▪️27:00 sweet tea / side Heiji 

黒羽から、漸く青子嬢が帰って来る
と連絡があった

「明後日、パーティしよ」

デザイナーチームは、そのまま次の
地に向かったため、和葉と黒羽が
彼女を迎えに行った

オレは、和葉に大事なミッションを
任されとるから、何がなんでも事件
を解決して、戻らなアカン

近年稀に見るプレッシャーの中、
オレは必死で事件解決に走った

黒羽達と、夜の街で待ち合わせして
みんなでビッグベンの川向いにある
大きな観覧車に乗った

「すごい!きれいだね!」

「ホンマや!めっちゃキレイ!」

一両がとても大きな観覧車だけど
オレ達4人で借り切った

はしゃぐ女性陣に、オレ達はほっと
一息ついた

ドレスアップした2人をエスコート
して、黒羽が予約したレストラン
に行き、ディナーを楽しむ

街を歩いて、自宅アパートを目指す

「すっごい楽しかったです!」

ありがとうございました、と嬉しそ
うな笑顔を見せてくれた

「お楽しみは明日やで?」

はい、と和葉が2人に招待状を差し出
した

翌日、朝から買出しに出かけて、2人
でキッチンに立つ
和葉と一緒に考えた献立を作る

黒羽のリクエストに応えて、お赤飯
に合わせて考えた

和風アレンジのローストビーフ
素焼きの野菜とフライドポテト
カラフルサラダ
正月に、青子嬢と黒羽が取り合いし
ていた黒豆に浅漬けにお味噌汁

甘党2人のために
柑橘系フルーツたっぷりのゼリー
と、ヨーグルト、バニラアイスで
和葉が特製のパフェを作った

甘いのが苦手なオレのために、
コーヒーゼリーと牛乳かんてんの
パフェも用意された

「すっごい!快斗!お赤飯だ!」

「うわぁ、うまそう!」

子供みたいに、キラキラして喜ぶ2人
和葉も満足そうな笑顔

和葉と彼女は冷たいお抹茶で
オレと黒羽は冷酒で、乾杯をした

「結婚、おめでとさん
あと、青子嬢の快挙を祝して!」

テーブルいっぱいに並んだご馳走は
キレイに空っぽになる

「片付けは任せて!」

オレと和葉がデザートを用意する間
黒羽と彼女が後片付けをしてくれた

「え~!すごい!本当にすっごい」

冷やしたグラスに作られたパフェに
テンションは最高潮
甘党黒羽は、大喜び

今日は、特別に、と、和葉が淹れた
お茶を飲みながら、黒羽と彼女は
結局、どちらのパフェも完食した

「お腹いっぱい、もうダメ」

「あ~幸せ!」

食後に、青子嬢が、生地の買い付け
ツアーの話をしてくれた

「同じ色でもね、繊維の質だとか、
織り方、染め方で、全然風合いが違
うんだよ、後はね、」

持って来た端切れを、ぴん、と張っ
たり、シワを寄せたり、折って見せ

「同じ生地でも、こんだけ色合いも
雰囲気も変わるの、すごいよね」

「せやな、深さも違うなぁ」

「光沢も違うな」

「いっぱい、勉強させてもらったか
ら、もう一回、プランを練り直して
デザイン画を描き直してみるの」

「期待してるぜ、青子」

任せて、と胸を張る姿も愛らしい
青子嬢は、少し逞しくなった

「服部さんと、和葉さんに、シャツ
を作ってあげるつもりで、生地を
買って来たんです」

アイスブルーと淡いピンク
織りの変わった白い生地が数種類
ピンストライプも色あいを変えて用
意されてあった

「いや~!めっちゃ楽しみにしとる
からね」

「はい!」

あと、結季のために、と、天然素材
のガーゼ生地や、タオル生地もたく
さん買ったらしい

「それが、試作品を作ってもらうか
らって、結季ちゃんの生地はほとん
ど先生が買ってくれたんです」

結季用に作る時、必ずもう1着同じ
ものを作って、と頼まれたらしい

「縫製技術を習得するためにって」

作品を定期的に提出して、見てもら
う約束をして来たらしい

「帰って来たら、作業部屋が完成し
てて、嬉しかった!」

気合い入れて頑張ります、と笑う

もうすっかり次のステージを見据え
ている顔だ

「黒羽、ええ仕事したな」

「最愛の宝物のためですから」

「惚気なら、他所でしてくれへん?」

「え?ここでするからいいんだよ」

きゃあきゃあ言いながら生地を片手
に笑う2人を眺めながら、お互い頬
が緩むのを止められへんかった