いつものマッサージをしてもらいに新宿へ向かう途中、
乗っていた電車が止まりました。

笹塚で人身事故がありました、と車内アナウンスが流れた途端、
あちこちで電話をかける声が聞えて、
電車の遅延で遅刻は大変なことだけれど、
携帯電話が普及して便利な時代になったもんだなぁなどとぼんやり思いました。

ところで今私はどの辺りで止まってしまったんだろう?ときょろきょろすると、
止まっているその駅こそが笹塚だったのでした。

しばらく経つともう一度アナウンスが聞えてきて、
「一番先頭の車両だけはもうホームに入っているので、そこから外に出れます」
とのこと。
えーつまり事故を起こした車両ってことだよね?
と、そのへんのことは結局よくわかりませんでしたが、
電車に乗っていた少なくない数の乗客のほとんどが先頭車両を目指して、
車内にはのろのろ進む長い長い行列ができたのでした。

駅には救急車やら消防車がかけつけているところで、
やっと表に出ると4,5人の若者がスマホで写真を撮ったり、
アナウンサー風の演出で事故現場を動画撮影したりしていました。

不謹慎だなと思ったのですが近づいてみると韓国語を話していたので、
事態の本当のところはあまり理解していないのかしら?
と思って通り過ぎました。
私も外国を旅行する際には気をつけます。


それから駅を出て、マッサージ屋さんに一報を入れ、
私と同じように歩いて新宿に向かうことを決意した一団に紛れ、
新宿に向かってしばらく歩きました。
そしてふと線路の方を見ると電車が動き出していました。

なんという一瞬の解決。

だったらあのまま電車に乗ってればよかったー。
と思いつつてくてく散歩。
今日はたくさん歩いた上にマッサージをしてもらって、
すごく健康になったような気分です。夕方、すっかり通常運転に戻っていた京王線に乗って帰り、
夕飯に餃子をこねました。

餃子を作ろうとして思い出した淡い記憶があって、
それは目白の、駅からさほど離れていない川沿いであったことでした。


今にも壊れそうな灰色のあばら家で、
軒先に七輪があって薄汚れた感じのおじさんが2人におばさんが1人、
地面にしゃがみこんで蜜柑を皮ごと焼いていました。

おじさんの1人は、私の友達のお世話になっている鍼の先生だということで、
今日は餃子パーティをするから、と、
なにやら華やかなものを想像して私も付き合ったのでした。

薄暗いその家の中には大きな寸胴が置いてあって、
中にはキャベツやら肉やらがもりもりと入れられていました。
鍼の先生は中国出身で、
語尾の強い日本語をぶっきらぼうに話すのがまるで何かのコメディみたいに面白かったです。

「日本人がよくやる中国人の物真似」にそっくりな話し方をするのです。
さすがに「~~アル」とかは言わないけれど。

その先生に、鍋に腕ごと突っ込んで具材をぐちゃぐちゃになるまで混ぜるように、
と指示された私はへらへら笑ってうなづき、
その状況を後から友達にどんな風に説明しよう、
なんて考えながら餃子の具をこねくりまわしていました。

パーティどころかそこにいるのは前述のおじさん、おばさんに、
私と友達だけです。
餃子を皮で包む作業は全員で黙々と行われ、
たまに先生が私に、「うん、なかなかいい」などと励ましの言葉をかけてくれます。

数十分後、数え切れないほどの餃子がそこに並び、
それがだんだん焼かれていきます。
美味しい匂いが漂う、でも決してパーティなんかには見えないその灰色の土間。

友達はそこにいた見知らぬおばさんと、
先生の鍼の素晴らしさ、みたいなものを語り合ったりしています。
もう1人のおじさんは皮ごと焼いた蜜柑を皮ごと食べると健康に良い、
九州の方じゃみんなそうしてる、などと説明しながら、
親切に全員に蜜柑をふるまったりしています。

そしてその餃子は本当に不思議なくらい美味しかったのです。
ジューシーで、ちょうど良い塩加減で、
ずっと食べていたいぐらい美味しい餃子でした。

あの餃子には何が入っていたんだろう。

私は二度とその場所に誘われなかったし、
友達の口からあの先生の名前が出ることもありませんでした。
とても不思議な思い出で、
なかなか面白い体験だったにも関わらずなぜか友達にもあんまり話せませんでした。


そんなことをものすごく久しぶりに思い出しながら、
今日作った餃子にはキャベツを入れるのを忘れました。
まぁだけど油揚げとベーコンをからからに炒って、
濃厚なシーザードレッシングを手作りしてふんだんにかけ、
キャベツなしの餃子の代わりに野菜をたっぷり取りました。


ヒロがOBとして参加していたテニスの合宿から帰ってきて、
ばかうけの桜えび味をくれました。
それから、「なんかあんたが好きそうなものを買ってきたよ」と、
レンジで作るポップコーンも一緒にくれました。