▪️05:00 million kisses /side Kazuha 

結婚式当日

新緑が目に鮮やかなよく晴れた日
用意されていたドレスは、想像よりも
ずっと大人っぽくて、アクセサリー
やら何やらも、上品で繊細なものが
揃えてあった

着替えが終わり、部屋でひとりに
なると、私は窓辺に立って、眼下に
広がるキレイな中庭を眺めていた

平次はきっと、似合うやろうな
タキシード
どんなんかなぁ、楽しみやなぁ

「和葉?」

「平次?」

思わず頬が緩む
あぁ、ホンマにカッコイイな
ダークグレーのスーツは、光の加減で
黒にも見える
シックで上品なタキシード

あぁ、私の知らん間に、大人になった
んやね、平次

ゆっくりと私の前に立って、私の手を
取ると、耳元で囁いた

「キレイやで、和葉」

今日は絶対、泣かんとこ思ったのに
何で泣かすようなこと、するん?
溢れる涙を、化粧が崩れてまうと
そっと拭ってくれた

アンタはホンマに、どこでそう言う事
覚えてくんの?
ちょっと飽きれるけど、嬉しい
優しい掌がほんの少しだけ震えていた
のに気がついたから

荘厳な空気の中、静かで穏やかな空気
が流れ、粛々と式は進む
誓いのキスまでは

「帰ったら、めっちゃちゅーしたる
せやからオマエも我慢、やな」

控え室での平次の声が蘇る
優しい頬のキスとは全く違うので
思わずふっと笑ってしまった
そうしたら、平次も思いだしたのか
つられて笑ったのだ

「平次!デレデレせんでしゃんと
しなさい!やってまえ!」

やってまえ?

おばちゃんの声が静かな空間に響き
渡った

「せやな、せっかくだし」

え?

あっと言う間に平次の唇が重なる
ちゅっと言う音で我に返った私

な、何すんのん!

思わずいつもの調子で、平次を
ど突いてしまった

あっと言う間もなく、会場中から
明るい笑い声が響き渡った
お父ちゃんも、しょうがないやつら
やなぁって笑っていた

私と平次やもんね
こんなもんや

でもええか、みんな楽しそうやし
平次も笑っているから

蘭ちゃんに、ブーケは渡すつもりで
おばちゃんには事前に話していた
せやね、送ってあげたらええよ
なーんて言っとったくせに

みんな、私を喜ばせるために内緒に
しとったんやね
ありがとう、嬉しかったよ
蘭ちゃんに、ちゃんと渡せたし
一緒に写真も一杯撮れた

これが、正真正銘本物の結婚式だと
は知らんみたいやけど

お父ちゃんには言われた

お母ちゃんにはまだ及ばないけど
キレイになったな、大きくなったな
平ちゃんは大変な仕事をするんや
信じて、大事にしたれよ?
今まで以上に、仲良うして、一緒に
色んな夢を叶えたらええ

和葉、幸せになれや
そうなれるかは、他の誰でもない
自分自身、次第や
お前と平ちゃんなら出来る
頑張るんやで?

控え室からチャペルまでの僅かな
距離を、噛みしめるように2人で
歩いた

ありがとうね
これからもよろしくお願いします

そう言ったら、オレはまだ和葉の
子守りをせんとアカンのか、と
苦笑しとったお父ちゃん

身体に気を付けて、お仕事頑張り、
そう言ったら、任せとけ、と言い
大好きないつもの笑顔を見せて
くれた

蘭ちゃん達に幸せのバトンを渡せる
ように、平次と2人、頑張るな
誰にも負けへんコンビネーションで
精一杯、全力で走るから