そして迎えた試合当日
県大会まで登り詰めたのは
先輩達のお陰でもある。
だから決勝戦の今日自分らが今度は
先輩達に恩返しする番だ.
試合前に相手チームより先に
体育館に入って軽くアップを始める。
決勝戦だからかいつも以上に
観客達が多い。
そんな時相手チームの応援席から
悲鳴に近い歓声が上がった。
丁度相手チームが体育館に
入場してる最中だった。
相手チームは毎年決勝に進出している
強豪校であり坂上の姉妹校
坂之上学園高等学校
去年は惜しくも負けて
しまったが今回は絶対に負けない。
そんなことを考えていると
向こうもアップを始めた。
「よし、このくらいにして
試合までゆっくりストレッチや
休憩の時間にしよう!」
しばらくして橋本先生から
号令がかかってすぐにアップをやめて
それぞれベンチコートに
戻り汗を拭いたり水分補給を取った。
「橋本、随分余裕そうじゃん」
そう言って橋本先生に話しかけたのは
坂之上の顧問新内眞衣先生だ。
この人は橋本先生のかつてのライバル
らしい。
「試合までリラックスさせとかないと
怪我しかねないからね、体力だって
温存させておかないと」
「そんなすぐ無くなるような
柔な体力じゃ、こっちが勝ったも
同然だね」
その人の言葉で坂上の現場は
ピリついた空気になった。
「私は、貴方とは違う。
この子達の身体を尊重した上で
試合に勝って欲しいと思ってる。
貴方の考えを押し付けがましく
言わないでくれる?」
「は?」
「それに…私は過去も現在(いま)も
貴方に負けたことなんてない。
"個人的"にね」
鼻で笑うように言った橋本先生に
新内先生は一瞬険しい顔をした後
急に、あはは!と笑い出した
急な変化にみんなも戸惑いが
隠しきれてない。
「やっぱ、橋本はそうじゃなくちゃ!
いやー!みんなもごめんね!
気悪くしてしまって」
とウチらに謝ってきた新内先生
「本当、あんたって、何でこう
試すようなことをするかね」
「ごめんってばー!
橋本と私の仲だろ〜?」
「うるさい、早く向こうに戻れ.
あの子達こっち気にして
アップに集中出来てないよ」
「はいはい!じゃ、お互い頑張ろうね!」
と颯爽とその場を去った新内先生
橋本先生は深いため息を吐いた後
苦笑いしながら、ごめんね。と
謝った。
試合まで時間はまだある,応援席からの
声をシャットアウトするように
イヤフォンをさし試合前に
必ず聴いている曲を流し
目を瞑る。
これがウチのルーティーン.
曲が終わり目を開けてイヤフォンを
外す。
さっきよりも少しばかり騒がしく
なっていた。
「てち,これあげる」
「お握り?」
「さっき飛鳥ちゃんと2人で
握ったの,一口サイズだから
食べて元気出して」
「ありがとう、貰うよ」
「いいえ!」
ニッコリ微笑んでその場を離れようと
しない梨加に首を傾げる。
「…何?」
「食べないの?」
「あ、あぁ食べるよ,頂きます」
程よく塩が効いていて美味しい
「うん、美味しい」
「良かった!それは私が握ったの」
「そっか…だから美味しいのか」
「え…⁇」
「ウチらの為に握ってくれたんだろ?
美味しくないわけがない」
「ッ…てちって何かある意味
意地悪だね」
「え、何か悪いこと言った?」
「んーん!他の人にも配ってくるね!」
と言って梨加はまだ貰ってない人に
お握りを配っていった。
ふと応援席を見るとすぐに愛しい人の
姿が見えた。
西野先生はずっとこちらを見つめて
優しく微笑んでくれていた。
ウチが気付いたのに気付くと
口パクで"ファイト!"と
両腕ガッツポーズ付きで
言ってくれた。
その姿が可愛くて思わず
笑顔が溢れてしまった。
そしたら西野先生の前にいた
恐らくウチの高校の人達が
騒いでて西野先生は俯いた。
ー平手さーん!私達にも
笑顔頂戴!ー
という声が聞こえて
そういう事か…
君達に笑った訳じゃない。
って言えたらどんなに
楽だろうか。
ふとまた西野先生を見ると
ぱちっと目が合って
ふとスマホが揺れて
画面を開いてみると
西野先生から
(私に笑ってくれたんだよね…⁇
なんてね!
試合頑張ってね!)
思わず頬が緩みすぐに引き締めた
(ウチが今ここで笑顔を向けるのは
貴方しかいません。
絶対勝ちます。)
と返信しスマホを閉じた。
同時に試合前のミーティングで
集合がかかった。
絶対、勝ってみせる。
先輩達の為に、そして西野先生に
良いところを見せられるように。