「私さ、桜好きなんだ」


ある日唐突に君は言った




「へぇ…何で⁇」



すると目を丸くして私を見る


「ん?何?」



「あ,いや……理由聞いてきたの
理佐が初めてだったから」



「そりゃ…」


好きな人のことは何でも知りたいよ。


なんて言えたらいいんだけど。


「気になったから」


「何か分からないけど、咲いてる時は
あんなに綺麗なのに散っていく様子が
儚くて切なくて…深い理由はないんだけど
とにかく好きなんだ。
何なら咲いてる桜より散っていく
桜を見るのが」


「そっか、散っていく桜が好き。か…」



「やっぱ変⁇」



「んーん、何となく分かる気がする。」


だってその散っていく桜の雰囲気と
君の雰囲気がそっくりだからね。


一瞬でも目を離したら消えてしまいそうな
確かに目の前に存在してるのに、
どこかへ消えていってしまうんではないか
って不安になる程に君は儚い。



「それにね…特に雨が降ってる日の桜ほど
儚くて綺麗なものは無いよ」


「そんなにちゃんと見たことがなかったな…」


「今度機会があれば見てみて」



頷くと君は少し嬉しそうに微笑み
ベランダの窓の外に視線を戻した


雨が降ってる日の桜か…





数日間友梨奈の家にお世話になった時の事を
ふと思い出した、あれは確か…
友梨奈の仕事終わりを家で待っていて
雨が降ってる事に気づいて急いで傘を持って
友梨奈の仕事先まで迎えに行こうと
マンションを出たら、雨に濡れた友梨奈が
丁度マンションの近くまで来ているのが
見えた。


信号待ちをしている友梨奈の遠くを
見つめるその姿が何故か儚くて
心なしかすごく綺麗だと思った。

その短い髪から滴り落ちる
雫たち、少し目にかかった前髪から覗く
感情の読み取れない瞳


信号が青になり私に気付いた友梨奈は
少し驚いた表情を見せ駆け足に私の所へ
向かってきた



「何してんの?」


「傘持たずに出て行ったなって思って」


「わざわざ良かったのに…ありがとう!」

当たり前かのように傘を持って私の方に
傾けてくれるのはこの子のずるい所

「でも意味なかったね」



「いやさ…ぶっちゃけ職場に傘
借りることできたんだよね…」


「何で借りなかったの⁈」


「んー…なんか雨に打たれたい気分
だったからかな」


「風邪引いたらどうすんの」


「明日休みだし⁇」


「そういう問題じゃない」


笑っておどけてみせる君だけど、
一体何を考えているのだろう。
何を思っているのだろう。
何を抱え込んでいるのだろう。


でもね、一つだけ分かることがある。



当たり前かのようにしてくれる今までの
その行動達に嘘はないってこと。
君の純粋な優しさなんだろうなって。



だから惹かれたんだ。


何を考えてるのか分からなくて
一瞬でも目を逸らしたら
消えてしまいそうな綺麗で儚い君の
その純粋無垢な優しさを知って
私は惹かれてしまっていた。







「桜…私も好きになりそうだよ」



あの頃の思い出を少し振り返りながら
そう呟くと君はまた感情の読み取れない
微笑みを浮かべて


「星ってさ届かないから綺麗なんだよ」



ほら、また君はそうやって話を逸らす。



気付いてないようで本当はどこかで
気付いてるから私のこの気持ちを
セーブしてるんじゃないの?



「……そうだね」








私の遠回しの告白を遠回しに
断られてしまった。


無意識?それとも意識的?


ほら、また触れたら消えてしまいそうに
笑うじゃん。




ずるいよね,ほんと


この声はきっと君の耳には届かない。






「ばーか」


「唐突な悪口」



そう言って無邪気に笑う姿は本物だった。












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こりゃまた…筆者の過去の体験シリーズ
でございます。


偶然にもこの前その子に再会することが
できて、変わらず素敵なまんまでした。


桜は変わらず今でも好きだとのことで、
ちょっと思い出しちゃったので小説に
しちゃいました…
(毎度の事ながらすみません…)


じゃあ,また近いうちにモノプリアナスト
の続きを投稿いたします。
多分…。(おい)




ynke