▪️05:00 million kisses /side Kazuha 

ひと騒動やった夏服の衣替えの支度
も終えた

何せ、もうそろそろ、平次の背も
止まるやろ、と言うタイミングで
5-6センチも背が伸びたのだ

上着は手を入れる必要は無かったん
やけど、ジーンズやフルレングスの
パンツ、スーツや制服は直す必要に
迫られた

おばちゃんと2人、手分けをして、
家で手直しをするものや、プロに
お願いするもの、ついでやからと
買い直しにするものと、手分け
だけでも大変やった

受験勉強に、部活に、家事に、と
フル稼働で動く私は、漸く平次の
しんどさを少しわかった気がした

そんなある日、事件に出ていた平次
が、両手に何かを抱えて帰って来た

「和葉、居るかー?助けてや」

台所から玄関に行って、?と思う

平次が抱えているのは、どう見ても
荷物やない

小さな男の子と、女の子やった

慌てて、平次の片腕から、女の子を
抱えあげた

2人とも、グッスリ寝ているけど、
見覚えのある顔

「あれ、諒くんと冴子ちゃんや
どないしたん?」

2人とも、近所に住む3歳の子や
何度か、平次を待ちながら、とか
平次と一緒に公園で遊び相手を
した事がある

おばちゃんが急いで客間に布団を
敷いてくれたので、2人を寝かせる

差し出したお茶を、一気に飲み干し
た平次が、事情を説明する

冴子ちゃん家で、身内の不幸があり
遠方まで両親が出かけているらしい
同い年で仲良しの、諒くん家で、
預かっていたんやけど、諒くんの
お母ちゃんが、急に、産気づいて
しまい、両親は病院に居ると言う

「え?でも、諒くんのお母ちゃん
来月やなかった?」

確か、つい先日会った時、お腹を
触らせてもらって、そんな話を聞い
た気がした

「せや、予定日は来月らしいけど」

平次は事件絡みで訪れた病院で、
困り果ててる諒くんのお父ちゃん
と遭遇したと言う

週末やったので、学校も休みやと
言う事で、2人は服部家で預かる
事になった

おばちゃんと手分けして、2人が
寝ている間に、着替えとか色々を
用意するために、買い物に出る

帰宅すると、平次が両脇に2人を
抱えて眠っていた
たぶん、途中で目が覚めてしまった
んやろう
あやし疲れて寝てしもうたんやね

平次が諒くんを
私が冴子ちゃんをお風呂に入れ
ご飯も食べさせた
ええ子やから、悪ふざけもせんと
よう回らん口で、一生懸命に話す
以外は、手がかからなかった

でも、小さな子やから、慣れない
人の家やと言う事もあり、眠る前は
さすがに少しはぐずったけどな

結局、寝付くまで2人をあやしてた
私と平次は、結局2人と一緒に客間で
寝起きをすることになった

と言うよりも、眠る直前の体温の高い
子供を抱え、つられて寝落ちしたんや
私も、平次も

よう笑う可愛ええ2人

泣いたり怒ったり、寂しがったり
くるくる変わる表情

でも、諒くんは、冴子ちゃんの前では
ギリギリまで我慢していた
特に涙は

小さいけれど、しっかり男の子やなぁ
と感心する

「小さい時の和葉ちゃんと平次、
見とるみたいやなぁ」

確かにそうやった

よう笑って、ケンカしては泣いて
くるくる変わる表情は
何よりも可愛ええ

私は意外やった

途中から面倒がるかなぁ、と思った
平次は、意外と平然としていて、2人
相手に構い倒していたのだ

諒くんに至っては、お腹の上に乗っけ
たままで、眠ってしまうほどに

「ええ予行練習やな」

おばちゃんはそう言って笑っていた

私は自分の耳まで真っ赤になって
しまったのがわかる

小さな台風みたいな2人は、あっと
言う間に去って行った

諒くんの妹も、無事誕生して、さらに
小さな子分が生まれたのだ
平次と一緒に2人を、送りながら私達
もガラス越しに対面させてもらった

「ひとん家の子で、あんだけ可愛え
え思うんや、自分の子やったら、
ひと騒動やな」

「私らも、そうやって育ててもらっ
たんやないの、おばちゃん達にな」

久しぶりに手をつないで、のんびり
家まで散歩する

「和葉もオレも、社会に出て働いて
慣れた頃に、出来たらええなぁ」

「え?」

「心配せんでも、取って食うたりせん
それに、お前がやりたいこと、叶えて
からでええやんか
まぁ、卒業したら、やることはさせて
もらうけどなぁ、色々と」

「あほ!平次のスケベ!何考えとん
嫌やぁ~、触らんといて」

笑い転げる平次と私は、どつき合い
ながら帰る

そうでもせんと、泣いてしまいそう
やったから

ちゃんと、色々な未来を考えてくれて
いるんやなってわかって

相変わらず、ケンカも多いし、ふざ
けたりもするんやけど

こうして2人で歩く先に、可愛ええ
2人みたいな子らに逢えたら嬉しい

今は素直にそう思えた