「友梨奈…無理して話さなくていいよ」


「大丈夫」


「でも…」


「あのな、飛鳥…これは私が自分の意思で
やったことであって飛鳥がそれで責任を
感じることはない」


ベッドの上半身部分を起こすボタンを押して
座ってる形になった友梨奈
それだけでも少し傷が痛むのか
顔を顰(しか)めていた


「ふぅ……だからそうやって
弱気になるな」



「でもこれは…こればっかりは
私が七瀬さんの気持ちに気付かなくて
起こったことだから…」


「まぁそうだな…仮に気付いたとしても
西野七瀬はきっとあのまま間違った
思想で飛鳥を思い続けていたはずだ。
遅かれ早かれあの人が改心してくれる
きっかけが出来て良かったじゃん」


「でも、それは私が変えるべきだった!」



どうして…友梨奈がこんな目に…
そう呟いて涙が出そうになったのを
誤魔化すように俯いた


そんな時ふと頭に優しい温もりを感じた



「だーかーらー、もうそんな思い詰めるな
って!結果的に無事なんだし」



「っ……」



「それに、飛鳥がこうなる方が私は嫌だな」


「えっ…」



「やっと顔上げた」


「……」


「私にとって飛鳥は誰よりも
失いたくない人だから。」


「それって、どういう…」



変に期待をしてしまうからそういうこと
言うのはやめて…


「どうって…そのまんまだよ」



「何それ…」



「ま、今はいいや」


「えー…?」



「ふっ……」



友梨奈がきっと困った表情を浮かべてる
であろう私を見て微笑んだ


そんな姿にも胸が高鳴るんだ



「あの「てちーーー!」」


気持ちを伝えようとしたその時
タイミング悪く愛佳達がやってきた



「え!てちが目覚めてる!!?
え!!嘘!⁇」


「ちょっと…ぴっぴうるさい」



「うぅ…てちー…」


「全く死ぬとかじゃなかったんだから
泣くなよ…」


「愛佳ずっと心配してたんだよ友梨奈」


「りしゃ、それは言わないでいいの!」


「泣いてる奴が何言ってんだか」


「オダナナうっさい!」


「いつ目覚めたの?」


「ちょっと、すずもんこの流れ
スルーですかい⁈」


「もう…愛佳ちょっとうるさい」


「うぅ…別の意味で涙出そう…」


「んー、さっきかな。
あ、目覚めたらナースコールで
知らせないといけない感じ?」


そのあとみんなに見守られながら
軽い触診と問診を終えて…



そこからあっという間に退院の時が
やってきた





退院翌日に風紀委員の仕事が朝早くから
あった為、友梨奈を先に学校で
待っていることにした




靴箱が並んでいるロビーで待っていると
登校してきた他の生徒達から不思議な目で
見られる



まぁそりゃそうか…ここに風紀委員が
居たら誰だって萎縮するよね。


安心してよ、風紀チェックとかじゃないから。


時々おはようございますと
挨拶をしてくれる子達に挨拶を返しながら
友梨奈を待っていると


「やっと来た……」



「平手先輩!!」


友梨奈のところへ向かおうとした時
特進科の制服を着た一年生の子数名が
友梨奈へ声を掛けた


「なに?」


「あの…怪我はもう大丈夫なんですか?」



「まぁ…大丈夫だけど…」



「私丁度、あの場面を図書室から
見てしまったんです」


「そっか」



「私は何も出来なかったけど…
平手さんのあの勇気ある行動に私はすごく
かっこいいなって思いました」


「そう」



「あの……これ…退院祝いを込めた
手作りクッキーと私の連絡先が入ってます」



「……ごめん…受け取れない」



「どう…してですか?」



「…好きな人が居るんだ…」


え……好きな人居たんだ……。
じゃあもう私に勝ち目ないじゃん…。




「それでも、友達関係からじゃダメですか」



「……勘違いだったらごめん、
君が私に好意を抱いてる限りは
受け取れないかな…」


「っ……そうですか………でも、
じゃあせめてこのクッキーは貰って
くれませんか?」


「…分かった……今ここで食べていい?」



「えっ?あ…はい」


可愛くラッピングされた小さな箱から
クッキーを1枚取り出し口に入れた


「うん…美味しいよ、ありがとう」


「っ…\\\\\」


あの優しい微笑みをその子に向けた





やめて……そんな表情…私以外に
向けないでほしい。





こんな醜い嫉妬を隠すように私は
その場から逃げるように離れた