2017/08/10 服部の日記念企画

名探偵コナンから、平和×ふるあず×新蘭で
お届けします!

本館であるAmeと、別館であるPixiv で連動
するお話になります

10日間限定の連載です

後日、入れ替えて読めるようにしますが、
Ame 和葉ちゃん視点、Pixiv 平次視点で同時
進行します

海外ドラマの君たちは包囲された!を、平和
バージョンに大幅にアレンジしたパラレル話
ですので、苦手な方はスキップを

You're all surrounded  Side A 1

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大阪・寝屋川市連続強盗殺人事件
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事件概要:
2006年3月-4月に発生した3件の連続強盗殺
人事件で、犯人特定にも至らないまま、現在
も尚、未解決事件のままとなっている

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1件目: 織物職人強盗殺人事件
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●事件現場
寝屋川市在住、織物工場勤務の職人Aの自宅
2階寝室及び1階居間

●被害者
職人A本人とその妻

●被害状況
現金100万入りの家庭用金庫ごと盗難

●メモ
職人引退を間近に控え、妻と初めて海外旅行
へ行くと周囲に告げていた夫妻

多額の現金は、そのために用意されたものと
みられているが、出所が不明

夫妻に金銭トラブルの要素は無く、質素堅実
を絵に描いたような暮らし振り
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2件目: 印刷工強盗殺人事件
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●事件現場
寝屋川市在住、印刷工場勤務の職人Bの自宅
アパート

●被害者
印刷工本人

●被害状況
室内ほぼ総てを家捜しされた痕跡あり
現金及び貴金属類は一切無く、金目のモノは
ほぼ総てを持ち出されていた

●メモ
室内の数か所に、特殊インクの染みが残留

後日、科捜研の鑑定結果として、紙幣に利
用されるインクのひとつと成分が一致したと
の報告有り

聞きこみの結果、職人AとBは知り合いのよ
で、職人Aが殺害された当日、事件現場付
で、職人Bの複数の目撃情報あり

※ただし、職人AとBの接点は不明で、職人A
の事件現場から職人Bの痕跡は一切出ていない

寡黙な職人肌と言う評判で、こちらも金銭ト
ブル含め、周囲との揉め事は確認されては
いない
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3件目: 服部邸殺人事件
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●事件現場
寝屋川市在住、府警科学捜査研究所所長服部
静華氏自宅邸内
1階応接間、及び台所、居間等

●被害者
大阪府警科学捜査研究所 所長
服部静華(36歳)

●行方不明者
服部平次(13歳)
私立改方学園中等部1年A組在籍
静華氏長男、事件当日午後より行方不明

●被害状況
金庫をこじ開けようとした跡はあったものの
搬出は断念した様子

1階の洋間タイプの応接間を中心に、1階
分の大半が荒らされていた

静華氏の通勤用バック、息子平次氏の通学鞄
等が発見されず

●メモ
被害者が倒れていた応接間のソファの下から
平次の毛髪等が発見事件を目撃していたもの
と思われるが、その消息は生死を含め不明

また、荒らされた現場は、入念に指紋等を
去した痕跡もあり
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[newpage]

第1章 再会と最初の事件

2017年4月某日 ~遠山和葉の記憶


警視庁捜査一課で、最初に任された事件は、
犯人は検挙出来たものの、私個人的には最低
の出来での成果となった

パートナーの鳥蓮英治とは、中々コンビとし
ての相性と言うか、上手くやるコツが掴めず
最初の事件から、蹴つまずいたんや

「ホンマ、腹立つオトコやわ💢」

勝手気ままと言うか、何と言うか
とにかく、愛想の良さは皆無

無遠慮と言うか、何かへんやねん

京都出身らしいけど、同じ京都出身の沖田く
んとは何かちゃうと言うか
むしろ、言葉使いなどは、私に近い気がして
んのや

「よぉ、名探偵」

「黒羽くん?」

隣の榎本係長のチームに配属された黒羽快斗
が突然現れた

英国に居た頃、家主の工藤優作さんにくっつ
いて、色々な事件現場に飛び回ったり、捜査
協力をしていた私

そんな現場で知り合うたんが、黒羽くんや

めっちゃ頭がキレて、運動神経も抜群で手先
も器用な人やった

「あー、青子に会いてー」

いつも、事件後そう言っては、日本に残して
来たと言う、恋人の名を叫んでいた

「そうや、青子ちゃんには会えたん?」

「ちょっと聞いてくんない?和葉ちゃん」

近くの居酒屋で、黒羽くんのグチを聞いた

中森青子ちゃんが、黒羽くんの幼なじみで、
恋人なんやけど、私は面識は無いねん

「え?府警の科捜研に出向中??」

「そうなんだよ!青子の奴、オレが帰還する
って言うのにさ、大阪、行っちゃったんだよ
完全、すれ違いでさぁ」

「えー!そうなん?」

「そうなんだよ、まったくさー」

黒羽くんは、心底残念そう
だって、夢だって言うてたもんね

黒羽くんは、刑事として
青子ちゃんは、科捜研の技官として
一緒に捜査するんだって

帰還の連絡を受けた時、嬉しそうに夢が叶う
かもって言うてたもんね

「青子ちゃん、府警の科捜研に居るんよね」

「ああ、そうだけど」

「そこの所長、うちのお母ちゃんや」

「ふーん、って、ええっ!((((;゚Д゚)))))))」

飛び退いた黒羽くんと、少し飲んで、別れた

あんまり顔に傷なんか作るなよ、と言うて、
街へ消えて行った黒羽くんは、相変わらず優
しい人や

向こうに居る時も、平次を思い出して落ち込
む私を、何遍も励ましてくれた

不思議な人で、私が落ち込む時とか、弱っと
る日とかにふらり、と現れる事が多いねん

いっつも、おおきに、黒羽くん

見送ってから、私は下宿先のマンションへと
帰った

瀟洒な高級マンション

とても私の給与じゃ住めへん部屋の一室を借
りている私

「お帰りなさい、和葉さん」

「あれ、志保さん、今日は帰れたん?」

「ん?ちょっとだけ休憩したら、また戻る予
定なの」

「ほな、ちょっとだけ待っててや」

私に一部屋貸してくれているのは、

宮野志保さん
科学捜査研究所の若き所長

「和葉ちゃん、家、もう見つけた?」

上京準備に追われた私に、宮野明美一課長が
声をかけてくれたのだ

部屋、余ってるからどう?と

妹さんの志保さんと会って、お互い好きな服
のメーカーとか、食べ物の好みが似てる事と
かもあって、甘える事にしたんや

私も、知らん人らばっかりの集合住宅や、独
身寮よりは、ええなって思うて

「仕事の都合もあってね、私、家を出るのよ
でも、いきなり志保を完全にひとりにするの
も不安で、悪いけど、暫くよろしくね?」

案内されたマンションに、私は引いた

「ベッドも家具もあるから、好きにアレンジ
して使って?」

「えー?私、着替えとかだけ持ち込んだらえ
えだけやん!」

宮野家は、今は姉妹2人だけで、マンション
は亡くなったご両親の部屋らしいねん

キッチンに立って、冷蔵庫やストックを確認
した私は、エプロンを身に付けて、急ぎ支度
した私

「うわぁ、ありがとう!」

出かける支度をして現れた志保さんの前に、
パスタとサラダを出した
野菜ジュースとスープを追加しながら、最近
の志保さんの仕事の話を訊いていた

ごちそうさま、と言うて、バタバタと部屋を
出て行く志保さんは、めっちゃ忙しい 

あんまり部屋出てゆっくり出来る時間は無い
みたいやねん

うちのお母ちゃんと同じ仕事やから、忙しい
事やら大変な事はようわかんねん

しかも、志保さんは、最年少で所長に就任し
とるからな

後片付けと明日の支度をして、ベッドに飛び
込んだのは、深夜過ぎの事やった

翌日、私はパートナーの英治と喧嘩して、同
じチームの冴島さんや沖田くんも一緒に、4
人で昼食を食べに行った先では立て籠り事件
に遭遇して、人質になった

何か、めっちゃついて無いんやけど、私

オマケに、最初の事件で犯人逮捕時に負った
傷のせいか、めっちゃ具合悪い

でも、薬はあんまり口にした無くて、飲めず
にいた

チームのメンバーだけで夕飯を一緒に食べよ
うと誘われて、業務命令で共同生活をしとる
英治らのマンションに行った

最初は、冴島さんが奢ってくれる、言うたん
を、沖田くんがどうしても家飲みがええ、と
言い、お好みとたこ焼き食べたいと騒いだか
ら、結局、冴島さんに手伝ってもろうて、私
が焼いたんや

食欲はあんまり無かったから、もっぱら私は
飲んでいたんやけど、途中からめっちゃ寒く
なって、英治が貸してくれたタオルケットに
包まったまま、飲んでた私

途中からめっちゃ目眩がして、意識が飛んだ

え?

眩しい、と思うて目を覚まして、数秒固まっ
た私

見慣れへん天井、見慣れへん家具
シンプルな部屋

はらり、と落ちたタオルに、ベッドサイドの
荷物を見つけ、誰かに介抱された事に気づく

扉が開いて、上半身裸の英治が、首に掛けた
タオルでがしがし頭を拭きながら入って来た

「漸く、目、覚めたか?」

「うん、ってかゴメン!もしかして、アンタ
の部屋やってん?」

うわっ

慌ててベッドから降りようとして、くらりと
目が回り、転げた私

ガンっ、てぶつかった感触に、血の気が更に
引いた

私の顔がくっついてんのは
私の唇が触れてんのは
間違い無く、人の皮膚で、多分、胸で

私を抱きとめた英治も、私も、一瞬固まった

きゃああっ
うわあっ

慌てて飛び跳ねる

着替えるから、出て行けと部屋から押し出さ
れて、くらくらした頭で、リビングのソファ
に崩れ落ちた

ああ、何してんのやろ、私

すぐに、ブラックデニムにシャツ姿の英治が
出て来て、目の前に薬と水を置かれた

昨日、具合が悪くなった私を手当てしてくれ
たんは冴島さんで、目が覚めたら必ず飲ませ
ろと言われたんやって

オレ、出かけなアカンから、病院までは送る
と言う英治に、悪いからええよ、と言うと、
むっとした顔で言う

「オレが後から冴島らにしばかれんねん💢
しのごの言わず、病院行け、あほ💢」

英治は、私が黙って逃げるかもと踏んだらし
く、診察室に入るまで、付き添い、言うより
見張ってから、じゃあな、と出掛けて行った

診察室で、傷口の手当てを受け、昨夜の冴島
さんの手当てが完璧だったらしい事を知った

一旦家に戻り、着替えやら何やらを済ませて

医師に言われた通り、明日に備えて部屋でゆ
っくりする事にした

パソコンを立ち上げ、事件の整理やら何やら
を済ませ、あのファイルに潜り込んだ

あの事件について、自分の調べ上げた情報を
集めたデータや

公になった新聞、雑誌記事から、極秘ファイ
ルまで

お母ちゃん経由にて、入手した証拠物件やら
鑑定資料の数々もある

データの整理方法や、管理手法は向こうで学
んで来て、私は刑事になってからの資料もき
ちんと整理し、管理している

優作さんが、教えてくれたんや
経験も、後でちゃんと有効に利用出来るよう
にしとかなアカンって

それが、事件に関わった者の礼儀やって
情報も、外部に漏れんように管理する

留学中、優作さんや有希子さんについて回り
絡んだ事件の情報も勿論整理してあるで?

簡易鑑定技術は幼い頃から遊びのひとつとし
て身に付けてあった

捜査技法や、イロハは、向こうで実地込みで
教え込まれとる

世間一般のオンナやったら要らん技術を、私
はいくつも習得しとった

そのおかげで、今日まで生きて来られたんや

刑事になる時も、なってからも、大変やった
苦しくて、逃げ出したくなる事もあった

それでも、耐えられたのは

手帳の中に隠してある2枚の写真

おばちゃんを真ん中にして、私と平次がその
両側からくっついて笑う一枚

お母ちゃんが撮ってくれた、おばちゃんの人
生最後のお誕生日に撮影したものや

私達はみんな、屈託無い笑顔で笑うてる

もう一枚は、セーラー服と学ラン姿で笑う私
と平次

無邪気に笑う私達は、この後に起きる悪夢を
まだ知らない

頬を涙が滑り落ちる

何度も、何遍も、祈った
神様、この日に戻してください、って

他の総てを諦めてもええから、おばちゃんと
平次を返してくださいって

でも、その願いはまだ叶ってはいない
平次の行方がわからん限り、私は諦めてはな
らんのや

犯人も、まだ捕まえてへん
せやから、私は死んでもアカンのや

辛くても、逃げ出したくても、まだ、私は諦
めたらアカン

「平次、ゴメンな
もう少しだけ、我慢しとってな」

写真の中で、爽快な笑顔を見せている平次を
指先でそっと撫ぜた

[newpage]

服部邸殺人事件

もう何万回も資料を見直したし、現場も調べ
たけれど、犯人の手がかりを捜せずに居る

おばちゃんが生前関わった事件も片っ端から
調べたけれど、生命を奪われる程の恨みを買
うような事も、逆恨みを受けるような事も出
ては来なかったんや

でも、ひとつだけ

平次と何度か、服部邸にスーツ姿の若い男の
人が何度か来ていた事

おばちゃんと、口論しとった事もあるその2
人を、私は知っとる

うちの係長と、その相棒やねん

降谷零と風見裕也

配属された日、2人を見て愕然としたんや

どうして、と

公安時代の2人の活躍は伝説になっとる

何故、その公安でのキャリアを捨て、捜査一
課に移ったのかも謎やった

あの事件の日
降谷係長夫妻にも、事件が起きていた

一人息子が保育園を逃げ出して、事故死して
いたんや

平次の事件を調べる中、当日の全国紙も調べ
ていて知った出来事やった

何の因果か、と思うたけど

私が入手した資料には、降谷、風見と言う名
前も、2人が事件前に何度もおばちゃんに接
触しとった事も

一行も記載は無かったんや

私の証言も、その部分は、カットされとんね
ん、私はちゃんと、言うたんに

服部邸に設置されとった監視カメラの映像に
も、2人の姿は無くて、明らかにデータ改ざ
んがされとったんや

「不用意に、あの2人の名前は出したらアカ
ンよ、和葉」

お母ちゃんは、そう言うた

警察内部には、その存在さえ消して、表向き 
には存在しては行けない課が在る、と

通称ゼロ課

私が警察に入る事が決まった日、お母ちゃん
が言うたんや

私を英国に留学させたり、帰国後も同居せん
どころか、連絡も殆どせんかったのは、理由
がある、と

あの事件後は
誕生日さえ、一緒に祝えなかったんや

平次を思えば耐えられたけれど、最初はめっ
ちゃ辛かった

お母ちゃん、私の事、嫌いになったんかなっ
て思うて、泣いた事もある

でも、お母ちゃんが言うたんや

大好きな銀司郎さんが授けてくれた娘や
遺してくれた一人娘が可愛いくないワケ無い

親友の静華は、ひとりで育てた平ちゃんと、
あんな酷い形で別れさせられたんや

平ちゃんを、何としても取り戻したいねん

それが、アンタの子育て、手伝ってくれた親
友へ、私が出来る最後の贈り物やと思うてる

お父ちゃんの葬儀の時にも泣かんかったお母
ちゃんが、泣きながらそう言うたんや

せやから、お母ちゃんとは一緒に暮らせへん
でも、お誕生日さえ、一緒に祝えんでも、私
は堪えた

お母ちゃんが私を遠ざけた理由はひとつ

お母ちゃんは、警察内部の不穏な動きを察知
しとって、自分の身辺や、平次を捜しまわる
私の周辺を探る影を感じていたからや

せやから、おばちゃんとお母ちゃんの親友で
ある有希子さんに、私を託した

私が日本を離れとる間、お母ちゃんは何度か
襲われたらしいし、家にも不法進入されたら
しいのは、工藤夫妻から聞いていた

「和葉ちゃん、最後の最後まで、絶対に諦め
たらダメよ」

「そうだ、絶対に諦めたらダメだ
君が諦めない限り、平次くんは必ず帰って来
るはずだから」

工藤夫妻はずっとそう言い続けてくれて、祝
えないお母ちゃんの代わりに、私の誕生日も
成人式も盛大に祝ってくれた

私には、工藤夫妻とか、黒羽くんとか、お母
ちゃんが居らんでも助けてくれる人が居った

でも、平次はどうやったんやろか

いつもそう思うてしまうんや

事件のファイルを読み解きながら、あれこれ
思考を巡らせて行く

そう言えば、パートナーの鳥蓮英治も、何か
事情があって14歳以前の記憶が無いと言うてたよな

せや、24歳やって言うてた
(私より2歳も若いのはちょっと気にいらん
けどなー)

平次が生きてるなら、同い歳やん

英治は、どうやって育ってきたんやろか?

性格は悪いけど、育ちは良さそうな空気が
んねん

口は悪いけど、武道を嗜むせいか、姿勢と
か、立ち居振る舞いはええんよ
ちょっとした時の仕草とか

もう少し、仲良くなれたら聞いてみよう
色々と参考にしたいし

だって、私の記憶の中の平次は、中1の少年のまま

でも、現在の平次を探そうとするならば、24歳の平次を探さなくてはならないのだ

身長も体重も、顔立ちも体つきも変わって
るはずなのだ

「さ、練習あるのみ、やね」

私は現在、あるプログラミングの研究中

写真から、年齢を操作してその写真の主の
年前、数年後を予測して写真を作成する

一応、基本のプログラミングは警察にもあ
んやけど、微妙な誤差を修正したくて、色々
と試行錯誤してんねん

自分や周囲の人の写真を使って、ソフトに
けてみて、その誤差を計算してみたり、あれ
これやってみてんのやけど

「まだまだ、完成度は低いなぁ」

でも、諦めたらアカン

取り敢えず、2、3、志保さんに後で訊いて
ようと思う項目をメモして、端末の電源を落
とした

ストレッチして、身体を解してから、布団
ダイブする

そう言えば、と思う

私は基本、馴染みの場所やないと熟睡は出来
んのや

特に、あの事件以降

それやのに、具合が悪かったとは言え、昨
は完全に熟睡しとったんよ

それに、もう一つ

最後に平次に食べさせて以降、上手く作れ
くなっていたお好みとたこ焼き

何で昨日は自然と作れたんやろか
10年ぶりにまともに作れたんや

その謎が解けずに居た

何でやろか?

★後半に続く