙を作ろうとしているのだろう。
しかし、
「なぜだ英雄王。なぜ鎖を使わない。何度かしまったと思った瞬間があったのに、なんで鎖を使わなかった」
アムロが攻撃の手を止め、彼女に質問をした。なぜ鎖を使わないのかと。
「それは目的や理由があるからに決まっているだろうさ。鎖を絡めた戦略が失敗すれば、逆にその隙を突かれてしまう可能性だってあろう。それとも何だ。貴様はそんなに鎖に縛られたいのか?」
「そんな訳あるか!」
何で敵同士でコントしてんのさ。
「ふっ。まぁ、だが時間切れだ。タネ明かしをしても構わんだろう。そら、聖杯を見ろ」
あの金の杯のことだな、と思い、それを見る。
「「なっ」」
私とアムロ、二人の感嘆符が同時に漏れる。
それは果てしなく異様な光景を醸し出していた。
「丁度頃合いだったのだ。それに、オレは既にこの時間のサーヴァントではない。オレの生死に関わらない条件だけで聖杯はこうしてこのタイミングで泥を吐き出す。要はオレの行った策は時間稼ぎに過ぎぬ。それを貴様は鎖を警戒してたった一歩を踏み出せずにいた。選択による結果とは言え哀れなものよなぁ」
彼女の声は余裕に満ちあふれていた。慢心という状態を完全に再現している。
そんな彼女が今も尚こぼれ続ける泥に向かって歩きだし、顔を私に向けた。
「さて、ここからが貴様の出番だ、プロデューサー。泥に飲まれろ」
「……」
意味が、よく、わからない。

