山の朝の、澄んだ空気の、土の、水のにおいをかぎたくて
思いつきで子供と早朝から高尾山へ登るふたりピクニック
着いたのは8時
選んだのは水べりを追いかける6号路
帰りは吊り橋わたって4号路、たこ杉さる園、1号路
往復7キロ前後、のんびり過ごして4~5時間。
おにぎり握った。めんどくさいからでかいのひとつづつ。
うめぼしと昆布のつくだ煮だばーって入れて。たくあん持って。
それと缶づめ。
子供の頃、うちって運動会とか、弁当持って外にでかけるときに
なぜかいつもノザキの牛缶とソーセージの缶詰、もってくんだ
親父が好きだったんだろうね
ちょっと思い出して買って持ってく。
高尾山といえば都心から近く、リフトにケーブルカー、ビアマウントと
スーツでもサンダルでも行けちゃう、都会のオアシス?
そう、たいした山じゃないね 高尾山。
けど、たまにはリフトもケーブルカーも使わないで
その足で登って下ってごらんなさいな
予想外の、細い山道 崖っぷち
木漏れ陽 森林 沢のぼり
急斜面ののぼり道
きついからって下ばっかり見てないで
おもわぬ風景に出会えるよ
(カップルだったらサプライズかもな
手をつながないと、歩けないよ!)
子供とふたり、歩いて歩いて頂上へ。
まだ10時すぎ、そう、昼ごはんじゃなくて今日のめあては
腹ぺこで食べる朝ごはん。
うまい。
おにぎりは見た目じゃない。買っちゃいけない。
へたくそでもたいして美味しくなくていい。
具もなんでもいい。
ただ一番大事なのは
“朝早く起きて作ってくれた”
ということ。
それだけでいい。
自分で作ったでっかいおにぎりにかぶりつく子供の横顔を見れれば
俺もまたそれだけでいい
豪華なおかずも、美味しいべんとうも、なんにもいらない。
缶詰の味はタイムマシーンで
いつも時代もかわらない
山の空気の中で、目をつぶれば
同じ香り、同じ味。
目をあけると今に戻る切なさあり。
前に、最期、寝たきりになっちゃったけど頭はしっかりしてた親父が
ふと目をさましたときに俺に言った
“サッカーやって、走り回ってる夢、見てた。”
親父は学生時代、サッカーでならした男だった。
それから思う
電車も車もいつでも乗れる
けどきっといつか、この足で歩けなく日がくる
歩けるときは歩かなきゃ。
そんな思いとうらはらに
山はもうとうぶんいいや!なんていう子供に
このやろ!なんていいながら
混み合ってきた高尾山を、ふたりで、手をつないで、下る。
もうすぐ三回忌がやってくる。