▪️12:00 Ready Go! / side Heiji

別れの朝は、当然のように訪れる

まだ明け切らない夜明けに、ふと目
が覚めたオレは、寄り添って眠る
和葉をずっと見ていた

起こさないように、そっと何度も
触れてキスをした
離れていても、覚えていて
必ず、帰るから

伝え切れない想いが溢れてるのを
感じながら
滲む涙は隠せない

用意したプレゼントは、和葉のPC
に挟みこんだ

和葉に教えるべきことは、全て教え
たつもりだ

眠る和葉の首には、2人のあの指輪
が並んでかかっている

誓った約束は違えない
必ず、帰りその誓いは護る
それが、オレの使命だから

目覚めた和葉とキスを交わす
離れ難くなるから、身体を離そうと
するオレを、和葉が引き止めてキス
をしてくれた

「帰って来たら、してくれる?」

ほんのり頬を染め、恥ずかしそうに
笑う和葉は、目が眩みそうなほど
眩しかった

「オマエが嫌やって言うてもする
せやから、少しは覚悟、しとけ」

自分から言い出したくせに、照れて
あほ、と言う和葉

支度を整えて、玄関に向かうと
見送りに一緒に出る和葉の服を見て
泣きそうになる

昨年、オレがプロポーズしたあの日
に着ていた服やった

公園まで、指を絡めて手を繋いだ
迎えの車はもう来ていて、和葉の
護衛も既に待機していた

「和葉」

「平次」

「オレと工藤があの家に帰って来る
まで、絶対に油断したらアカン」

「わかっとるよ
逮捕の時が、1番危ないんやろ」

私も刑事の娘やで?と笑った和葉を
最後に強く抱き締めた
キスを交わして、頭を撫でる

「ほな、行って来るな!」

「行ってらっしゃい!待っとるから
必ず帰って来てや!」

おう、任せとき、と背を向けてオレ
は車に乗り込んだ

中には工藤が既に待機している

「蘭も既に大阪に向かって移動中」

窓の外で、護衛の警官に頭を下げ
挨拶している和葉は、もう泣いて
はいない

オレの好きな凛々しい顔

工藤も和葉をじっと見ていた

走り出した車は、全ての感傷を断つ
ようにスピードを上げた

府警の前を通る時、親父とオカン
が見送るのが見えた

頼んだで、和葉を

オレは気持ちを切り替えた
和葉が用意してくれたお守りを
そっと工藤に手渡した

工藤は大事そうにそれをしまう

必ず、返すから、和葉ちゃんに

そう言って

あぁ、せやな、必ず帰ろう
あの家に待つ和葉に会うために

オレはぐっと目を閉じた