▪️11:00 beautiful dreamer/ side Heiji 

入試を終えた晃は、府警の道場に
顔を出しながら、アルバイトに励む
ようになった

どうやら、進学先の神戸では、彼女
とルームシェアする方向で話はまと
まったらしいんやけど、

「平ちゃん、結構な額かかるんや」

費用を算出して、彼女と2人、青ざ
めたらしい

「翠もな、 バイトする言うたんや
けど、止めさせたわ」

ケガの後遺症のひとつや
秋冬の冷える季節になると、ケガ
の痛みがぶり返すのだ

「その代わり、おばちゃんにしっか
り家事、教えてもらっておけばええ
言うたんや」

確かに、ここ最近その姿をよう見る
な、とは思っていた

晃と須藤のところも、まぁ色々ある
にはあるみたいやけど、とりあえず
ゆっくり、順調に仲良くしとる様子

来月からしばらく大阪を離れ、行動
するオレとしては、和葉の事を任せ
られる数少ない相手

「また平ちゃんが帰国したら、一緒
に剣道しような?楽しみにしとる」

あぁ、そうやな

幼稚園のひよっこやった頃からや
手の内知られとる点では、沖田と
同じくらい気の抜けない相手で
強敵や

出発までは、出来るだけ多くの時間
一緒に練習しような

家に帰ると、和葉が飛んで来た
おかえりなさい、と笑顔を見せる

ほっとした表情の笑顔を見てわかる

コイツ、めちゃくちゃ緊張しとる
オレが、黙って予定を繰り上げて
行ってしまうのではないかと心配
して、警戒しているのだ

「そんなん心配せんでも、オレは
ちゃんと約束したやろ?
黙っては行かんから、大丈夫や」

うん、そうやね、ゴメン

と笑う和葉を、緩く抱き寄せた
今からこんなんやったら、身体が
参ってしまうやんか

日を追うごとに、怯える和葉
この間など、突然、してもええよ
と言い出した

驚いたし、嬉しかったんやけど

「なぁ、和葉
オレ、ホンマにお前のこと、好きや
だからなぁ、初めてくらい、お互い
ちゃんと落ち着いとる時に、その
ゆっくり向き合ってしたいねん」

ポロポロ涙を落とす和葉に、そっと
触れながら、ちゃんと目を合わせて
伝えた

和葉と一緒にする楽しみな予定が
ぎっしりやろ?だから、オレは簡単
にくたばる暇は無い、と

震える身体を抱き込んで、その背
をゆっくり撫でて叩く
大丈夫だから、心配せんでもええ
繰り返し、伝えた

「だから、今はいちゃこらしといた
らええやん?練習や思って」

わざと意地悪な笑顔を見せた

自分が口にしたことに気づいて
じわじわと赤くなる和葉を見て、
ほっとする

その日は、オレ達は一緒に寝た
たくさんキスをして、愛撫も少しだ
けさせてもらって

安堵して眠りに落ちた顔を見て
密かに決意する
絶対、オレはここに帰る、と
必ず、勝つから、と

その日以降、毎週末は一緒に寝る
ようにした

本音は毎日一緒に寝たい
でも、離れる間、お互いしんどく
なったら嫌やから

「帰って来たら、毎日一緒やで?」

そう言ったら、真っ赤な顔で
あほ、と笑われた

でも、小さな声で、うん、楽しみに
しとる、と言われた時は、嬉しくて
前言撤回で押し倒してしまおうかと
思う程やった

どんどん近くなる決戦のその日
和葉を宥めながらも
オレも密かに緊張感を高めていた