2017/08/10 服部の日記念企画

平和×ふるあず×新蘭でお届けします!

本館であるAmeと、別館であるPixiv で連動
するお話になります

10日間限定の連載です

後日、入れ替えて読めるようにしますが、
Ame 和葉ちゃん視点、Pixiv 平次視点で同時
進行します

海外ドラマの君たちは包囲された!を、平和
バージョンに大幅にアレンジしたパラレル話
ですので、苦手な方はスキップを


You're all surrounded Side A 7


第七章 訪れる過去

2017年8月某日 ~遠山和葉の記憶


神様は、平次に意地悪だ

平次が英治として生きて行く中で、ずっと
心の支えにしとった後見人は、宮野一課長
だった

平次は、一課長が自分の後見人になった経
緯に疑問を持ち始めていた

直接、聞いてみる、と、平次が覚悟を決めた
そんな矢先やった

あの事件の時、私が拾ったペンダントを調べ
ていた冴島さんが襲われて、大けがをした

そのペンダントは、盗まれてしもうたんや

唯一の証拠品やったけど、私は万が一を考え
て、黒羽くんに提案された通り、ある人に偽
物を作ってもろうてあった

本物からは、採取出来るだけのモノは採取し
つくしてあったし、わざと、私や黒羽くんの
指紋も残した

冴島さんと沖田くんには、もしペンダントを
狙って襲われたら、迷いなく差し出せ、と言
うてあったんに

真面目な冴島さんは、抵抗して酷い目に遭っ
てしもうたんや

おまけに、宮野一課長が、私と平次の目の前
で事故に遭った

明らかに、一課長を狙ったとしか思えんその
事故は、私達は抱えている案件が多過ぎると
されて、担当から外されてん

おまけに、担当チームがあれは交通事故だと
早々に決めつけてしもうたもんやから、平次
が庁舎内で大暴れする事になった

平次をしばいて、大人しくさせてから、私が
分析結果を突き付けた

あの大型車両から消えた運転手は、出頭して
来たけれど、居眠り運転やった、と言い続け
てん

「アンタらの目は、節穴か」

近隣の防犯カメラ映像、チェックしてへんや
ろが、アホ、と言うて、私は映像を流した

私らがあの道路を通る2時間前からその車は
路肩に止まってて、運転手は車の回りをうろ
うろ煙草を吸うてたり、電話しながら時間を
潰しててん

車内に入ったんは、私らが通過する10分前

「これで居眠りとか、ありえへんやろが!」

映像データを叩きつけて、一喝した
慌てて飛び出して行く面々を見て、ため息を
吐いた

平次に内緒で降谷係長に呼び出された

「服部には、もしかしたらこれからもっと
残酷な現実が突き付けられるかもしれない」

それでも、オマエはパートナーとして傍に居
る覚悟はあるか、と

「大丈夫です、何があっても、最後まで一緒
に居ります」

「オマエは絶対に、無事でいろ」

係長はそう言うた

実の母を目の前で殺されて、その後支えにし
ていた人が目の前で殺されそうになるのを見
たんだ

そのショックは計り知れないだろう、と

その上、オマエに何かがあれば、間違いなく
服部の精神は破壊される

「だから、遠山と、オマエの母親は何がな
んでも生き延びろ」

「はい」

平次は捜査の合間を縫っては、一課長の病室
に顔を出していた

「なぁ、平次、傍に居るだけやなくて、ちゃ
んとアンタの声、聞かせてやってや?」

「声?」

「せや、呼吸しか出来てへんでも、耳は聞
こえてる場合があるんやって」

昔、言われた事があるのだ

事件に巻き込まれ、寝たきりになってしもう
た被害者の母親に

だから、ちゃんと呼んであげてください、と

残念ながらその人は亡くなってしもうたけど
その母親には感謝された

手を握って、話してくれてありがとう、と

「わかった、やってみる」

「後、志保さんが言うてたわ
何か、写真か何か、一課長との想い出になる
ものをひとつ、枕元に置いておいてやって」

目を覚ました時に、淋しくないように

「わかった、何か考える」

ほな、私、捜査に出るから、と言うて通話を
終えた

私は、蘭ちゃんと榎本係長と黒羽くんと組ん
で、情報収集をしとんねん

池波瑠花を調べよう、と決めて、彼女の通う
美容院、エステ、ショップ、ネイルサロンと
お客として潜入して、スタッフから彼女の状
況を調べててん

とにかく派手な交流を好む人らしく、さすが
に全部は回り切れず、有希子さんと優作さん
にも協力してもろうた

「蘭ちゃんと、和葉ちゃんが頑張ってるんだ
私たちにとっては、娘みたいなモノだからね
もちろん協力するよ」

そう言うて、パーティーやら何やらの方は
2人が一手に引き受けてくれてん

みんなが、平次に、服部平次としての人生を
ちゃんと取り戻してやろうって、必死になっ
て協力してくれてん

冴島さんも、ベッドの上でちゃんと有力情報
引き出してくれたし、おかげでペンダントの
秘密も判った

30数年前に、限定1000個だけ製作された
オートクチュールのジュエリーやった

しかも、オーダーする人の名前をモチーフに
した作品で、当然やけどオリジナル

デザイナーさんは、コピー製作を否定した

そんな中、私は冴島さんのお見舞いの後、ふ
と気が付いてしもうた

「医療法人華櫻会」系列の病院やん、と

そして、院長と遭遇したんや

「あの、もしかして冴島さんですか、と」

振り返った院長に尋ねてみてん

新幹線の事故で、うちの母を助けてくれた
んは、院長ですか、と

「母って…もしかして、君は遠山さんのお
嬢さんか?」

「はい、父と母、どちらか知り合いでしょ
うか?」

時間、あるかね、と言う院長に、少しならと
応えて、私は院長室に通された

「お母さんは、その後どうだね?」

「はい、ぴんぴんしてます
やめなさい、言うのも聞かんで、毎日元気に
仕事と病室の往復しとるみたいで」

その節は、ホンマにお世話になりました、と
言うと、目を細めた

「あのお嬢ちゃんが、こんなに大きくなっ
たんやなぁ」


「ホンマは、関西出身なんや
普段はすまして、関東弁でごまかしとるん
やけどな」

そう言って、いたずらっぽい笑顔を見せた院
長は、冴島さんが言うてた印象と少しだけ違
う気がした

30年前は、関西の病院で働いていたと言い、
その当時、遠山家と服部家と繋がりがあった
と言う

「お嬢ちゃんを取り上げたんは、オレや」

「へ?」

「もうひとり、平次くんを取り上げたんも
そうやねん」

「・・・」

院長が教えてくれた
たまたま、知り合いの病院で友人を待ってい
た時に、救急で駆けこんで来たんがうちのお
母ちゃんと、おばちゃんやったと

「お嬢ちゃんはなぁ、のんびりやさんやっ
たみたいで、お母ちゃんのお腹の中にちょっ
と長く滞在し過ぎたみたいで」

駆けこんで来た時、お母ちゃんも私も危ない
状況やった、と言う

「友達手伝って、お産に立ち会ったんや」

元気よう、可愛ええお嬢さんが生まれた時は
みんなでほっとしたし、と笑う

「駆け付けた嬢ちゃんの父親も、部下の人も
みんな喜んでてなぁ」

その光景を見て、自分の仕事を改めて考えた
と言う

まさかその2年後、今度は付き添うてた人の
お産に立ち会う事になるとは、思うてなかっ
たけどな、と

「平次くんの時もなぁ、大変やったんや」

中々出て来てくれへんで、もう帝王切開に切
り替えんと危ない、と言うギリギリのタイミ
ングで漸く出て来てくれて、と

「そもそもオレ、産科医や無いのに2人も取
り上げてしもうてな、わはは」

偶然とは言え、何か縁があるんやろ
そう言うて笑う

「大阪で医師をしてたのはな、オレ、家出
しててん」

病院の跡を素直に継ぐ気になれなくて、修行
と称して関西の知り合いの病院を渡り歩いて
いた、と

「元々、華櫻会は、関西にあった医院が出発
点やねん」

それを、一族が東京に拠点を移して、大きく
したんが、現在の医療法人華櫻会グループや
と言うた

「うちのアホ、ちゃんと職場で仕事、出来て
んのか?」

「出来てるも何も、めっちゃ頼りにしてます
私も、ケガした時手当してもろうたおかげで
跡も残らず治りました」

「そうか」

「お父さんも、びっくりされたでしょう」

ふと哀しそうな顔をした院長

「長男の事、アンタに話したんか」

「はい」

自分たちのチームだけの秘密です、と言うて
話すと、そうか、と呟いた

「オレが関西で好き勝手やっとった間な、嫁
は慣れへん関東で、親戚やらオレの親やらに
猛烈なプレッシャーをかけられとったんや」

嫁いだ以上、立派な跡継ぎを養成せよ
一家の主を立てて、1日も早う、病院を大き
くするんが、アンタの役目や、言うてな

「嫁は、生まれたばかりの長男を抱えて、
そらもう苦労したんや
でも、オレには何も言わんかった」

ただ一度、ボロボロの服を着た長男を連れ
自身もぐちゃぐちゃな服装で大阪に現れた
と言う

「夜中に屋敷を抜け出して、大阪まで逃げ
て来た、言うてたわ」

それで、どれ程子供と妻に負担をかけてい
るんか、反省して、東京に引き揚げたと言
う院長やった

「東京に戻ってからは、一心不乱に病院を
大きくして、一族を養う事だけに専念した
誰も、嫁に文句を言えんようにな」

でもその半面、子供たちには厳しくし過ぎ
てしもうた、と

「だから、長男の性癖に気が付くのも遅れ
てしもうてん」

親族から、次の世代を、と言われて長男には
嫌がられたが、見合いの予定が詰まっていた
と言う

「普段は反抗もせん、ええ子やのに、結婚
だけは、最後まで首を縦に振らんかった」

その時点で、息子と対峙すべきやった
どうして、見合いも恋愛も嫌なんかってと

「差別する気は無い
とはいえ、いきなり息子にカミングアウトさ
れて、すぐには状況が飲み込めんかったんや」

弟の、晃が受けるショックや、そう言う兄を
持つ弟として、晃がどんな目で世間から見ら
れるんかと思うたら、パニックになっしてし
もうてな

救命救急の現場で働きたかった、と言う院長
家族のために、と、抑圧し続けた思いが爆発
してしもうた、と涙を落した

「もっと冷静に、対処しとったら、晃を追っ
たアイツが、事故死する事も無かった
晃が、責任を感じて苦しむ事も無かった」

そう言うて、俯いてしもうた院長の背中を
さすってやった

「大丈夫や、私や平次はおかげさまで色々
あっても丈夫やし、元気にしとります
それに、冴島さんも、医療の知識や経験を
大事にして、立派に刑事としてやってます」

せやから、見守ってやってください

冴島さんのお母さんにも、大丈夫やって、ア
ンタの息子は元気に頑張ってるって、そう言
うてやってください

「私と、平次にとって、お母ちゃんは最後
の砦やねん
それを助けてもろうて、ホンマに感謝してま
す、ありがとうございました」

「…こちらこそ、おおきにな、嬢ちゃん」

オレの人生は、嬢ちゃんの誕生や平次くんの
誕生を経て変わった

この間の新幹線で、偶然隣り合わせた嬢ちゃ
んのお母ちゃんと再会出来て、事故に遭って、
混乱する現場で、必死に医療行為をする自分
に驚いてん

まだ、医師として現役やってな

「オレが仕事を見直すきっかけは、いっつも
嬢ちゃんらの家族が関係するんや
コレはきっと、何かの縁があるからやろ」

いきなり息子に素直になるんは恥ずかしいか
ら、今日の事は内緒にしてくれ、と言う院長
わかりました、と約束して別れた

「お母ちゃんが退院して、事件が解決したら
お礼に来ますよって」

楽しみにしとる、と言う院長は笑顔やった

[newpage]

庁舎に戻ると、蘭ちゃんらが戻って来てて
みんなで報告会と夕飯を兼ねながら7係の
部屋で集まった

色々な定員さんやら従業員の人らの証言から
池波瑠花と言う人物は、雑誌などで紹介され
とるようなお上品なお嬢様とはかなりかけ離
れた人物である事がわかった

・待たされるのが大嫌い
・先の尖ったモノが嫌い
・短気で激昂型
・自己中心的

エステに行けば、従業員の支度が遅い、と暴
れて、気に入らなければその店員を解雇しろ
と騒ぐ

怒ると手がつけられないともあった

「この雑誌と、実情は相当違うわね」

そう言って笑っちゃうくらいに酷い状況で

せやから、私は心配した

あの事件で、現場から発見されたとしてあの
ペンダントを持って直接対決する、と言う係
長は、平次を連れて行く、言うてん

「どうせやるなら、ちゃんと心理戦に持ち込
みましょう」

と言う榎本係長の提案で、降谷係長と平次は
池波瑠花氏に面会出来た場合の面接方法につ
いて、いくつかアドバイスを受けて、練習も
させられてから、出て行った

私は、池波源太郎氏と、平蔵氏の更なる情報
を得るため、情報収集をしながら、平次がそ
の平蔵氏と面談するための場で、待機してい
たんや

池波源太郎氏は、在職中何度も大きな事件に
携わっていて、何度も表彰を受けていた

でも、その中身をよく調べて行くと、疑問
だらけやった

何故、彼ばかりが大きな社会的に目を引く
事件にばかり関与出来たんか
偶然で片付けるには、おかしな事ばかりが
見えて来てん

一方、同じ表彰回数を経て、府警本部長に
就任した平蔵氏の方は、大小関係無く事件
に奔走した跡が見られた

ところが、平蔵氏の方は、本部長就任後か
らその影響力が下がった事が判明した
部下達から一線置かれたと言うか、何と言
うか

本部長職を退く時も、本気でその退陣を惜し
んだのは、ごく一部だった、とされていた

「何か、あったんやろか」

それまでは、人望も厚く、府警の中でも幹部
候補として大事に育成されていたし、本人も
全力で事件を追っていたみたいやねんけど

平次が平蔵氏と面会するまでに、何とかもっ
と調べられへんやろか、と思う私は、大きな
失敗をしてしもうた

喫茶店から出てお手洗いに行き、戻る途中、
ぼんやりしとってぶつかってしもうてん

「すんませんでした!」

「いや、かまへん」

え?と思うて顔を上げて、血の気が引いた
池波平蔵、その人やってん

「お嬢さん、関西か」

「はい、大阪です」

「そうか、懐かしいなぁ」

そう言うと、こわもての顔で笑ったんや

「おっちゃんも、関西?」

「あぁ、大阪や」

えーホンマなん?ってか、そのイントネーシ
ョンやったらそうやな、と笑う私に、どこも
ケガしてへんか?と尋ねた

「全然、私、丈夫やし、問題あらへんよ
おおきに」

そうか?と言うと、秘書っぽい人に呼ばれて
ビルの中に入って行った

ワシも気をつけるけど、嬢ちゃんも気をつけ
て歩かなアカンで、と言うて去って行く姿を
なんとなく平次の姿を重ねた

転けた私の腕を掴んだ掌には、長年剣道をや
ってる人の掌のあとがあったし、年齢の割に
鍛えられた身体をしとったんや

身長や身体付き、歩き方
似てる、と思うた

降谷係長から、昨日のアドバイスが効いて、
何とか証拠品を提出させた、と連絡が入る

「服部は、遠山が近くで待機してる事を知
らないから、そのつもりで」

「はい」

喫茶スペースに、平蔵氏が先に現れた
秘書を伴わず、ひとり席についた

少し遅れて、緊張した顔をした平次が入っ
て来た

挨拶をして、話し始めるところを確認した
段階で、私にトラブルが起きた

「ねえ、お姉さん、ヒマ?」

「ヒマなワケあらへんでしょ」

「おっ、大阪弁だ!親父と一緒だな」

へ?

振り返ると、池波春人が立っていたのだ

「うわぁお、横顔も素敵だけど、うん、
めちゃくちゃ美人だね、お姉さん」

「そらどうも、おおきに
でも、ヒマや無いから、放っておいてくれ
へん?」

「えー、こんな美人放っておくとかありえな
いっしょー」

お姉さんの待ち人が来るまで、オレ、相手す
るし、と、私の許可無く目の前の椅子にどさ
り、と座ったのだ

テーブルには、仕事と判るものは置いてはい
ないけれど、色々なところに仕込みはしてあ

矢継ぎ早に質問をする春人は邪魔で仕方が無
かった

「あのなぁ、ええ加減にせえへんと、警察
呼ぶけどええ?」

そんな怒らなくてもいいじゃん
ちょっと遊ぼうって言っただけだし?

「私、機嫌悪いんやけど
さっさとどかへんと、ホンマに突き出すし?
ええの?」

ちっ、残念
また会おうね、キレーなおねーさん

手をひらひらさせて、春人は去って行き、
ふとその後ろに目を遣ると、工藤くんが私
に手をあわせて謝ってる

大丈夫、とサインを送って、工藤くんが春人
を追って行くのを確認してから、私は本来の
業務に戻った

「…これは懐かしい写真やな」

「覚えがありますか?」

「あぁ、もちろんや」

「ここに映っている人、全員ご存じで?」

「もちろんや」

ここに映っている服部静華は、オレのオカン
やねん

「は?静、いや、服部さんの息子さんやった
んか」

道理で、よう似てるなぁ、と言う平蔵氏に、
平次は少しいらっとした顔をした

「ちなみに、あそこで仕事そっちのけで寛
いでるオンナは、ここに映ってる遠山銀司郎
と、和美夫妻の娘や」

「平次!」

「嬢ちゃん、嬢ちゃんは、銀司郎のとこの」

「はい、スンマセン、平次が心配でこっそり
見に来たんです」

そうか、と言うと、平次が隣の席に座れと
いらだつ瞳で指示をした

「あの、うちの両親とは、どういう?」

お父ちゃんの前任者が池波さんやって事は、
最近知ったんですけど、と言うと、あぁ、
と言うてじっと私と平次を見ていた

「君は、いくつや」

26になりました、と言う私と、24やと言う
平次

「お母さんは、元気にしとるんか」

「???」

思わず顔を見合わせた私と平次に、平蔵氏
は不思議そうな顔をした

「知らんかった、言うんか」


「服部静華さん、おばちゃんは、10年前に
亡くなりました」

「え?」

「殺されたんや」

絶句した平蔵氏に、平次が尋ねた

報道規制はあったとはいえ、かなりのニュー
スやったんや、知らんかったワケは無いや
ろ、と

「10年前と言ったね?それは、いつ頃の
事なんだ?」

「2006年4月や」

2006年4月、と呟いた後、何やら思案顔を
しとった平蔵氏が、絞り出すように言うた

「今、株主総会を控えとって、自由に動け
んのや、終わり次第、必ず連絡するよって
君たちの連絡先をくれへんやろか」

私と平次が名刺を差し出すと、必ず、連絡
する、と言うた

「何も知らんままで、スマンかった
2006年の3月から、2年間程、ワシは仕事の
都合でヨーロッパを渡り歩いててん
帰国したんは、2008年の夏や」

何がどうなっとんのか、わからんし、少し
考える時間をくれ、約束は護る、必ず

そう言うて

不機嫌な平次に引きずられるようにして車に
乗った

「ゴメンな、こっそりついて行くような真
似してしもうて」

車を走らせる平次は、無言
めっちゃ機嫌が悪そうやった

「あーもう!!」

いきなりそう言うと、車を路肩に寄せた

「オマエ、オレの機嫌が悪い理由、ちゃん
と理解してへんやろ」

「?」

「何をのんきに事件関係者に ナンパされと
んのや、このどアホ!!!」

オマエは帰って、係長に怒鳴られて来い

????

そ、そんなん言われても

私がナンパしたワケや無いもん
そんな目立つ格好、しとったワケともちゃ
うし

「それにしても、よう見てたな、自分」

「オマエが来るのは、最初から計算済みや
当たり前やろ、オレが来るな、言うても何
やかや理屈こねて、オマエは来るやろ」

何や、その、絶対的な自信は
まぁ、その通りやねんけど

そう思うと、何やおかしくなって来た

「平次」

「何や」

「アンタ、やっぱりタイプやわ」

「はぁ?この状況で、何でそんな話になん
ねん!オマエ、オレ、おちょくって楽しん
でんのか?」

パトカーの中やからって、安心すんなや!
この事件終わったら、オマエ、覚悟しとけや
どうなっても、オレは知らんからな

「え、どうなんの??」

このっ、どあほー!
この車、このままラブが付くホテルに突っ
込んだろか!と

火を吹く人を、初めて見た

と言うのは冗談で、取りあえず平次は元気や
な、良かった、良かった、と安心した私に、
平次な泣きながら運転しとった

「オレ、何を試されてんのや?
こんな生殺しばっかり、嫌やわ」

「この間っから、聞こうと思うてたんやけど
生殺しって何?」

ごん、と音がするくらいハンドルに頭を打っ
た平次

「ちょっ、アンタ、危ない
私が運転、代わってあげるから、な?」

「うっさいわー!助手席になんかおとなしく
座ってられっかっつーの!!」

何をダダこねてんねん、平次、子供みたい
やで?と言うと、いきなり頭突きをされて
煩いから暫く寝てろぼけ、と言われた

「痛いっ、何すんのん!
一応、オンナやで、私、アンタ、女の子に
は優しくせなアカンって、おばちゃんにい
っも言われてたやろが!もう忘れたん!」

庁舎につくまで、私も平次も言いあいして

部屋に入ってから、みんなが笑いをかみ殺
している理由を知ったのは、少し後の事や
ってん


後半へ、
to be continued