▪️26:00 New followers / side Heiji

年始明け2日目は、花音という爆弾
が、ええ仕事をしてくれた

和葉目当ての来客は、2日目も多く
来客対応に大変やったけど、勝手
知ったる須藤と姉ちゃんが加勢して
黒羽の彼女と合わせた女性陣で和葉
をガードしてくれた上

「はじめまして」

と愛らしい笑顔を振りまいて、花音
が和葉に触ろうとするお客に飛び
ついてくれたんで、助かった

面倒な客が来た時は、毛利のおっ
さんが顔を見せたり、工藤のオカン
が和葉を呼んだりしたので、つつが
なく対応を終える事が出来た

「来年からは、一見さんお断りって
張り紙でもしよかな」

オカンはそう言って憤慨した

「それにしても、すごい数ね」

「あぁ、これ、普段の3.5倍はある」

「ええ?それ考えても多いわ」

姉ちゃんのオカンと工藤のオカンは、
うちのオカン交えて3人で話していたし、男親達は、徒党を組んで、
今日はどこかへ飲みに消えた

黒羽に娘を取られる中森警部を
励ます会やとか何とか

オレ達は、工藤が花音を取り押さえ、
須藤がへいたを抱っこして、和葉が
はなを抱っこしながら、姉ちゃんや
黒羽、黒羽の彼女と大所帯でカード
ゲームに興じた

今日は、昨日の事もあって、府警
メンバーがちょいちょい顔を見せた
効果もあって、ひやかしの客は早々
に逃げたんや

「新一、私にも花音くん抱っこさせ
てよ」

姉ちゃんは不満そうやったけど、
工藤は絶対ダメの一点張り

「何でアカンの?」

「こいつ、誰に似たんだか手が滅法
早いんだ」

ぶすっとした工藤が言う

どうやら、旅行中に何度も姉ちゃん
に、お触りをしたらしい

「何よ、子供なんだからしょうがな
いじゃない」

旅館でお風呂に入る時も、姉ちゃん
は、女湯に連れて行く気満々やった
らしい

「「「そらアカン(ダメ)!」」」

オレと晃と黒羽の叫び

オレやってまだお許しが出てへんの
に、花音に先を越される訳にはいか
ん、断じてNGや

面倒な客を追いやってくれた事は
感謝するけど、和葉へのお触りは
許容範囲外や

「オマエんとこの教育、どないなっ
とんのや」

「日本にいねーオレには判らん」

花音は眠いのか、工藤にしがみつい
て、うとうとしながらおとなしい

「天使なのは寝て居る時だけだ」

工藤は盛大なタメ息を吐いて、本格
的に眠った花音を母親に預けに
行った

和葉からはなを預かって、ひとまず
大人しくなった姉ちゃんは、難しい
顔をしながらカードを選ぶ

明日、黒羽達はリハーサルやろ」

「うん、午前中だけ」

「私と晃くんは実家に顔出してくる」

「せやったら、もちつき、何時が
ええかな」

紅白の餅をついて、配るのだ

近隣へ、迷惑をかけたお詫びと、
黒羽達の幸せのおすそ分けや

「楽しみ!」

姉ちゃんは昨年、和葉と2人で大変
だったけど、頑張ったの、と笑う

せやな、オレも親父も和葉の親父も
居らんかったからな

「年末にやったけど、おもしろかっ
たし、美味しかったぜ?な、青子」

「うん、取り合いになったよ」

晃達は久しぶりやと笑う

ゲームは姉ちゃんの負けで、罰
ゲームは明日の朝ごはん担当
もちろん、助手の工藤付き

翌朝、オレはちゃんと花音が勝手に
入れんように鍵をかけて和葉を護っ
たけど、鍵がかけれん部屋に居た晃
達と、工藤達は被害にあったらしい

「オレがちゅーされた」

須藤をかばった晃が花音のちゅー
を受けるハメになったらしい

和葉の具合が悪かったので、昨夜
まで工藤達は両親達と同室で眠っ
ていたのだ

工藤は、花音を姉ちゃんのとこへ行
かせないために、抱えて寝ていたら
しく、かなり疲れていた

「工藤と姉ちゃんはきょうから上で
ええで」

そう言うと、ほっとしとった工藤

午前中、みんなで盛大にもちつきを
して、花音は大はしゃぎ

出来あがったのを、手分けして個
包装し、和葉とオカンとオレで挨拶
がてら近所を回った

「いやぁ、和葉ちゃん、キレイに
なったなぁ」

「平次くんも大きくなって」

お騒がせしてすんません、と謝り
倒すオレらに、みんなそう言って
くれた

ご近所は、ほとんど入れ替わりない
エリアやねん

いつか預かった事のある諒と冴子の
家にも行ったら、2人共大きくなっと
って、驚いた

あの時生まれた二番目も、大きくな
って、いっちょまえの顔をしとった

「余所の家の子の成長は早いな」

「ホンマやな」

「何言うてんの、みんなアンタら
見てそう言うてるで?」

午後は、黒羽達は式の最後の打ち
合わせに出掛け、晃達はそれぞれの
実家に顔を見せに出掛けて行った

親達は、せっかくやし、とか何とか
言うて、みんなで大人の会食に出掛
けたので、オレは工藤達を連れて、
和葉とよう遊んだ公園に向かった

フリスビーで、はなとへいたを遊ばせ
て、ついでに花音も走らせる

きゃぁきゃあと遊ぶわんこと子供に
和葉と姉ちゃんも混ざって遊び出す

「あれからもう1年が過ぎたんだ」

「あぁ、せやな」

工藤はオレの隣に座って、遊ぶ姉
ちゃんらを遠い目で見ている

「和葉ちゃんの体調、どうだ?」

「ん?本人がめちゃくちゃ頑張っと
るからな、まぁ、きつい日もある
けど、基本的にもう通常通りの生活
しとるで?」

「そうか」

「和葉の事は心配せんでええ
剣道や合気道の稽古も再開しとる
くらいやし」

「そうだな、オメーも居るしな」

「姉ちゃんとはどないやねん」

「ん?蘭か?まぁ、仲良くしてると
思うけどな」

工藤は、後少しで、副作用の危険か
らも解放されるのだ

ついに、アレもしてええようになる

でも、その頃にはまた2人は離れ離
れやねん

「何や、えらく元気無いやん」

「いや、数ヶ月離れていただけなの
に、どんどん自分の知らない顔を
するようになったな、と」

覚悟を決めて選んだ道とは言え、
どんどん姿を変え、自分の知らない
世界を広げる姉ちゃんに、工藤は少
し淋しい気持ちを覚えとるようや

工藤の今の姿は、もしかしたらオレ
の姿であった可能性もある

オレがもし、工藤達の忠告に耳を貸
さず、和葉に告白もせんと、勝手に
家を飛び出していたら

昨年末の夜、和葉がベッドで初めて
胸の内を明かしたのだ

私のことなんか、女として好きや
無いと思うてた、と

だから、1人で生きる道を選ぶつも
りやった、と

告白した後、それらしい話を聞いた
事はあったけど、はっきり言われた
んは、初めてやった

自分の態度で、どれだけ和葉を不安
にさせ、傷つけていたかを改めて
知らされたようで、オレは、心臓を
握りつぶされるような嫌な痛みを
覚えたんや

「なぁ工藤」

「ん?」

「姉ちゃんに、プロポーズしてから
帰れ」

「はぁ!?」

仰天した顔をする工藤に、オレは
真面目にアドバイスした

「いつかやない、ちゃんとゴールを
設定して、姉ちゃんに言え
せやないと、遠距離なん耐えられん
やろ、お互い」

工藤に、年末和葉に言われた事を
明かした

「だから言っただろ?本気でヤバ
いぞって」

工藤は盛大にタメ息を吐いた
本当に良かったよ、と

「オマエやって一緒や」

「え?」

「オレよりちゃんと言葉で伝えてる
とかって油断しとる場合やないで

もう高校生やないんや
姉ちゃんの行動範囲やって広がっと
るやろが

うかうかしとったら、あっと言う間
に攫われてまうで?

うちなん、人妻やって言うのに
ナンパされまくりで困っとるんや」

工藤は唖然、とした顔

「ははは、和葉ちゃんだったら判る
気がする」

帰国する時も、空港やら飛行機内
やらいたるところでアプローチかけ
られそうになったんや

「服部にこの手の話で説教される
とは、オレも落ちたなー」

「何やと!こら!」

「冗談だよ、でもオメーすげーよ」

「あ?」

「付き合う前は散々適当なコト言っ
て逃げ回ってたと思ったら
さっさとプロポーズしていきなり
結婚、だもんな」

いつもの工藤にニヒルな笑顔

「それもよー、ちゃんと海外で2人
で新生活初めて、学校も探偵稼業も
新婚生活もきっちり背負ってやって
のけたからなぁ」

「それはオレやなくて、和葉や」

「え?」

「和葉が、短期留学時代の友人紹介
してくれたり、近所の人と交流持っ
たり、色々ちゃんとしてくれとった
から、探偵の仕事も転がりこんだし
学校生活も何とかなっとんねん」

「そこだよ」

「は?」

「オメー、気付いてねーだろ」

「何を?」

「昔はさ、オレがオレがの人だった
んだよ、服部平次は
いつも自信満々で、無鉄砲で、さ」

「何や、オレ、嫌なヤツやん」

「和葉ちゃんに告白してから、
オメー、変わったんだよ
ちゃんと、彼女に感謝してる
それをちゃんと態度にも出すように
なった」

特に、結婚してからはな、と笑った

「オレ、とってもええ子やからな?
元々素直やねん」

「調子に乗るな!」

「和葉にちゃんと言わなアカンと思
ったのは、姉ちゃんと工藤のおかげ
やし」

「褒めても何も出ねーぞ」

「早過ぎるって声もあったんや
でも、オレ達にはええタイミング
やったと思う
今の生活にも満足しとるし」

「そうみたいだな
和葉ちゃんに聞いた事があるんだ

幸せかって聞いたら、満面の笑みで
うんって言ってたから」

「いつの間に人の嫁とコンタクト
とってんねん」

「ずっと前からだよ」

むすっとしたオレに苦笑しながら
工藤は言うた

再渡米する前に、姉ちゃんに言う
約束する、と

「ほな、工藤の本気、見せてもらう
まぁ、頑張れや」

「あぁ、快斗にだって出来たんだ
オレが負ける訳にはいかねー」

そうだった

外見そっくりなコイツらは、遠縁
やって言うの、ホンマやったんや

そろそろ和葉を止めさせんと

「和葉!オマエはそろそろ止め
とけや!」

「せやね」

「腹減った、オレらもどこか飯食い
に行こうや、工藤の奢りで」

「なに!まぁ、いいや、行くぞ~」

家に居ると、また不要な来客が来て
しまうし、いつもの面々は、2日まで
に顔見せたから、大切な客はいない

へいたとはなを外で待たせて、オレ
らはファミレスで食事をして、腹を
満たして眠り始めた花音を工藤が
抱き抱えて一緒に帰宅した

「工藤くん、完全に若いパパや」

「新一の隠し子なんじゃないかって
言う噂もあるのよ?」

「姉ちゃん、いつ産んだんや?」

「嫌だ!私じゃないわよ」

「オレでもねーよ」

手際よく客間に花音を寝かしつける
辺り、完全にパパや、と思うけどな

へいたやはなは、脚を拭いてもらい
ごはんを与えられ、夢中で食べてい
るけれど、2匹とも、ホンマに大人
しくて、騒がない

食事を済ませると、遊び疲れたのか
あくびをして、丸まって眠り出す

オレ達も、花音の側でいつしか全員
眠り出してしまう

静かな正月の午後だった