図書館で借りた本を返す前にもう一度ページをめくると、1回目はスルーしていた、なかなかグッとくるフレーズを発見し、
自分の中での評価を改めねば、なんて思うことがままあります。
嬉しい発見です。
ぺらぺらページをめくるつもりが、
どっぷり再読にハマって思いがけず時間が経っていたりします。早く寝なきゃ。
ちなみに今回の本のチョイスはすごく偏っており、
それは電車の中で読む本がなくなって出勤前に慌しく図書館に寄ったせいなのですが、
受け付けカウンターのすぐソバの、
「ア行」のコーナーで目に付いた本を深く考えず手に取って来ました。
浅井リョウ、阿部夏丸、天野祐吉、伊坂幸太郎。
この方法だと、普段の自分だったら進んで読もうとはしないだろうな、
という作家の本を選ぶ方が多いです。
今のところ、「読んで失敗だった。時間返せ」みたいなハズレを引いたこともないし、
面白いからしばらく続けてみようかなと思っています。
ちなみに、先日感想を書いた『桐島、部活やめるってよ』は、
二度目に目を通した時の方が面白かったです。
最後まで読んでからもう一度冒頭に戻ってよく読むと、
いろんな登場人物の、いろんな感情が、だいぶ奥行きを持って交差しているのがわかります。
前回はそこに書かれていることの全てが、
「スクールカースト」を軸にしているような気がして、
思わず私もそのことばかりに着目してしまいましたが、
そこじゃなくて、もっと、
ふとした心理描写とか、放課後の風景とか、あの頃吸っていた空気とか、
味わうところはいっぱいありました。
他に興味深かったのが伊坂幸太郎で、
私は彼が苦手なんですが、同じく伊坂幸太郎を苦手な人が、
「伊坂は苦手だが、陽気なギャングシリーズだけはよかった」
と言っていたのを思い出し、ギャングシリーズも含め何冊か借りてみました。
氏の作品の何が特に苦手かというと、
以前もBlogで書いた気がするけれど、登場人物同士の会話です。
むずむずする。
氏はよく、村上春樹の影響を受けていると言われていますが、
本人がいくら否定しようと、私もそう感じます。
村上春樹は私の好きな作家で、
たまに「村上春樹の気取った文章が気持ち悪い」との悪評を見ても、
私にはさっぱり理解できません。え、どこが?と思います。
でも、伊坂氏の文章に対するむずむず感、
これが、アンチ村上春樹の人々の感覚と似ているのかな、とちょっと理解できる気もしました。
私は村上春樹はOKだけど伊坂幸太郎はNGで、
これはもう、本物と偽者ぐらいの違いが私にとっては、あります。
(実際には伊坂氏は伊坂氏で、決して村上春樹の偽者ではないのだけど)
で、うまいんだろうけど、やはり苦手だな、
と再確認する読書体験にはなったのですが、
私も前述の「伊坂苦手派」の1人と同じく、
陽気なギャングシリーズだけは楽しく読めました。なぜかしら。
シリーズと言っても、続編が1冊出ているだけですが、もっと出て欲しいです。
ロマンはどこだ。
『広告みたいな話』は平成二年、今から20年以上も前に発行された本なのに、
さすが広告批評の天野さん、
今読んでも「そうそう、そうなのそうなの!」と、
彼の手を握り締めたくなるような文章が散りばめられていました。
阿部夏丸の『泣けない魚たち』こそは、
私が能動的には絶対に手に取らないであろう類の小説でしたが、
これがまた、読んで良かったなあとしんみり思える名作でした。
15歳の夏に友達の友達の家の近所の川に行って、
皆で魚を食べたことを思い出しました。
その友達の家は山の中腹にあって、
そもそも田舎にあった自分の家からさらに1時間ぐらいバスに乗って行きました。
運賃を降りる時に払うタイプのバスでしたが、
小銭を持っていなかった私は、
バスが赤信号で止まったらお金を崩そうと思っていたのに、
結局その道には信号機がひとつもなくて(つまり信号機がないぐらいの田舎で)、
停留場に着くまでそわそわしながら千円札を手にしていたことを覚えています。
その川で私達は、落ちていた木と石を拾ってモリをこしらえ、
アマゴという魚を獲って、火を起こして焼いて食べたのです。
時代は平成で、もう高校生だった私は雑誌CUTieを恭しく読み、
同級生よりも可愛いワンピースを着こなすことに精を出したりしていましたが、
川辺のごつごつした石の上ではそんなものどうでもよくなって、
「共存」で奮発して買った白いスカートで川の中にじゃぶじゃぶ入って、
ぎゃーぎゃー笑っていました。
『泣けない魚たち』を読んで、
その思い出が自分にあって良かったと思ったし、
そういう思い出があることが自分にとってどれだけ大切かを考えました。
そんな風に自分を投影しなくても十分に瑞々しくて良い小説なのですが、
思い出す川の匂いがあることで、
こうすけとさとるの秘密基地や、先生の語る魚の魅力が、
もっとずっと、胸に迫ったのです。
泣きたい魚はどうやって泣くのかな。