名探偵コナンから、平和な話を
今夜は時間切れのため、試作を

タイトル未定


出勤の支度を整えていると、普段はこの時間に
姿を見せない息子が、何やら電話で騒いでいた

「アホか!一体、誰に何を吹き込まれたんや!
オレにそんなヒマあらへんの、オマエが1番よ
う知っとるやろが!」

朝から何事かと、静もワシと一緒になって、聞
き耳を立てている

スマホを耳に、青くなったり赤くなったりしな
がら喚く息子の声を聴く限り、どうやら通話の
相手は可愛ええ幼なじみの様子

ま、いつもの事か、と、2人でその場を離れよ
うとしたタイミングで、聞き捨てならん絶叫を
始めた息子に、思わず静と顔を見合わせた

「オレは他所の知らんねーちゃんら孕ますよう
な真似、した事無いわ!まだサラピンやっちゅ
ーねん!どあほが!」

あら、嫌だ、と苦笑する静

ワシはそろそろ止めなアカンな、と思うたその
瞬間、一際大きな声で息子が喚き始めた

「あ?おー、えーで、スケベやろが変態やろう
がなんぼでも言うたらええわ!
でもなぁ、オマエも覚悟しいや?オレがスケベ
で変態やったら、オマエはその相手全部せなア
カンのやで?わかっとんのか!和葉のアホ!」


「アホは、オマエや、平次」


振り向いた息子が落としたスマホを取り上げた

「何で私がアンタの相手せなアカンのん!
ただの幼なじみやで??」

揶揄うんのもええ加減にしてや!と言う叫び声
が聞こえてくる

「和葉か?すまんな、うちのアホな倅が朝から
何やトチ狂った事ばっかり言うて」

しゃくりあげながら、え?おっちゃん??と言
う可愛ええ声がした

「このドアホの頭は、いっぺん大阪湾なり沈め
ておくさかい、ワシに免じて堪忍したってや?
詫びは後からワシがするよって」

「大丈夫や、おっちゃんお仕事やない?
気をつけて行って来てな」

動揺しながらも、そう言うてくれる可愛ええの
とは反対に、ワシの息子は真っ白な廃人となっ
て項垂れている

魂、抜けとるんとちゃうか?コイツは

和葉との通話を終えたスマホを、静に手渡した

「ワシが帰宅するまで、コイツのバイクやらの
鍵と端末全部、使えんようにしとけ」

「はい、わかりました」

「オマエはまず、学生の本分を全うして来い
寄り道は許さん
部活もサボるな
終わったら、真っ直ぐ帰れ、ええな」

まともに返事も出来ひん息子を一瞥して、迎え
の車に乗り込んだ

アイツは、告白すらまだしてないと言う噂
何を先に色々ぶっちゃけてんのや、全く

遠山にでもあの会話知られたら、ワシは一体、
どうしたらええねん


執務室に到着して、秘書から連絡事項を受けな
がら、書類の山と格闘を始める

「おい、平蔵」

オマエんとこの悪ガキ、うちの和葉に何するつ
もりなんや?

思わず押印がズレた

やっぱり、和葉の背後に居たんやな、とわかる

無駄に長い脚を組んでソファに座った遠山は、
朝からすこぶる機嫌が悪い

それはそうやろ

男親としては、微妙な痴話喧嘩を朝っはらから
聞かされて、機嫌がええ父親なぞ居らん

いつもよりええお茶を淹れて出して、目の前に
座った

「倅が、朝から騒いだみたいで、申し訳ない」

不機嫌な遠山は、ホンマ勘弁してくれや、と言
うて苦笑した

貴重な父娘の少ない憩いの時間、台無しにされ
てしもうたやないか、と

話を最初から聴いていたらしい遠山の話による
と、どうやら、平次が和葉に電話をした様子

朝、弁当やら朝食の支度をしながら、和葉はど
うもスピーカーフォン状態で会話をしていたよ
うで、

出勤の支度をする遠山にも、やり取りは最初か
ら聞こえていたと言う

「事の発端は、多分この記事やな」

遠山が、誰かから転送されて来たと言う記事を
タブレットの画面で見せて来た

人気雑誌の、人気企画らしい
抱かれたい男ランキングが掲載されとる

俳優、タレント部門とは別枠に、著名人枠にち
ゃっかり掲載されとったらしい我が息子

トップ5に名を連ね、工藤くんと人気を二分し
とるようやった

最近の試合の写真やら、取材の様子やら映って
いて、その写真だけで妊娠しそうやとか、かな
りイカれた変なコメントが多数ある

「コイツの中身、かなりの残念くんやと思うん
やけど、大丈夫かいな、変な世の中やな」

思わずため息を吐いたワシに、遠山もため息

「せやなぁ、最近また背も伸びたみたいやし、
顔立ちは静さん似やからな、まぁ外見はええと
しても、中身が今朝のアレやとなぁ」

もう少し賢い子やと思うてたけど、最近の和葉
との喧嘩見てると、心配になるんやけど

平ちゃん、何かあったんか?

「いや、いつも通りやと静からは聞いとるけど
その“いつも“が正しいかっちゅうと、ワシは違
うような気がすんねん」

最近、忙しさにかまけて自由にさせ過ぎたとは
思うてる

遠山は、最近の平次がいつもとちゃう雰囲気が
あると思うてる様子

ワシと静にしたら、まぁ、漸く重い腰を上げる
気になったんかな、とは予想しとんのやけど

こんな状況では、遠山が恐ろしくて、さすがの
ワシでも口には出来ひんので、詳細なコメント
は避ける事にした


実は、ホンマはアイツ、異変だらけやねん

まず、ここ1ヶ月程、毎朝絶叫してんねん
「かずはぁっ!」ってな

本人、わかっとんのか無意識なんかわからんの
やけど、毎朝絶叫するもんやから、心配した静
が録画録音しとるぐらいなんや

ワシは静に、和葉の身の安全のためにも、平次
の手脚を縛っておいた方がええんやないかって
言うてるところやった

さすがにそんなん遠山に言うワケにはいかんし
ひたすら詫びるしか無い状況

今日は何が何でも帰ると決意して、平次に甘い
遠山と大滝は帰れんよう足止めする事を決意

昼休みも飛ばして、仕事を前倒しして
必死に家路を急いで帰宅したワシに待っていた
のは、静と息子のある会話やった