あの日観た星空は何よりも綺麗で
その星空を見上げる貴方の横顔は
誰よりも儚く綺麗だった。







「平手さんって星観るの好きですか?」


「え…⁇うん,好きだよ?」


ある日のリハーサル中、休憩の合間に
脈略も無く聞いた私に少し戸惑いを
見せつつも律儀に答えてくれた平手さん


「じゃあ、今日お疲れじゃなければ
少し星を観に行きませんか⁇
スタッフさんが言ってたんですけど、
ここの近くの高台にある公園凄く
夜景も綺麗で星も綺麗に見えるらしいです」


「へぇ…そうなんだ。
うん,たまにはいいね。」


「本当ですか?」


「え?嘘で行くって言わないよ?」


そう言って笑う平手さんは
パフォーマンス中の時とは別人の
年相応の女の子の顔だった。







「夏といえどもここは少し冷えるな〜…」



ホテルの外で待ち合わせをして
平手さんを待っていると
薄手のパーカーを片手に小走りで
やってきた


「ごめんごめん、遅くなっちゃった」


「あ,全然大丈夫ですよ」


平手さん自身は上着着てるのになんで
もう一着持ってるんだろう⁇


「はい、これ」


不思議に思っていると持っていた
上着を私に差し出してきた


「え?」


「いや、さっき外出たら寒かったし
ひかるの姿を見たら半袖だったからさ
一旦部屋に戻って持ってきたんだ、
余計なお世話だった?」


「……全然…寧ろ寒いなって思ってたから
ありがたいです。
ありがとうございます」


「良かった」



「っ……」


優しく笑う平手さんの顔を直視できず
取り敢えず行きましょうかと
先導して歩いた


他愛のない話をしながら目的の場所に
辿り着きその景色に目を奪われてしまった



「綺麗………」


「うん,綺麗だ…でも上見て?
星はもっと綺麗だよ?」


「うわぁ………」



上を見ると夜景とはまた違った
景色が視界いっぱいに広がっていた
息を呑むほど言葉では言い表せないぐらい
綺麗な星空がそこにはあった



「星ってなんでこんなに綺麗なんだろう?」



私がそう呟くと平手さんは
少し考える素振りを見せた後
こう答えた


「人ってさ簡単に手が届かない物ほど
綺麗だと感じる事が多いじゃん?
手が届かなくて触れる事ができなくて
だからこそ儚く綺麗に感じる。
星もそんな類(たぐい)なんじゃないか
って思う」


「なるほど……」


「まぁこれはある人が言ってたのを
そのまま伝えただけなんだけどね。」


そう言って星空に視線を戻した平手さん


いつかフラッと消えてしまうんじゃないか
って感じるのは貴方が綺麗だからなのか…。

少し前まで貴方はとても遠い存在だった。
それは今でも同じグループで
活動させてもらって尚
貴方をどこか遠く感じてしまう。

そりゃそうか…同い年と言えども私と
背負ってきたもの抱えてきたものが
桁違いなんだから。



静かに星空を見上げる貴方は
この星空に劣らず凄く綺麗で儚い。



なんという瞬間、まばたきする事すら
出来ないや。


ジッと見つめていたせいか視線に気付き
私に目を向けた平手さん


「ん?」


「あ,いや……平手さん綺麗だなって
思って…」



「……私からするとひかるの方が
ずっと綺麗で純粋でこの先もそのままで
居て欲しいって願ってるほどにね」


やっぱりこの人はこの短い人生の中で
数多くの景色を見てきたんだろう。
その中にはきっと真っ暗でどす黒い景色も
入ってるんだろう。
だからこそ私に対してそんな言葉を
掛けることが出来るんだ。


あぁ…叶うことなら今すぐにでも
その大きいようで小さい背中を
抱き締めてやりたい。


「…ねぇひかる…」


「はい…⁇」



「引いちゃうかもしれないけど、
今ここでひかるのこと抱きしめてもいい?」


………幻聴かな?



「ん、あれ?もしもーし?」


「ハッ!え?」


「あ,やっぱり…引いた?
ごめん!!!忘れ…うぉっ!!!!」

平手さんが言い終わる前に平手さんの
胸の中へ突っ込んだ。


「引くわけないじゃないですか…」


「………ありがとう」


そう言って私の背中に腕を回した


あぁ…なんて優しく温かいのだろう。

それに私が苦しくならないように
腕の力を緩めてくれてるし。

全然もっとギュッと抱き締めてくれても
いいのに…なんて思ってしまったけど。

「…落ち着く…」


「それは良かったです」


「…ひかる…このグループに入ってくれて
出会ってくれてありがとう」


「えっ…」



「私には出来なかったこと
ひかるならきっと出来る」



「どういう…」


抱き締めるのをやめて私の顔を見た
平手さんの表情は今までで1番儚かった。


「気負いすぎずにひかるらしく
このグループ引っ張っていってね」


そう言って頭にポンっと手を乗せた
その手は温かくて優しくて
何故か目に涙が浮かんだ。


「私はまだ…平手さんと…」


「……………何言ってんの、
まだこのグループには居るさ」















そう言ってたのに半年後に貴方は
このグループから去っていった。










ねぇ、平手さん…⁇


また一緒に星を観に行きましょうよ。



またもう一度私を抱き締めてください。
今度はもっと強く離れないように
私も貴方を抱き締めるから……。













ひかる
君と観たあの星空はずっと忘れないよ?


次があるならまた違う星空を観に行こう。


そして今度は離さないように君のこと
強く抱き締めるよ。


同い年で後輩の君を私は
特別に想っていたよ。


一目惚れだったのかもしれない。




グループから…君の元から去った
私を許してください。




また成長したら迎えに行かせてもらうよ?















ー待っててーー待ってますーー





















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またしても短編を先に書いてしまった…。
初めてのコンビですね。
1期生の推しと2期生の推しです。笑