【購読のきっかけ】
大学院の授業で「経営職業倫理」という授業があり、長野県伊那市に本社がある伊那食品工業株式会社の経営理念が取り上げられました。「かんてんぱぱ」寒天を使った商品で知られるこの会社が、どのように成長を果たしたのかを学ぶために読みました。
【目次】
第一章 「年輪経営」を志せば、会社は永続する
第二章 「社員が幸せになる」会社づくり
第三章 今できる小さなことから始める
第四章 経営者は教育者でなければならない
【要約】
経営の目的は「社員を幸せにすること」と言い切っている。「会社は、社員を幸せにするためにある。そのことを通じて、いい会社を作り、地域や社会に貢献する」、それを実現するためには「会社が永続する」ことが必要である。なぜならば、会社が永続できなければ社員の幸せをどこかで断ち切ってしまうからである。このように塚越会長はまず、結論を述べている。
塚越会長がこの思いに至ったのは、自身の体験に大きく影響を受けている。結核を患い、学校に行けなかったことや、十分に働けなかったことである。よって、働けることの喜び、健康である事の大切さ、幸せとは何かを身に染みて感じたようである。
社員の幸せと会社の永続を両立するためには、少しずつ成長し、「社員の幸せ」と「経営の数字」のバランスをとっていくことが重要であると述べている。そのためには「遠きをはかること」 、この視点経営を行うことが重要であるとも述べている。
塚越会長は「急成長は敵」であり目指すべきは「年輪経営」であると述べている。
ブームに乗った売上、利益の拡大や仕入先の犠牲の上にたった利益は断じて戒めるべきであると断言している。
遠きをはかりながら徐々に(前年より少し)成長しなければならない。ここでいう成長とは売上と利益が前年から少しずつ増えることと社員が前年より幸せを感じることをいう。社員の感じる幸せとはお給料が増えた、職場が快適になった、仕事のやりがいが増した、のことである。
塚越会長が経営戦略の柱としている二宮尊徳の言葉がある。
遠くをはかる者は富み
近くをはかる者は貧す
それ遠きををはかる者は百年のために
杉苗を植う
まして春まきて秋実る物においてをや
故に富み有り
近くをはかる者は
春植えて秋実る物をも尚遠しとして植えず
唯眼前の利に迷うてまかずして取り
植えずして刈り取る事のみ眼につく
故に貧窮す
(二宮尊徳)
伊那食品工業の社是は「いい会社をつくりましょう -たくましく そして やさしく-」
である。そして「いい会社」をつくるための10箇条を掲げている。
「いい会社」をつくるための10箇条
1.常にいい製品をつくる。
2.売れるからといってつくり過ぎない、売り過ぎない。
3.できるだけ定価販売を心がけ、値引きをしない
4.お客様の立場に立ったものづくりとサービスを心がける。
5.美しい工場・店舗・庭づくりをする。
6.上品なパッケージ、センスのいい広告を行う。
7.メセナ活動とボランティア等の社会貢献を行う。
8.仕入先を大切にする。
9.経営理念を全員が理解し、企業イメージを高める。
10.以上のことを確実に実行し、継続する。
【感想】
この会社の最大の強みは「従業員の高いモチベーション」である。
その高いモチベーションをもった従業員は同じ方向に向かっている。
さらに4つの切り口で強みを分類してみる
<人的資源>
従業員のほとんどが正社員である
研究開発部門に社員の1割を配置している
営業は新しい用途開発のための人員として配置している
<物的資源>
国内の自社工場でコントロールしやすい
自社で生産設備の改良や保守ができる
商品のブランド化に成功している
一般消費者向け商品、法人向け商品を持っている
直接営業、直営店舗、インターネット販売などの販売網は自らがコントロールできる
<財務的資源>
安全性、流動性が高い(無借金経営)
自己資本比率が高く、固定比率が低い
株式を自らが所有している
<情報的資源>
経営方針は会長、社長が決めることができる(未上場)
経営方針に独自性がある
経営理念にも独自性がある
従業員から経営理念の共感を得ている
従業員満足度が高く、モチベーションが高い
研究開発や新用途開発営業等で新たな知見を常に蓄積している(=遠きをはかる)
5Sが徹底しており、品質管理の意識が高い
同じ志を持もてる人材を集めている
会社経営の理想であると思う。成功モデルとして、なぜほかの会社も同じことができないのか。
この模倣困難性は経営者の資質そのものなのかもしれない。
以上
