名探偵コナンから、平和な2人をこの2人と共
に描いてみよう!


夫婦喧嘩は犬も食わない -3


「平次、ちゃんと髪、乾かさんとアカンよ!
風邪ひいてしもうたら、大変やで?」

おばちゃん、喘息持ちなんやから、アカン、
と言う私に、煩いなぁ、と拗ねる平次

おっちゃんの転勤問題で、大騒動中の服部邸

平次はそこから弾き出されて、私の家に居る

かれこれ、2週間になるやろか

おばちゃんとおっちゃんの話し合いは、とう
とう第3者を巻き込んでの騒動にらなっとって

言うまでもなく、うちのお父ちゃんもそうや

仕事より疲れると苦笑しながら夕飯を食べる
お父ちゃんに、息子やのに蚊帳の外にされた
平次が、すんませんと言う

何や変なことになってん

平次とは、お互いの将来やりたいこととかも
よう話すようになってて、色々と相談もしと
ったんやけど

ここ最近、平次はずっと悩んでるみたいや

多分、自分の計画とは違うタイミングでの
上京予定に、慌てているんやろうけど

でもなぁ、私は

平次と離れるのは嫌やけど
ホンマの平次の実力を知っている私としては

これもまた、ええ機会やないかと思う

平次、ホンマに凄いんよ?

なんや、愛想がええせいか、軽く見られがち
やけど、めっちゃ賢いし、ホンマ優しいねん

きっと、これからオトナになるにつれて、ま
だまだ活躍出来るし、すると思う

そんな平次の傍に居っても許される人で在り
たいと思うてるし、そのための努力は怠って
いるつもりは無いけど

「まだまだ、遠いなぁ」

頑張っても、頑張っても、届かへん

追いつけるかな、思うても、次の瞬間、あっ
さりとその先を行ってしまう

悔しいけど、ここ最近は更にその距離を広げ
られとる気がすんねん

いつの間にか、私なんぞあっさり担いで逃げ
られるようになってしもうたし

得意の英語も、更に磨きがかかってたし

「何、ため息吐きながらやってんねん」

不意に背後から伸びて来た手が水道を止めた

うわっ、ゴメン、おおきに

そう言うた私は、我に返った
キッチンのシンクと、背後の平次に挟まれて
たんや

「平次?」

手を止めて振り返ろうとしたけど、それより
先に、私の手から野菜がどかされて、濡れて
いた手は、背後の平次がタオルで拭いて

「オマエは座っとけ
何や今日は様子が変やで?ケガでもされたら
オカンらにしばかれるんはオレやからな」

そう言うた平次に、キッチンから追い出され
てしもうた私

なぁ、平次
私には幼なじみ以外の価値ってあるんやろか

歌いながらキッチンで何かを始めたのをぼん
やりと眺めながら、段々としぼんで行く気持
ちを止められへんようになった

私は、私は

何やめっちゃ疲れてしもうて、眠たくなる

ちょっとだけ、とソファに横になって目を伏
せた

微睡みながら、キッチンから聞こえて来たそ
の歌声に、自分も口ずさんでみた

何やったっけ、この歌のタイトルが思い出せ
へん、歌詞はわかるんに

何やったっけ
ラブソングやったのは間違いない

平次、誰かに恋でもしてるんやろか

ええなぁ、恋されとる女の子は
初恋の女の子も、ええなぁ
羨ましい

そう思うた瞬間、あぁ、せやった
これ、初恋の歌やと気がついて
口ずさむのをやめた

溢れ出す涙を、平次に気付かれへんように
隠しながら、私は更にぎゅっと目を閉じた

宇多田ヒカルの
First Love 、やね

ええなぁ、と思いながら、深い眠りへと私は
その意識を手放した

to be continued