▪️05:00 million kisses /side Heiji

挙式を終え、着替えをしてこれから
みんなで食事を、と言うタイミングで

オレと工藤は、またしても事件に巻き
込まれた

当然、居合わせた、親父やオッチャン
も一緒に事件に走る

「やっぱり、死神説は正しいかもな」

「そうだね、何も今日じゃなくても」

「本番の日やったら、全員打ち首に
したるわ」

事件に走り出したオレ達を見送った
女3人の会話を、後で和葉が教えて
くれた

「夕飯までに解決出来んかったら、
アンタら全員飯抜きや!」

オレと親父に送られたオカンからの
メールに、当然オレ達は必死になった
飯抜きどころか、家から閉め出され
てしまうから

4人揃うとさすがに話が早い

犯人を捉えて、警察へ身柄を預けたの
は夕方
さすがに親父達は府警に顔を出さざる
を得なかったけれど、オレと工藤は
ギリギリ、夕飯にありつけた

「それにしてもさ、異様に早い展開
じゃねーか」

姉ちゃんはオカンと和葉と3人で居間
で何かを相談中

オレの部屋で工藤は椅子をくるくると
させながら、オレに自供を促している

仕方なく、入籍済みな事は伏せて、
来年の挙式の裏事情を話した

「親父も、オッチャンも、府警では
それなりの有名人や」

だから、色々と面倒な話もある

上層部のご子息、ご令嬢、関係者との
縁談話とか、何とか色々

「あぁ、服部の家と和葉ちゃんの
ところだったら、多いだろうな」

察しのええ工藤はわかった様子

「白馬のところとも、一度、話が持ち
あがったんや」

思い出したくも無い、一件

昨年、白馬の関係者が事件絡みでオレ
と一緒に居た和葉を見染めてしまった

年齢もちょうどええし、文句ない

間を取りもって、ええ思いをしようと
した官僚が、もの凄い勢いで話を強引
に勧めようとしたのだ

白馬がオレの元を訪ねて来るまで、
オレはその騒動を全く知らなかった

親父達はそれを回避すべく、必死で
裏で色々と動いていたらしい

「僕としては、全く異論は無い
素敵な女性だと思うし、申し分ない
でも、彼女にはたぶん、気になる存在
が居るはずなんだ」

涼しい顔でそう言った白馬は、オレに
どうするかを迫ったのだ

最初は通常モードで、ただの幼なじみ
やし、決めるのは和葉やと突っぱねた

でも

「可愛そうだけど、遠山家には拒否権
は存在しないんだ
拒否すれば、優秀な遠山刑事の未来は
無い、ここで終了、だ」

汚い話で、僕は好きじゃないけど、
これが現実だ、と言う

「和葉さんは、聡明そうな女性だね
自分の父親の将来がかかっていると
なれば、見合いだけは承諾するだろ
うね」

でも、それは許されないと言った

見合いして、交際を断れば、それも
父親の将来を断たれる事に繋がる
和葉には、選択権も何も無いのだ

「オレにどうしろと」

白馬はまっすぐにオレを見て言った

「本当の気持ちを教えてくれたらいい
そうしたら、僕の方から事前に上手く
断りを入れる
でも、もし、あくまでも誤魔化すと言う
のであれば、僕は、積極的にこの話を
進める」

和葉とオッチャンを人質に取られて
オレは引き下がるわけにはいかない

和葉はオレのや、と言い、公表はして
へんが、許嫁や、と告げた

了解、と言った白馬が何をしたのか
それはオレは知らないけれど、その
縁談は跡かたもなく突然消えた

そして、官僚は不正が明るみに出て
勇退せざるを得なくなったのだ

「和葉は、この話、全く知らないんや
オッチャンが、絶対に言ってくれるな
言うてな」

その時はまだ、和葉と今日のような
日を迎えられるかどうかも判らない
時期だった

何せ、戎橋の件よりも前の事

「その後も、その手の話が無い訳では
無いんや
むしろ、和葉狙いの話が増えてなぁ」

今でも、やで?と工藤に言うと、
そうだろうなぁ、と笑った

「あの様子を見てしまったら、そう
なるだろうな」

「今はオカン達が、高校生やからと
言う理由で断ってくれとるけど、それ
が通用するのも、後1年も無い」

「そうだな…むしろ、この先の方が
この手の話は増えるだろう」

「だから、和葉と付き合う時に
先にプロポーズ、しとったんや」

「蘭から聞いたよ、
オメーらしいと言うか、何と言うか
子分だー幼なじみだーって散々言って
おいて、いきなりプロポーズだもん
なぁ」

のんきにしとる時間は無かった
和葉を再び奪われないよう、オレも
オカン達も必死やったから

「でも、和葉ちゃんがちゃんと服部
の元へ嫁げるなら、良かったよ」

何故か安堵した表情の工藤

「蘭の妹みたいな感じだろ?
やっぱり気になるんだよ、他の女の子
とは違う存在なんだ」

オレ達の秘密も握る女神だからな
と笑った

「だから、掛け値無しで幸せになって
欲しいんだ
それに、和葉ちゃんが幸せになれば
蘭も、考えてくれると思うんだ…色々」

「工藤?」

「あ、誤解すんなよ?
オレはもう、蘭の事を諦めたりしない
必ず、元の姿を取り戻して、蘭の元へ
帰るよ…和葉ちゃんとの約束だから」

ただな、と工藤は言った
姉ちゃんは、いきなり色々な事実を
突きつけられる事になる
ちょうど、進路も絡んで、混乱する
のではないか、と

そんな時、和葉が居れば、それも
幸せでいてくれたら、歩き出す勇気を
貰えると思うんだ、と

「全ては服部、オマエが鍵を握るんだ
頑張れよ、花嫁に逃げられねー
ようにな」