▪️09:00 CAS statement / side Heiji

9月の終わり、和葉の最後の試合が
終わり、和葉は合気道部を引退し
全ての部活動に終わりを告げた

「服部先輩?」

事件から、和葉の試合会場まで
駆けつける途中、剣道部の新米マネ
から連絡が入った

「残念ですが、試合、終わりまし
たよ、ついさっき」

これから、表彰式と引退セレモニー
が予定されているらしい
間に合うから、急いでくださいねと

和葉は無事、有終の美を飾った
と知らされて、ほっとした

急ぎ駆けつけた会場は、さながら
アイドルの引退コンサート並みの
熱気に包まれていた

合気道部のOBだけではなく、
剣道部のOBも、そして何故か、
和葉を追い回していた卒業生らも
ちゃっかり来ていて、騒いでいた

和葉は凛々しい袴姿で、騒々しい
周囲をよそに、丁寧に先輩や先生
仲間にお礼を述べ、キッチリと
挨拶をして、その最後を迎えた

後輩達はみんな泣いていたけれど
和葉は最後まで泣かんかった

最後、駆けつけた奴らに揉みくちゃ
にされそうになったので、慌てて
オレは和葉の前に立った

「平次!」

「おう、お疲れさん、和葉」

和葉の肩に手を回し、その場から
連れ去ろうとした

和葉に触れようとしたアホがいたの
で、キッチリおいたはアカンで~と
言ってやる

「何や、ただの幼なじみのくせに」

そう言ったのは、昨年卒業した元
サッカー部エースと、そのツレ

「先輩、情報が古過ぎやで?
人のオンナにちょっかい、出さん
といてや」

見せつけるように、和葉の身体を
引き寄せて、オレは連れ去った

あの2人が在学中は、ホンマに苦労
させられたのだ
たくさん居る中でも、1番面倒な
2人やった

「事件、終わったん?」

「おぉ、終わったで?
試合は見られんでスマンかったな」

ええよ、お疲れさま、平次、と笑う
和葉に、オマエがお疲れさま、やろ
と言うと、せやね、と笑い出した

オレを送って来てくれた刑事の車に
乗せて貰うて、一緒に家に帰った

「ただいま」
「おかえりなさい、和葉ちゃん
お疲れさまでした」

ええもん、届いとるよ、と言う
オカンの声に、嬉しそうな顔をした

「何やろな」

「オレも知らん」

荷物置いてくる、と部屋に向かった
和葉を見送り、オレはそのまま居間
に向かった

居間に行って見てわかった

あぁ、せやな、和葉が大好きな
もんやな
これは、喜ぶやろな

オレも、嬉しいわ

「平ちゃん、また背伸びたか?」

「どやろ、自分じゃわからんけど
和葉!早う降りて来いや!
ええもん、あるで~」

オレは、ええもんか、と苦笑する
その人は、穏やかな笑みを浮かべた

「今降りるから~、待ってや
先に開けたら嫌やからね~!」

軽やかな足音が聞こえてくる
彼女の笑顔まで、後少し