名探偵コナンから、平和な2人を取り囲むこの
人達から


府警父親哀歌(ラプソディー) その1


「なぁ、平蔵」

オマエ、息子の顔、最後に見たんはいつや?

親友にそう聞かれて、せやなぁ、と印を押す
作業の手を止めて考えた

いつやったっけ

「オレなんか、和葉の顔、マトモに見たの、
半月前やで?」

そう言うと、ワシの前にお茶を置いて、自分
はドサリ、とソファに座った

「しかもなぁ、和葉の隣には、必ずオマエの
息子付き、や」

そりゃアンマリやろ

盛大にため息を吐いた親友に、思わず押印が
ズレそうになる

平次のやつ、何をしとんねん
まさか、和葉に悪さ、しとらんやろな

ワシ、まだ遠山に殺された無いんやけど

ワシの夢は、静と2人、京都の別邸に隠居し
て、のんびり暮らす事やねん

膝枕してもろうて、耳掃除でもしてもろうて
2人きり、べったべたに甘い日常を過ごした
いだけやねん

そのために、日々の激務に耐え抜いていると
言うてもええくらいや

まったく

書類を捲る手が、思わず止まり、深いため息
が思わず溢れた

「おい、平蔵、オレは無視か?」

何をひとり想い腑けってんねん、と苦笑する
親友に、やっと我に返ったワシやった

その後は、
平蔵はええよなぁ、家に帰れば、静さんが居
るんやから、とか、

オレなんか、嫁に逢いたい時は、嫁の転勤先
を追って、それこそ、全国的に移動やで?

とか、久しぶりに遠山の愚痴のオンパレード

「何や、オマエ、暇なんか?」

「おう、漸く長丁場が終わって、帰ろうか、
思うたらなぁ、可愛ええ娘は居らんらしい」

「は?和葉、どっか行ってんのか?」

「せや、オマエの可愛ええ一人息子と一緒に
なぁ?」

ぐっ、と走らせていたペン先が歪みそうにな
ったのを、必死に堪えた

「うちの娘、可愛ええけどどっか抜けてるや
んか?」

「和葉が?どこがや、和美さんに似たええ娘
に成長したやんか」

「せや、文武両道、家事もばっちり出来るし
なぁ?それは、静さんのおかげやと思うてる
んや」

忙し過ぎるオレらに代わって、よう面倒を見
てもろうてるからな

「うちの、昔から、へーじ、へーじ、やった
やんか」

あれ、今でもそうやねんと言うと、大層不服
そうな顔をした遠山

「それだけやったらええねん」

どこかの御曹子がな、うちの可愛ええ娘をつ
かまえて、へちゃむくれやの、脚が太いやの
ようけ言うてくれるもんやからなぁ、困った
事になってん

その「困った事」を聞いて、オレは唖然とす
るしか無い

取り敢えず、決めた事は、この親友が部屋を
出て行ったらすぐに電話や、と言う事や

あのバカ息子、そろそろいっぺん〆ておか
なアカンやろ

「ほな、オレはひとりで帰らせてもらう」

茶器を片付けて、ほな、またな、と去って行
く遠山を見届けて、オレは私用携帯へと手を
伸ばした

「おっちゃん?どないしてん」

「和葉か?あれ、ワシ、電話間違えてしもう
たんやろか」

「ちゃう、ちゃう、平次に電話したんやろ?
ちゃんと合ってるで?」

実はな、と和葉が代理で電話に出た理由を聞
いて、ワシはまた、事務処理の手を止めた

ホンマに、あいつは

to be continued