▪️07:00 Summer festival /side Heiji

「「ただいま~」」

「お帰りなさい!
いやぁ、和葉ちゃん、可愛ええな」

オカンに飛びついた和葉の頭から
簪の飾りがシャラん、と鳴った

祭りの後、夜寝る時に和葉から
とんでもない罰ゲームがくだされた

「一緒に寝よ」

オマケはええから、ぎゅーして
欲しい、と言う和葉

一緒に行けなかったお詫びに、ひと
つだけ言う事を聴いてやる、と言う
オレに、和葉が言い出したのだ

オレにとっては、最悪の拷問や
でも、必死で耐えた

まぁ、それも最初だけで、和葉が
すぐに眠ってしまったのを見ている
うちに、オレも寝落ちしてしまった
のがオチ

朝、おはようと笑った和葉を今まで
に無い距離感で見れたのは幸せやと
思ったけれど、でも、でも…

「オレのどあほ~‼︎」

と、最大のチャンスを逃した自分に
和葉に背を向けて崩れ落ちたのだ

帰りに、オカンに見せてあげたい
から、と言うので、もう一度着せて
一緒に帰って来たのだ

和葉、オレは着せる腕前あげるより
帯をくるくるする方の腕前、あげた
いんやけど

でも、まぁええか
一緒に2人だけで泊まりがけの旅行
に出る予行練習が出来た、と思え
ば、な?

それに、嬉しかったから

オレに触れたかった、と言ってくれ
たし、オレに触れられるのは、嫌や
ないって言ってくれたから

抱くことは叶わんかったけど、
しっかり抱いて、キスして触れられ
ただけでも良かった、とせな

言いようもない幸せな気持ちで、
眠りに落ちたこと
安心した顔でくっついて眠る顔
を見せてもらったこと

何よりも、目を覚ました時に、
変わらず寄り添い眠る和葉が居て
くれたことが嬉しかった

「平次、顔がだらしないで?」

からかうように笑いながら、オカン
が後ろを通過した

はぁ~、最大のチャンスを与えて
くれたんも、それをピンチに変え
るんも、このおばはんや

もう全部放して、押し倒しておけば
良かった

「オレのどあほ~‼︎」

「平次、何ひとりで騒いどるん」

はっときづけば、オレに冷茶を
差し出す和葉と、思いっきり冷たい
視線を送るオカンが目の前に

「和葉ちゃん」

「何?おばちゃん」

「そのあほに、帯くるくるーってさ
せたり?」

ぽかん、としていた和葉の顔が、
一気に真っ赤になる

「何言うの、おばちゃん!」
「何言うてん、オカン!」

涼しい顔で冷茶を楽しむオカン

「心配せんでも、大丈夫やで?
和葉ちゃん
中締めがあるからなぁ、はらり
もポロリ、も無いんやで?」

「おばちゃん‼︎」

高らかに笑うオカンに、固まった
和葉に、崩れ落ちたオレ

あぁ、せやな、これがいつもの
定位置、やな
でも、でも

やっぱり、オレはあほや、と思う

立ち直れないほど崩れ落ちたオレに
工藤は容赦無いトドメを刺した

「ばっかじゃねーの?
オレなら無理!ぜーったい、無理!
やらなきゃ蘭に失礼だろ?」

ふんっ、と言って電話は切られた