▪️05:00 million kisses /side Kazuha 

私と平次の誕生日が近づいた

昨年は、すっかり忘れられて泣いた
んよね、と思い出す

まさか今年、平次の家で暮らし、
間も無く入籍するなんて、想像した
事も無かったくらい、必死で片思い
していたのだ

高校生探偵として、平次は全力で
最後の一年を走り始めた
寝る間も惜しんで走る平次を、今年
は間近で見ることができる

心配は尽きない
でも、自分に出来る事をして待つ
必ず、帰って来てね、と祈りながら

事件を追いかけながらも、部活も
勉強も手を抜かない平次だ

この間、夜中に珍しく目を覚ました
私は、水を飲むために階下に降り
ようとして、平次の部屋に灯りが
ついているのに気がついた

「平次、ちゃんとベッドで寝ない
と、身体、壊してしまうよ」

机に突っ伏していた平次を揺り起こす

「ん」

そのまま私を巻き込んで、ベッドに
倒れ込んで、身体を丸めて眠り出す

平次の身体は重い
しなやかな筋肉がちゃんとついて
いるので、細身に見えるけど、それ
なりに重さはあるのだ

完全に下敷きにされた私は、中々
逃れられない
酸欠寸前で、どうにか抜け出した時
はもう、平次は完全に夢の中

でも、赤ちゃんみたいに私の掌を
掴んだままなのだ

男の人の掌だなぁ、と思う
ちゃんと丁寧に手入れをしている
けれど、竹刀を振る掌はゴツい

どうしようかなぁ、と悩む
スヤスヤ眠る顔は、子供の頃と大差
ない穏やかな顔

起こすのも可哀想やしなぁ

空いている片手で、そっと髪を梳いた
私よりも少し張りがあって滑らかな髪
触ると心地良いのか、安らいだ表情

伏せられた瞳を縁取る黒く長い睫毛
私より長いんちゃうかなぁ
肌も浅黒いけど滑らかだし
お父ちゃん達よりもヒゲは薄い

よし、と思って、離してもらえない
片手を逆に私はしっかり握る
少し身じろいだ隙間に滑り込んだ

布団をしっかりかけ、自分も横に
なって、平次を胸元に抱き寄せた

ふんわり香る、平次のシャンプーの
香りと、いつもの平次の匂い
涙が込み上げてくる

あぁ、ホンマに好きや
なんでこの人やなくちゃアカンの?
理由なんてないんやね

ただ、愛しいだけ

温いのか、枕と間違われたのか
身動きした平次は緩く私に抱きつく

胸元に顔を預けられて、恥ずかしさ
もあるけれど、それを上回る安心感
もういいや、と思って自分も目を
閉じた

別々の身体なのに、くっつくと何故
だかぴったり寄り添える
不思議やね

なぁ、平次、私な、

平次やおばちゃん、大好きな人たち
一緒に暮らせるだけで、幸せだな
嬉しいな、そう感じるんや

みんなが元気で、暮らしていけたら
きっとそれが一番の幸せ
一番のプレゼントやね、きっと

今年も、みんなで美味しいごはん
食べようね、平次
それでええ、それだけで、十分や
うん、そうしよう

プレゼントは要らない
だから、一緒にいてね、平次

おやすみ、平次
良い夢を


ちなみに、翌朝、自分で潜りこんだ
事を忘れて、目を覚まし、私の腕の
中で驚いて目を見開いていた平次を

わ~  何にすんのん!

と突き飛ばしてしまった私

ゴメンな、平次
こんなあほな私やけど、これからも
末長くよろしくね