2022年夏期の新ドラマが本格スタートした中で、私が食いついて観ていたNHKの土曜ドラマ『空白を満たしなさい』を紹介する。


本作は、作家・平野啓一郎が東日本大震災直後に発表した同名小説を映像化したヒューマンサスペンス。


ある日突然、身に覚えのない己の死から復活した男が、最愛の妻と幼い息子を残して、なぜ自分は死なねばならなかったのか、答えを探していく。






ネタバレ注意下矢印





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キャスト

土屋徹生(ツチヤテツオ)→柄本佑 
土屋千佳(ツチヤチカ)→鈴木杏

土屋璃久(ツチヤリク)→斉藤拓弥


佐伯(サエキ)→阿部サダヲ


安西部長(アンザイ)→渡辺いっけい
秋吉(アキヨシ)→萩原聖人 
権田(ゴンダ)→うじきつよし
木下(キノシタ)→藤森慎吾 
ラデックブレーク・クロフォード
土屋恵子(ツチヤケイコ)→風吹ジュン 


(ゲスト)

井之脇海/本田博太郎/野間口徹

木野花/国広富之/滝籐賢一

ほか





7月30日放送

《最終話あらすじ》



自分の死の真相を受け入れた徹生。息子の璃久との溝も埋まり始めた矢先、妻の千佳が倒れてしまう。



徹生と付き合う前もよく倒れることがあったが、結婚して無くなり、徹生がいなくなってからはまた倒れるようになっていた。千佳は、精神的な事が原因で意識はあるが体が動かなくなると言う。



千佳の母親(木野花)との電話を聞いた徹生は、千佳の母娘関係を心配する。母とは結婚してからずっと会ってなかった。一生会わないつもりだと言う千佳。


千佳「こっちがどれだけ努力してもあの人絶対変わらないし、子供の私によくあんな酷いことをできたなって思うよ。私、てっちゃんがくよくよ悩まないで一生懸命やるところ、凄く好きだった。でもてっちゃんは逆だったかもしれない。私の中の暗いもののせいで追い詰められて、あんな事になったんじゃないかって


徹生は、千佳の中に暗いものなんて絶対ないと断言するがそれを否定し、徹生の前では明るい人でいたいから大丈夫と言う千佳だった。





その後、いのちを支える自殺対策 NPO法人『ふろっぐ』を訪ねた徹生は、代表の池端(滝藤賢一)と話をする。



徹生は、前向きに生き直そう考えていた。






復生者の会で出会った木下に会いに行った徹生。木下は会社を立ち上げていた。


徹生「人が死んでも消滅させない方法を考えてるんです。その人の存在そのものがなくなってしまうのは寂しいと思うんです。復生して、人は死んでも何かがこの世界に残るんだと思ったんですよ。記憶だけじゃなくてメディアに残される写真や動画や手紙などがネット上に保存できる場所があれば、亡くなった人とネット上で会えるし、亡くなった人を通じて交流出来れば少しは悲しみが和らげられるかもしれない」

木下「思い出の詰め合わせですか。さすが元缶詰屋さん。やりましょうよ。我々復生者しか思いつかない事ですよ」


と徹生と木下は、新しいビジネスを始めることになる。





突然、世界中で復生者が相次いで消えているというニュースが飛び込む。









その日の夜、家族でテレビを見ていると復生者のニュースが流れた。あの女子高生がテレビに出演していた。


千佳は璃久に見せたくなかったのと、ちょうど璃久が寝る時間だった事もありテレビを消したが、璃久がテレビのリモコンを奪い反抗する。







徹生は、また璃久の前から居なくなる事を懸念する。



徹生「璃久が大人になるまでは、事故のままでいい。父親の死に方ってすごく気になるものだし、いつか自分も自殺するんじゃないかって思いながら育って欲しくない。でもいつか、璃久が受け止められる時が来たら、俺が自分の言葉で説明したいんだ。俺は自殺した。でも璃久と千佳を置いていくつもりなんか全くなかった。生きたかった。ただその一心だったんだって。動画に残せないかな。いつかその日が来たら…




そしてビデオメッセージを撮りはじめた。




そして2人の馴れ初めや璃久が生まれた日の話をした後、仕事の話を始めた。

徹生「営業で仕事とれたりすると自分の仕事だと思うから頑張っちゃうんだよね。仕事ってすごく楽しいし、夢中になれちゃうから逆に気をつけてほしい。自分の限界が来たことに気がつかないんだよ。お父さんがそうだっだから…今からその話をしようと思う…」




撮り終えてそのまま眠ってしまった。





徹生が木下の会社を訪ね、新しいビジネスの話をする。


話しながら会議室に移動した木下の声が突然途切れた。会議室に木下の姿はなかった。



残された時間が少ないと悟った徹生は、千佳と共に璃久を連れて、千佳の両親を訪ねる





家の前で千佳は、子供の頃の自分の幻を見る。




ずっと挨拶に来れなかった事、自殺をした事で不快な思いをさせた事を謝る徹生だったが…


千佳の母は、徹生は悪くない、娘の千佳が悪いと言う。


千佳の母「あなただってこの子と結婚しなかったら自殺しないんじゃないですか?だったら犠牲者ですよ。他の人と結婚してたらきっと今頃幸せになってましたよ。親として謝らないといけないのはこっちかもしれませんね。責任を感じています。ごめんなさい。」


あまりにも娘の千佳を酷く言う母親の言葉を聞いて徹生は泣いた…


しかし、気を取り直し自分の気持ちを押しころして話し始めた  


徹生「(千佳は)いい人間なんです。僕が出会ってきた中でも千佳は1番いい人でした。僕は彼女と結婚できた事が本当によかった。今でも惚れ込んでるんです。本当に好きなんです。他の人と一緒になってたなんて夢にも思いません。」

徹生「僕は彼女に会えたことが、人生の中で1番幸福なことだったと思ってます。僕は幸せでした!ありがとうございます。」









その日の夜…








徹生の母、恵子がやって来た。













佐伯への手紙

『世界中で復生者が消滅しています。僕もいついなくなるのか分からないのでこの手紙を書いています。

人は誰でも心の奥に暗いものを持っています。それとどう向き合っていったらいいのか…あなたと別れた後いつも考えていました。実は最近、妻と喋っていてひとつ分かった事があるんです。僕は死ぬ前は、いつも笑顔の絶えない妻の明るさを好きになったんだと思い込んでいました。

でも本当は、たとえ心の奥底に暗いものを抱えていてもそれを前向きに明るく生きようとしていた彼女に僕は惹かれたんです。


僕たちはいつも明るかった。でも一緒にいるべきだって感じたのは2人とも孤独だったからだと思うんです。妻の心の中にも僕の中と同じように何か暗いものがあります。


あなたも同じですよね。でも僕はその暗いものを消そうとするんじゃなくて見守っていこうと思うんです。僕の命の許す限り。きっとその事を理解するために僕は復生したんです』








最終話再放送

8月3日(水)1:15から(火曜深夜)





感想

最終話が終わり、その余韻の中感じた事は、

徹生にとっての復生は、家族の絆を確かめ合えた時間だったように思えた。



《空白を満たしなさい》は、徹生が璃久に送った言葉だったのが意外だったが納得。




残された時間が残り少ないと知った徹生の後悔と、周囲の人へ感謝の姿は胸打つものがあった。



妻に感謝するシーンは、感動した。母親にずっと否定されている妻を徹生が全ての愛情を持ってしっかり肯定した…。あれは、池端の助言があっての言葉かと。


池端曰く 

生きていくには自分を肯定しなければ生きていけない。まずは好きな自分を見つける事です。


千佳が好きな自分をしっかり感じられるようにと


だけども、あんな酷い母親と、娘を庇うわけでもなくそれをただ見ているだけの父親が居たから、徹生のあの言葉が溢れ出たのかもしれないと思うとちょい複雑な気分。



ドラマの中では、徹生が1歳の時に死んでしまった父にスポットがあてられていたが、徹生を立派に育てた母親も忘れてはならない。そんな母への感謝するシーンも良かった。




世の中には、自分の中の暗いものと葛藤する人はたくさんいるはず。徹生の手紙は、佐伯宛だったが、視聴者に向けたメッセージなんだと思う。無理に消す事より見守りながら生きていく事が大事なんだと受け止めた。



人間いつどんな風に死ぬか分からない。人に感謝する気持ちを抱きながら生きていくことの大切さを教わった気がした。



肯定できる好きな自分を見つけながら





スタッフブログより抜粋↓


星徹生の息子・璃久を演じた斉藤拓弥くん。


まだ小さいのに複雑なお芝居を脚本からどう読み取って演じているのか……。

これは、斉藤君のお母さまが描かれたもので、タイトルは「りくまんが」(笑)。ラフな筆致ながら脚本の流れと璃久の表情が実に的確に表現してあるので、これを読めば小さな子どもでも内容が理解できます。


さすが子役の母!恐るべし爆笑