息子の顔に大きな絆創膏。なんと今日は、家族揃って救急車に乗るハメになった。



まずはとても平和な朝。もうすぐ結婚記念日なので、みんなでご飯を食べに行こうと支度をしていた。息子が元気いっぱいバランスボールからビーズクッションに飛び移り、勢い余ってテレビ台にスライディングをしてしまった。


我が家のテレビ台の角は鋭利なため、息子が赤ちゃんの頃はクッションをつけていたのだけど、そろそろ大丈夫だろうと既に外しており、そこに顔から突っ込んだのだ。鼻のつけね辺りがぱっくり割れ、血が噴き出す。


「うわーーーー!」と息子が泣き叫んで、痛い痛い、ママごめんね、ごめんなさい、と繰り返すものだから、こちらは胸が痛くなる始末。いつも危ないって注意されてたのに危険なことしてごめんなさい、せっかく結婚記念日なのにごめんなさい、お出かけできなくなってごめんなさい。


そんなこと今はどうだっていいよ。こんな時、母は強し、といきたかったけれどそうもいかず、傷口に弱い私は吐き気をもよおしてしまい、洗面所にいた夫を大声で呼ぶ。夫はとっても頼もしくて、すぐに息子を落ち着かせ、とりあえず血を拭い、止血にとりかかってくれた。


私もどうにか救急車を手配し、息子を夫に任せてトイレへ。そういえば高校1年生の頃に友達と自転車で転んで、私は無傷、友達の膝がぱっくり割れて縫う怪我をした時にも、なぜか私の方が倒れて近所のガソリンスタンドに寝かせてもらったことがある。どういう身体の仕組みなんだろう。


救急隊員の方々はとても親切で、テキパキと息子を搬送してくださった。日曜ということもあり、なかなか受け入れ先の病院が見つからない。これ、どうにか頑張ってタクシーで行こう、などと血迷ってたら詰んでたな。救急車なんて図々しいかな?、と一瞬悩んだけど、呼んでよかった。


子供の顔を縫うような怪我となると、専門医じゃないと厳しいらしく、結局、区内では見つからなかった。そうこうしているうちに息子の気分が悪くなったようで、救急車内で1回嘔吐。 いつもピンクのぷるぷる唇から血の気がひいて、ベージュになっていた。


救急隊員と親との会話を聞いていて、“縫う”という単語に反応した息子。え?縫うの?痛いの?と呟いた後にさり気なさを装って、「なんか、痛いのおさまってきたな…?」と言い出して笑った。どう見ても縫われる恐怖で、虚偽の証言をしている。愛しい。



さて救急車でかなり走ってやっとお隣の区の病院に到着し、麻酔をして内側3針、外側10針を縫った息子。麻酔の注射は地獄の苦しみで、怪我をした肉の部分と、その周りに何本も射すので息子は絶叫しながら泣いていた。そりゃそうなるよ。がんばれなんて言えないよ。


私はというと、息子の処置が始まってホッとしたせいか、また急速に血圧が下がり、今回は吐き気はぐっとこらえたものの、椅子にも座っていられなくて、看護師さんが息子の隣のベッドに横にならせてくださった。なんて迷惑な。ほんとに恥ずかしかったし、情けなかった。



麻酔のおかげで患部が痛くなくなった息子はケロっとして、またまたママごめんなさいと言い始める。次から気をつけてくれれば、ごめんはもういいよ、ごめんって言いたくなったら、代わりにありがとうって言ってね、と伝える。うん、わかったー!ありがとう!と言ってくれる息子が、愛しくてたまらない。この子が無事で本当によかった。



バスを乗り継いで家に帰ると、リビングが血まみれ。夫がせっせとお湯で洗ってくれたおかげで、ラグもクッションも復活して安心した。いやぁ今日もし夫がいなかったら、と思うとゾっとする。感謝しかない。私だってたくましくならなきゃ、とは思うものの、生理現象はどうにもできないから。


夫よ、私の足りない部分を全部補ってくれてありがとう。息子よ、ただただ今日も、生きていてくれてありがとう。