今日は久しぶりに料理をすることができた。

 

包丁を持ってキャベツや豚肉を切るのは何年ぶりだろう。

 

 

 

 

社会人になって十年近くになったが、

平日にスーパーマーケットへ行くことがどれだけ難しいことかを知ったし、

夜のキッチンに立つような気力体力は残らないことも知った。

 

新生活に心を躍らせて買いそろえた調理器具は

もう随分長い間仕舞ったままだった。

 

 

 

 

今夜はフライパンで焼きそばだ。

 

 

 

 

 

数年前、貧しくストレスフルな生活をおくっていた頃

 

ろくに食事も摂らず、ほとんど水だけで生活していた頃

 

 

そんなある日に、気まぐれで焼きそばを食べたことを思い出す。

 

 

 

 

どこにでも売っているような焼きそばの生麺を

 

 

フライパンで加熱して付属の粉末調味料を振りかけて

 

一口食べると

 

 

おなかが「きゅ~」と音をたてた。

 

 

食物を吸収しようとして胃袋が懸命に活動し、

 

消化する快感に全身が震えた。

 

 

 

その日、一人キッチンで食べた焼きそばが、

 

具材も殆んど入っていない焼きそばが、

 

親元を離れて食べたご飯の中で

 

最もおいしいかった。