名探偵コナンから、平和な2人を
思いつき企画案 

Dear girls


「新一のバカヤロウ!
死にたいなら、オマエ1人で勝手に死ね!」

黒羽がこんなに激しく叱責する姿は、予想外や

KIDの時のように、冷静に怒りを秘めるタイプか
と思うてたから

多分、黒羽の素はこっちなんやろな

オレと黒羽が降谷さんと共に工藤の入院先に辿り
着いた時、工藤は自力で病院を脱出して逃走中や
ったんや

黒羽とオレでとっ捕まえて、病院に連れ戻したと
ころやねん

降谷さんは、到着するなり赤井さんと何やバチバ
チやし?

黒羽は、工藤と大炎上中やし?

オレとしては、「和葉、助けてくれ」言う状況や

深いため息をして、目を伏せた
一呼吸して気合いを入れる

「煩え!ボケっ!ええかげんにしいや!」

工藤、オマエ、ホンマに頭がええんか?
今まで、たくさんの事件から、何を学んだ?

オマエは、ホンマに姉ちゃんの事、考えてんのか?

たった一度、会うただけで
二度と会えへんようになって、姉ちゃんがそれで
幸せになれるワケ無いやろが

奇跡なんてな、一生の間にそう何度も起きるワケ
無いやろ?マンガや無いんやで?

オマエの生命が今現在ある事がもう奇跡なんや
それ、大事に繋いで行くしか無いやんか

「和葉からの伝言や」

オレは、和葉がオレと黒羽に言うた事を伝えた

工藤は、ホンマの別れをわかってへん、と言う話

桜や旬が、生きている両親ともう二度と再会出来
へん現実を

オレも、黒羽も、棺に縋って泣き叫ぶ声を
生涯忘れへん

あの子らが、どれだけ深い傷を胸の内にしてこの
先を生きて行くのかを考えると、胸が痛む

姉ちゃんに、同じ哀しみを背負わせ、一生を縛る
つもりなんか?工藤

あの小さい姉ちゃんに、更に十字架を背負わせる
つもりなんか?工藤

オマエが解毒剤投与に耐えられへんかった時のた
めに、姉ちゃんと会っておきたいと言う気持ちは
オレにもわかる

でも、それは傲慢や

遺言遺されても、姉ちゃんかて迷惑やろ
姉ちゃんにとっては、オマエが無事に還って来る
以外の選択肢は、いずれも不幸しか無い

「そうだ
新一に出来る唯一の事は、体調を整えて、解毒剤
をいつでも打てるように準備することだ」

小さい姉ちゃんを信じろ
懸命に開発を進めているんだ
自分の身体を実験台にして

「遺言なんて要らねえよ」

そう言うた黒羽は、姉ちゃんが待ってる、と言う
たあのメッセージの動画を工藤に見せた

旬と桜が居る
2人が頑張れたんやから、自分も頑張る

工藤は必ず約束を果たす
自分はそれを信じて、元気にして待つ

しっかりとした瞳で
きっぱりと宣言した、姉ちゃんの姿を

工藤はじっと見ていた
しっかりと胸に刻むようにして

「蘭ちゃんは、オマエを信じて耐えてるんだ
これ以上、悲しませるようなバカな真似するな」

黒羽の言葉に、ああ、と答えた工藤は
繰り返し、繰り返し、姉ちゃんの映像を見ていた

黒羽は、工藤を叱り飛ばし
和葉や姉ちゃんから教わって来たメニューを作り
食べさせていた

その間、オレは博士と小さい姉ちゃんに和葉から
持たされたもんで食事をさせながら、話を聞いて
いた

小さい姉ちゃんは、言うてた通りのサイズになっ
とって、何やようわからんけど、和葉か渡せと言
うてた紙袋を確認して、助かると言うてた

オカンから預かって来たもんも喜んでいたし、2
人から預かって来たメッセージにも、ほっとした
顔を見せた

「どんなに工藤くんに恨まれたとしても、安全を
第一に進めて行くわ」

失敗は、取り替えしのつかない事になるから、と
言うた哀姉は、ひとつずつ積み重ねるしか無いと
言う

「新一は落ち着いたかね」

博士は工藤を案じていたので、先程黒羽にめっち
ゃ怒られてたし、元気が出る映像もらうてたから
もう大丈夫やと思う

オレは姉ちゃんの映像を2人に見せた

そして、旬と桜の事も話をした

その様子を、バチバチしとった赤井さんと降谷さ
んも見ていた

「和葉が戻って来てくれへんかったら、助けてや
れへんかった生命や」

生死の見分けがつかんくらいに、消えかかってい
た2人の生命

怪我は癒えたとはいえ、胸の内に負った傷は、ま
だ完全に癒えてはいない

夜泣きすることもあるからな

それでも、周囲の手を借りながら少しずつ立ち直
って歩き始めた2人は、新しい環境に慣れようと
子供ながらに日々必死に頑張っている

今日より明日
明日より明後日

両親の居ない日常を、一歩ずつ踏み出している

兄の方は妹を庇うような仕草をするし
妹の方は兄に寄り添うような仕草をみせる

まだオレらも、ホンマに一点の曇りも無い無垢な
笑顔の2人にまだ出会うてない

笑顔やはしゃぐ2人を見られるようになっては来た
けど、まだどこか必死やねん

哀姉は、2人を見て、大丈夫と言うた

私もお姉ちゃんのことを忘れた事は無いけど、
一緒に過ごした短い時は、ちゃんとここに在る
だから、生きて行ける

きっと、2人にとっても、みんなに出会って過ご
した何気ない日常は、宝物になって、強さをくれ
るはずやと言うて

特別なことだけやなく
日常を重ねて行く事が強さに変わる
そんな時がきっと来ると言うた

ポーカーフェイスの赤井さんが、哀姉の話をしと
る間、僅かに表情が変わったような気がしたけれ
ど、この時のオレにはようわからんかった

オレと黒羽は長居は無用と言うて、最終便に乗る
事にした

工藤は、もうバカな真似はしない、と約束してく
れたし、哀姉と博士は引き続き頑張ってみると言
うてくれた

餅つきがあるから、帰国すると言う黒羽に、みん
な爆笑しとったけどな

僅か数時間の滞在で帰国便に乗り込むオレら

「新一は、大丈夫」

言う事を聞かなかったら、オレが蘭ちゃんを消し
て二度と会わせてやらねーって言ったからな

ニカッと笑うてそう言うたけど
オレにはその笑顔が怖いで、黒羽

帰国便の中でオレ達は、降谷さんからハロとの
出会いや、エピソードを聞いたり、梓さんの大尉
との話を聞いて

お互いの相方にはよ会いたいと言う気持ちを胡麻化
しながら、到着までの時間を過ごしていた

頑張れ、工藤、哀姉、博士
きっと未来は開かれるはずや

to be continued