02話 2月2日
-St Valentine's Dayまであと12日

この間ブチ当たった事件

事件そのものの謎は大した事は無くて、犯人
やってすぐ掴まったんやけど

お互い両思いなのに、拗らせまくった2人が
加害者と、被害者になってもうた事件やった

昨年、漸く和葉に告白して、正式に付き合う
事になったばかりのオレにはちょっとキツイ
事件やった

「アンタ、頭はキレるけど、女ゴコロは読め
ん、まだまだやな」

掴まった犯人に、そう言われたオレ
彼女になる人は、苦労しそうやなぁ、とまで
言われたんや

まぁ、その通りやから、何も言えんかった

告白した日は、めっちゃ頑張って色々計画
して、和葉を連れ出して頑張ったオレ

でも、唇にキスする勇気が無くて、頬にする
んが精一杯やった

死ぬ気で用意したカップルリング

和葉の指にはよう似合うたけど、自分は何や
落ち着かへんで、ちゃんと出来ずに、お守り
の中に入れて持ち歩いてる

散々悩んで、偶然事件で知り合った職人に
作ってもろうた指輪やねんけど

あの日以降、デートらしいデートも出来て
へんし、その、キスも、まだしてへん

幼なじみの頃と全く変わらんオレら

冬休みにくっついたオレらの事を、当然、
学校の面々が知るはずもなく

キャンプだ何だと少年探偵団と共に飛び回る
工藤にもまだ言うてへん

つまり、指輪の存在を知る両家の家族以外、
誰もまだ知らんのや

オレらがただの幼なじみやなくなった事を

「VDの日、オレデートやねん」

晃は嬉しそうに教えてくれた
正式に付き合い始めた翠から、お誘いが
あった、と

「でも、オレの方が先に計画しとったん」

「何を」

「海外ではなぁ、感謝を伝える日って言うか
別に日本みたいに、女の方が男にチョコを
あげるとかじゃ無いんやって」

だから、オレから翠に感謝を伝える日にしよ
思うてな、と笑う

感謝を伝える日か、と思う

「平ちゃん、たまには和葉ちゃん、喜ばせて
やってもええんちゃう?」

まだ晃にも言うてない
和葉と、その、恋人同士になったこと

それだけではない

我が家は大騒ぎになってんねん

卒業後、渡英する前には籍入れて式もせな
アカンとか何とか

「当たり前や
結婚前の和葉ちゃんに、不名誉な噂なん
あったらアカンやろ」

オカンが護るべきは、息子のオレやなくて
和葉の方や

おっちゃんと親父は、愛娘を不肖の倅に
奪い取られたと、夜な夜な酒を煽る始末

おっちゃんはともかく、親父は何でや!と
思わんでも無いけど、とにかくオレの周囲は
みーんな和葉が幸せやったらそれでええ、
と言う人ばかりで

オレとしては、文句言われんように、勉強も
剣道も、探偵も、どれひとつ手を抜けず

そこへ加えて留学の準備をせなアカン状態に
なって、大忙しやった

和葉が、海外進学を検討しとるらしいと聞き
昨年のオレは、オレの和葉事件やゾンビの
騒動を超す衝撃を受け、大変やったんや

事件で知り合うた職人に頼んで、カップル
リングを作ってもろうて、それを手に、もう
あべのハルカスから飛び降りる覚悟で、和葉
に告白したんや

海外進学希望がホンマやと知り、のんきに
しとった自分は大打撃を受けた

それまではオレ、勝手に、和葉連れて東京の
大学でも行こうか、関西一の名門校(オレら
の両親達の母校)にでも行けばええと思うて
たから

和葉はついてくると言うより、オレがどんな
手段を取っても連れて行くと決めていたから
和葉のその希望を聞いて、仰天したんや

せや、和葉はオレの持ち物とちゃうんやって
今更ながら、当たり前の事を知り、愕然と
したと言うのが本音

オレとしては、学びたい学科があればそれで
ええし、どこや無いとアカン、と言った拘り
も一切無い

むしろ、大学が最後の探偵をやる期間やし
環境を整える方が重要やねん

そう、和葉がちゃんと手が届くところに居る
と言う事が重要で、それが世界のどこであっ
ても問題は無いんや

「せやって、平次、探偵すんの、大学生まで
って決めてんのやろ」

日本離れてどないすんの、と心配する和葉に、
探偵なん、世界どこでも居るやんか、と言う
と、きょとん、とした顔をしとったなぁ

そう、工藤は確かにライバルやけど、オレの
ライバルは、工藤だけやない

世界には、まだ出逢ってへん凄いやつらが
ゴロゴロしとる

和葉が開いてくれた海外への扉は、ちゃんと
有効に使うてみせたるわ

それに、いつかは生まれ育った街へ帰る
そのつもりやからな

和葉とのキャンパスライフと生活と
最後の探偵生活を
ちゃんと両立してみせる

それが、オレの新たなる目標やねん
密かな決意と準備は、着々と進んでいた