フェリー乗り場周辺を歩き回った結果、1時間後のバスを待つ間にすることもなさそうでした。
そう遠くない距離に見えていたお椀型の山・・・あれに登ってみよう!と、
トラックの運転手さんに道を尋ねて意気揚々と出発。
それは実際には山ではなくて Soames Hill という名前の丘なんだそうです。その佇まいは私達から見ると “お椀型” ですが、
こちらの人からは “ドアノブ” と呼ばれているみたいです。

大自然の匂いを吸い込みながら道を登って行くと、今フェリーで渡って来たばかりの海が美しく向こうに広がり、
鳥が飛び花が咲き木々が風に揺れ、その真ん中で最高の気分になりました。
♪ 歩いていこう どこまでも 苦しくても 悲しくても. 春が来れば 花も咲く
小鳥もさえずる 大地じゃないか. 歩いていこう 歩いていこう ♪
人の姿がまったく見えないので、ハナ歌にも力が入って熱唱です。
正しい道がわからぬままとにかく丘を目指して進みました。
道が分かれている場所ではお互いのカンを信じて進みました。
最初の1時間ちょっとは “元気の塊” です。

途中でどう考えても馬の糞としか思えない山盛りの糞を二山ほど発見しました。果たして今自分達の歩いている道が正しいのかどうかの判断もそろそろつかなくなってきており、
もしかして人が立ち入ってはいけない場所に足を踏み入れているのでは?
という悪い予感が脳裏をよぎり始めたのでした。
そんな時に突然、本当に突然、犬に吼えられてオバケのQ太郎並みにビビってしまい、
なんの名残惜しさもなく来た道を引き返してしまった私。
その瞬間はもう 『流れ星 銀』 に敵として登場する、やたらにでかくて強い野犬の群れのことしか考えられなくなり、
心の底から恐怖におののいていたのです。
漫画の続編の 『WEED』 シリーズに至っては熊みたいにでかい犬とかロボットみたいな犬とか、
我々にはとても太刀打ちできそうもない野犬ばかりが登場するのですから、
右も左もわからない山道でいきなり犬にわんわんと吼えられた私に、
“逃げる” 以外の選択肢などないのでした。
しかし勇敢(?)な友人になんとかなだめられ辛うじて硬直状態を保っていると、どこかから飼い主らしき人の声が。
人間の声!なんか懐かしい。
で、そのオバサンに一応話しかけてみるとどうやら私達の進んでいる道は正しいようで、
さらに頂上への道も教えてもらって、私の元気も再び息を吹き返したのでした。
水も食料もなく2時間以上歩き続けてちょっとだけ心細くなり始めていた私にとって、
自分達が迷子ではない、という情報は非常に頼もしいものでした。
しばらく行くとオバサンの教えてくれた通り階段が見えてきました。
全部で200段ぐらい、
それを「えいやえいやっ」と上って行くとついに頂上に到着です。

おおおー!頂上はとても狭かったけれど王様になったみたいな眺めでした。
どうも後から調べたところそこはせいぜい40分ぐらいのハイキングコースのようです。
私達の他には家族連れみたいな4人組がいて優雅にワインを飲んで酒臭くなっていました。
私達のあの大冒険はいったい・・・
かなり心が満たされて、そういえばもとはと言えば次のバスが来るまでの1時間、
時間を潰したかっただけだったことを思い出しておかしくなりました。
時計はとっくに夕方ですが辺りはまだ昼間のように明るく、
冒険に味をしめた私達は往路とは別の道を選んで下山することに。
今度はまるで 『もののけ姫』 じみた湿った山道を歩いたので、
かたかたかたかたかた・・・、と木霊の真似をしながら楽しく進みました。
その道が合っているという保証はどこにもなかったけれど、
もし行き止まったら引き返せばいいんだしと思うと気が楽になったのでした。
道なき道をとりあえず下へ下へとくだって行くと、
かすかに車の音が聞こえてきました。
ついに舗装されたコンクリートの道路が見え始め、
「道路だー!!」
と言って視界が開けた時のあの感動は忘れられません。
最初に見えたお家。
その必要もないのに自ら遭難者の気分を堪能。それでさすがにもうおとなしく道路を引き返せばいいのに、
すっかり冒険の虜になった私達はそのまままた別の、“舗装されてない道” に向かいました。
しばらく草を掻き分けて進んで行くと・・・

「海だー!!」私達が乗ってきたフェリーが遠くに見えます。感無量です。
さて。
それからどうしたかと言うと、フェリーとは逆の方向に見えた街を目指して、
海岸沿いを歩きだしたのでした。

海岸がうねうねと曲がっており、目的地まで道が続いているのか定かではありませんでしたが、なんだか道は続いているような気がしました。
とにかくどこかにはたどり着けるのです。

フォ、フォーク?ここが夏の間に人気の観光地だということをこの時点では知らなかったので、
立ち並ぶ可愛らしい家の荒れ果て方に妄想を繰り広げ、
“死んだ街” みたいなそんなストーリーを脳内で創作していました。

家々の窓ガラスがどれもこれも激しく割られまくっていたため、BGMは尾崎豊でした。