タイトル通り
今日、思い余ってパワハラ相談に電話をかけた。
電話口に出たのは、50代くらいのまさにおじさんの声だった。
「どうしましたか?」
てっきり女の人の相談員かと思っていたので、太いおじさんの声に一瞬言葉をつまらせた。
「パワハラの相談です」
私は要件を伝えた。
「どうぞ」
おじさんは話の続きを促すが、何の準備もなく思い余って電話したので、何から話したらいいのかまとまらず、私は途切れ途切れ話始めた。
「社内でパワハラがあります。今回電話したのは、自分のことではなく、私は傍観者で同僚がパワハラを受けています。」
「パワハラの加害者はだれですか?」
おじさんは、必要な情報をひとつひとつ聞き出す。
「部長と課長です。」
「今回、パワハラの被害者でないあなたは何を相談されますか?」
「今、行われていることは私から見るとあきらかにパワハラに該当すると思いますが、パワハラ認定されるか知りたいと言う事と、実際当事者ではないので、被害者の為にできることがあるか教えてほしいです。」
私は話しながら考えをまとめた。
そして、話をつづけた。
「部長と課長は、去年7月に中途採用で入社したUさんを自主退社するよう追い込んでいます。
具体的には、Uさんを無能扱いし、仕事を彼女にだけ与えず、少しの間違いを過剰に叱責し、孤立させています。
1ヵ月違いで入社したIさんには、何も言わず、Uさんにだけ態度を変えます。
そして、仕事ができないという理由で、事務から製造業のほうに移動させると言っています。
仕事ができないのではなく、させないのです。」
私は取り合えず簡潔に伝えた。
言いたい事は沢山あるが、メモを取っているわけではないので全てのパワハラを伝えきれない。
おじさんは部署移動は業務の一環でパワハラに該当しないことを形式的に伝えてくれた。
私は「知ってます」と思ったが、話をつづけた。
「今回の場合は明らかにUさんを辞めさせるための部署移動です。私は今日、はっきり課長がそう発言するのを聞きました。」
課長と事務所に二人になる時間があった時に、ふいに
「凪さん、Uさんから何か聞いてる?」
と話しかけてきた。
私はUさんから相談を受けていたので、彼女の聞きたい事にピンときていたが、
「何をですか?」
と返事をかえした。
「この前、凪さんとUさん二人で話してるみたいだったから、何か相談されたのかと思って~。彼女会社辞めるとか言ってた?」
知ってても話すはずがないではないか。
「いいえ。聞いてません。何でそんな話が出るんですか?」
私は聞き返した。
「この前、部長がUさんに製造業務に移動させることを本人に伝えたみたいなの~。彼女、面接の時”製造は無理”みたいな事言ってたから、移動させたら辞めるかと思って」
こんなパワハラ丸出しの発言を恥ずかしくもなく、よく堂々と言えるものかとびっくりしたが、びっくりしている場合ではない。
「部長はUさんを辞めさせたいってことですか?」
私が課長に聞くと
「そういう事。仕事も全然できないし。私も辞めさせたい。
だから凪さん相談されても引き止めないよう部長が言ってたよ。私それ聞いて笑っちゃったよ。あははー。」
どこが笑えるか分からない。
この人達は何なの。
我慢ならない。
私は課長のこの発言を自分の胸にしまいこみ、帰宅するとすぐにパワハラ相談に電話した。
おじさんはネットにも載っているような事を教えてくれた。
- 会社のトップに相談する
- 証拠を残す(ボイスレコーダーで録音、メモを取る)
小さな会社では社長に訴えることも、突然起こるパワハラの場面を録音することも難しいとおじさんに伝えた。
おじさんは深く共感し、
「あなたも辛い立場ですね。」
と同情してくれた。
実際、私も過去パワハラ受けていた。
Uさんとは逆で過剰に仕事を押し付けられ、休日後出社すると、書類が山のようにデスクに置かれ、常に舌打ちと高圧的な態度と叱責を受けていた。
何度も辞めたいと思ったが、私にとって時間きっちり帰れることが最大の利点だったことと、年齢的にあと数年で部長と課長は退職することが想定できたので、それを励みに頑張ってきた。
おじさんのアドバイスで、私が見聞きしたUさんに対するパワハラを今後メモしていくことにした。
彼女がそれを必要とするか分からないが、もしパワハラの証拠を必要としたとき、陰ながら彼女の助けになりたいと思った。
パワハラの傍観者はそうしたくてしているわけではない。
私ができることは、彼女をひとりにしないことだけだ。
パワハラ防止法が義務化されたが、実際問題、声をあげることは難しく、たとえ声をあげたとしても本当に解決できるのだろうか?
結局、被害者が退職に追い込まれるのではないのだろうか?
心配でならない。
それでは本日の一曲
乃紫
「A8番出口」