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平次とおばちゃんからの提案を、私は
お父ちゃんに報告した

「やってみろや、和葉
お母ちゃんの娘やから、頭はええはず
やで?
平ちゃんらの言葉に甘えてええと、
お父ちゃんは思う」

お父ちゃんは、お父ちゃんひとりやし
学費はどうとでもなるからええよ、
と笑った

「しかし、さすがは平蔵の息子や
ちゃんと先を考えとんのやな」

「ん?」

「和葉はまだよう知らんと思うけど、
こっちでも高学歴の嬢ちゃんは多い
んや
でもなぁ、どうやっても最後に選択を
迫られるんや
仕事を取るか、結婚や出産を取るの
かって」

職場が変動しない相手ならええ

でも、転勤とかがある相手やと、最後
はその問題が突きつけられるんや、と

「その点、平ちゃんはもう決めとる
やんか、その時は別居って」

そう、平次は転勤を避けられない仕事
やから、私が通えへん範囲へ異動に
なった時は、別居、と宣言されとるん
や、私は

「それなぁ、中々言えへん事なんや
で?和葉」

「うん、そう思う」

「オマエんこと、ちゃんと信じて、
応援しとるから言える事であって、
ホンマは一緒に居たいんが本音やと
思う」

「うん、私もそうやし」

「大事にしたれや?」

「うん、大事にしとるよ、ちゃんと
だって、お母ちゃんの娘やもん」

「あはは、せやな」

「お父ちゃん」

「ん?」

「結婚させてくれて、ありがとな」

「何や、いまさら」

「あっと言う間に色々あって、ようわ
からん間に嫁いだけど、あの
タイミングで良かったな、って思うた
んよ…平次もそう言うてた」

「そうか?なら良かったやないか」

「うん、でもな、もし、あのケガした
時とか、お父ちゃんと離れとった時に
平次とちゃんとしてへんかったら、私
きっと耐えられへんかった」

「和葉?」

「もうすぐ、ケガした日から1年や
平次達が帰還してから1年やねん
早いなぁ、月日が流れるのは」

「まだ、身体きついんか?」

「普段はもう問題ないで?
剣道や合気道の稽古も出来るし?
まぁ、寒暖差が激しい時とかは、しん
どい日もあるけど」

「そうか」

「家に居る時は、平次がマッサージ
してケアしてくれるから平気やねん
今でもしてくれるんよ?
忙しくても、帰って来た時は絶対に」

「その辺は、静さんに似たんやろな
平ちゃんは」

「そうかもしれんな、風邪ひいた時
とかも、怒りながらやけど何でもして
くれるし」

「オマエ、そんな迷惑かけっぱなし
なんか?」

「いつもやないよ、ちゃんと身体には
気を付けとるし」

「当たり前や、平ちゃんはこれから
お父ちゃんらと同じ仕事、する身や
もっと忙しくなるし、オマエも仕事し
だしたら、大変やぞ?」

「判っとるよ、お父ちゃん
今の生活は、予行演習やって平次、
いっつも言うてるし
結季ちゃんの事もな、平次も黒羽くん
も育児書まで読んで勉強しとるくらい
やで?
これもひとつの予行演習やって」

「あぁ、それならお父ちゃんや平蔵や
静さんだって同じやで?
じじばばになるための、練習やって言
われとるからなぁ、毎日」

「哀ちゃんの様子はどう?」

「静さんが褒めてたわ
赤ちゃんもええ子やし、お母ちゃんの
方も落ち着いとるから、後はこのまま
生まれて来るのを待ったらええ言う
てな」

「じゃぁまだ順調やね、良かった」

「あぁ、昨日も会って来たけど大丈夫
やで?
それとな、平蔵と例の組織の残党につ
いても追ってるから、問題は無いで」

「うん、その辺はお父ちゃんらが居る
から、哀ちゃん預けたんや
だから心配してへんよ」

「そうか?ならええけど」

「結季ちゃん、女の子みたいやね」

「あぁ、せやってなぁ
きっと可愛らしい子が産まれてくる
やろな」

「いつか、私と平次に赤ちゃん出来
たら、お父ちゃんはどっちがええ?
平次はな、ようわからんけど遅くに
どっちも来る気がする言うてんのや」

「せやなぁ、お父ちゃんは母子共に
元気やったら、どっちでもええけど
両方見れたら幸せやな、平ちゃんに
似た男の子も見てみたい気はするし
和葉に似た女の子も見たいしな」

「うん、私もどっちも見てみたい」

「お母ちゃんになるには、もっと体力
付けて、強くならんとアカン
身体大事にせなアカンで、和葉」

「うん、おばちゃんや平次にも言われ
とるから大丈夫」

「どっちもというか、どっちかでも生
まれたら、平蔵も張り切りそうやなぁ
いや、静さんが一番か」

「やっぱりお父ちゃんもそう思うた
んや?」

「そらそうやろ」

「あんな、お父ちゃん」

「ん?」

「今年、私と平次20歳になるやろ?」

「あぁ、来年の正月には成人式やから
なぁ」

「私、結婚した時、おばちゃんに約束
したんよ」

「あぁ、聞いた」

「ええよね、もう」

「あぁ、むしろその方がお母ちゃん、
喜ぶと思うで?」

「そうかな」

「お父ちゃんとしては、お母ちゃんを
お父ちゃんの恋人に戻してもらえる
みたいで嬉しいで?」

「お父ちゃん」

「それでええんや、和葉
オマエはもう大人になるんやし、もう
嫁いで立派に嫁として頑張っとるん
やから」

「うん」

「それになぁ、静さんにはそれが一番
の励みになると思うで?」

「励み?」

「あぁ、オマエも平ちゃんもすぐに
傍には戻って来られんやろ?
子供が出来るのも随分先の事になるや
ろうし」

「うん」

「その日まで、頑張ろうって励みに
なると思うで?名実共にオマエの子の
おばあちゃんって言われるためのな」

「そう思うてくれるかな?」

「あぁ、絶対、や」

「ほな、そうするな」

「あぁ、ちゃんと、聞き間違いさせん
ように言うたれよ?」

「うん」

「和葉にひとつ、教えたるわ」

「ん?」

「結季って名前な、アレ、和葉の名前
付ける時、最終候補まで残ってた名前
なんや」

「え?ホンマに?」

「あぁ、お母ちゃんと一緒に考えた
名前で、理由もそうや
お父ちゃんとお母ちゃんの合作やな」

「そうやったん?どうして和葉の方を
選んだん?」

「お母ちゃんの意志や
生まれる直前にな、一緒に散歩した
んや」

「散歩?」

「せや、ホンマはもう少し前に生まれ
るはずやったのに、オマエお母ちゃん
のお腹に居座っててなぁ、中々出て
来へんかった」

「そうやったん」

「だから、運動がてら、一緒に歩いた
んや
その時になぁ、春先で陽射しがよう
差しこんどってなぁ
新緑もきれいやったし、どうせなら
この季節にあわせた名前の方がええよ
ねって」

「それで?」

「あぁ、ほなそっちにしよかって」

「そうなんや、知らんかった」

「哀ちゃんにな、名前付けてもらいた
い言われた時はどないしようかな、
思うたんやけど、不意に思い出した
んや
お母ちゃんと決めたもうひとつの名前
使おうって」

「ええ名前やと思うよ」

「せやろ?ちょうどなぁ、あの子にも
ちゃんと新しい生活で頑張って欲しい
って思うたから、ええかなって」

「うん、そう思う」

「旦那はオレより忙しい身や
結季の事も、あの子の事も頼むで、
和葉」

「うん、頑張るから」

「勉強の方も頼むで?
美人で頭のええ娘が居るって有名なん
やから」

「あはは、お父ちゃんまでからかわん
といてや」

「お母ちゃん似とるオマエが美人や
ないはずないやろが
お父ちゃんとお母ちゃんの最高傑作や
からな」

「おだてても、何も出ないでー」

「そら残念やなー
目一杯おだててやったんに」

「お父ちゃんとおっちゃんのために
出来る平次くんを早う送り返すから、
待っとってな」

「おぉ、晃くんもめっちゃ頑張っとる
からな、頼むでー」

「うん、2人で動機入庁目指すんやっ
て、約束しとったから」

「せやな、この先の事を考えたら一緒
の方がええかもな」

「そう言うもんなん?」

「あぁ、そう言うもんや」

「ふーん」

「色々あるんや、男社会の中でも
まぁ、女社会も色々あるやろうけど
相談出来る、切磋琢磨出来る相手が
身近に居る方がええんや」

「お父ちゃんもそうやった?」

「あぁ、平蔵が居て良かったで?
まぁなぁ、親戚にはなりたくなかった
けどな」

「もう、そんなん仕方ないやろ」

「ははは、せやな」

「進学したら、私、役に立つかな」

「あぁ、その手のスペシャリストは
常に人材不足やからなぁ
絶対、役に立つで?」

「ホンマ?邪魔にならんかな」

「何で邪魔になるん?」

「うーん、なんとなく」

「和葉」

「ん?」

「オマエの悪いとこやで?」

「え?」

「平ちゃんと一緒に歩くって自分で
決めた道やろ?」

「うん」

「オマエからやなくて、平ちゃんが
オマエを指名したんや
あいつやったら、よりどりみどりやっ
たのに、やで?」

「うん」

「平ちゃんに、恥かかす気なんか」

「そんな訳ないやん」

「せやろ?だったら、堂々とせんかい
あほやなぁ、全く」

「だって」

「だってやないやろ!
平ちゃんは自分の人生賭けてオマエと
一緒に歩く道を選んだんや

まだ10代で、やで?

一蓮托生やって言うて、オレからかっ
攫って行ったんや

オマエはちゃんと、自信持って何でも
必死に頑張ったらそれでええんや
違うか?」

「うん、判っとるよ」

「いいや、オマエはまーだ判ってへん
そんなんで、よう平ちゃんに怒られん
なぁ、和葉」

「なんで?」

「なんでや無いやろ
ええか、平蔵はな、最初オマエ達の
結婚に反対や言うたんやで?」

「え?おっちゃんが?」

「2人分の人生背負って歩く覚悟が
あるんやったら、それ証明してみろっ
て言うたんやで?」

「ホンマに?」

「嘘ついてどないすんねん
平ちゃんは、それにちゃんと答えた
約束、ちゃんと守ったやろ?」

「うん、護ってくれたよ」

「オマエなぁ、10代の男の子には
拷問みたいな約束やで?
普通はなし崩しで傾れ込んでまうよう
なレベルや」

「うん」

「それだけの覚悟を決めて、オマエを
選んだ男やから、オレも早過ぎやと思
うたけど、平ちゃんに賭けたんやで?」

「うん」

「うん、や無いやろが
オマエがいつまでもうじうじしとるよ
うなら、根性叩き直してやるで?
その代わり、一切容赦せんからな

ええか? 平蔵やってな、静さんやっ
て、たったひとりの跡取り息子を
オマエにくれてやったんやで?

大事にするって言うたやろ
自分で決断したんやろ?

せやったら、くだらん心配する前に、
己の限界まで努力してみんかい、
アホが」

「せやね、言わんように気をつける」

「アホ!思わんように頑張れや

静さんも言うてたけど、何でオマエは
そんなに自分に自信が無いんや?

そんなんでようそっちの授業について
行けとるな」

「勉強は大丈夫やもん」

「ほう、そうなんかい
ほな、何が自信が無いんや」

「急激に変化があり過ぎて、自信が追
いつかんの!」

「そらオマエが悪い」

「判っとるよ、だから、言うてん
判っとるよって」

「可愛そうやなぁ、平ちゃん
一生懸命頑張っとるのに、まーだ悪
ガキだった頃の記憶引きずられとんの
やもんなぁー」

「だってー、あの平次がやで?」

「ま、仕方ないわな、一部は自業自得
やしな」

「せやろ?
でもなぁ、驚いたんのはホンマ
結婚してからやけど、あぁ、こんなん
考えとってくれたんやーとか
平次もおばちゃんの子やったんとかな」

「へぇ、そうなん?」

「うん、双子ちゃんもそうやし、花音
くんやへいたもそうやけど
平次ってそう言うの、煩いとか言うん
やないかなぁ、とかちょっと思うとっ
たんよ」

「あぁ、せやなぁ、でもなぁ、よう
現場でも小さい子にからまれとったし
面倒や言いながらも最後までちゃんと
面倒見てたで?」

「そうなん?ええなぁ、お父ちゃん
私の知らん平次を知っとるんや」

「せや、うらやましいか?」

「うん、うらやましい」

「そうか、まぁ、仲良うやってんの
やったらええわ、何でも」

「うん、ちゃんと喧嘩もするけど、
仲良うしとるから大丈夫や」

「判った、ほなお父ちゃん仕事に行
かなアカンから、またな」

「気を付けてな、ばいばい」

お父ちゃんとゆっくり話すのは随分
久しぶりの事やった

やっぱり、たった一人残してしまった
父親の事は心配

平次も、それをとても気にしてて、
ちゃんと電話しとんのか、とかよう
聞かれんの

今回も、ちゃんと報告しとけやって言
われたんよ

こう言うところ、妙に律儀なんは
きっとおばちゃんとおっちゃんの子や
からやろうな、と思う

今日も頑張って事件に飛び出した旦那
さんに、美味しいご飯でも用意してあ
げよう

これからかえる

だけのメールでも、送ってくれるよう
になったんやからね

とっても幸せな気持ちで、私は
キッチンへ向かった