▪️08:00  sunflower /side Heiji

あ、ええな

事件関係者から情報を得る為に
訪れた新しいショッピングモール

高いこだわりの喫茶店で、大した
情報も得られず、デート紛いの事を
させられそうになったオレは、早々
に退散することにした

駅に送り届け、バイクを取りに向か
う途中、ショーウインドウに飾られ
ていたワンピースに目が止まった

肩を細いリボンで結び、胸元は細か
なギャザーが入っている
デザインはとてもシンプルだが、
細いギンガムチェック生地と胸元と
裾に施された飾り刺繍が特徴的な
ワンピースだった

「和葉、似合うやろな」

この間、オカンと買い物に出て、
麦わら帽子と籐籠のポシェットを
買って帰ってきた和葉は、オカンが
最近凝っている造花を使って、2人
で細工を施していた

向日葵の造花をあしらったそれは
和葉にとても似合っていたのだ

せっかくの夏休み
今日もこんなに早う用事が済むなら
一緒に連れて来たら良かったな

「彼女にどうです?」

お店からひょっこり顔を出した
姉ちゃんに声をかけられた

「服部くん、でしょう?」

ふふっと悪戯っぽい笑顔を浮かべた
その人は、いつものカメラマンの
彼女やと言う

「コレ絶対似合うよ、和葉ちゃん」

人気有名雑貨店の経営者だと言い
この店にも備品を貸し出しに来た
らしい

とりあえず、どうにか手持ちで払え
る金額だったので、オレは購入した

和葉の写真が好きで、ファンやと
言ったその人は、次の撮影で使う
備品調達も担当しているらしい

「あ、ちょっと待って」

カバンをゴソゴソして、笑顔で差し
出されたのは、小さなキーホルダー
のようなトイカメラ

「小さいけど、結構雰囲気のある
絵が撮れたりするの」

2人で遊んでみて、と言って笑うと
次の仕事に行かないと、と走り去っ
て行った

「え~!私も会って見たかった」

悔しがった和葉は、えらく驚いて
いたけれど、ええの?と何度も
言いながら、着替えて見せてくれた

「いや~、可愛ええな!」

帽子とポシェットにもよう似合う
ワンピースは完璧に似合っていた

「平次、おおきに」

綻ぶような笑顔を見せて笑う姿に
オレだけやなく、隣で見ていた
オカンまで、頬を緩めていた

庭に咲き誇る向日葵の前で、和葉
と2人、オカンに写真を撮って
もらった

容赦なく暑い夏も、折り返し地点
に差しかかっていた