休日を丸一日つかって、
幼少期を過ごした町を訪れた。
この二十年余りで土地開発が進められたのであろうか。
住宅地は、比較的あたしい建物が目立つようになり、
昔に比べると人通りも増えたような気がした。
そんな住宅地の中に、
小学校の運動場ほどの広い公園がある。
私がまだ子どもだったころは、
近隣のお年寄りが日課の散歩する以外、
ほとんど利用されていなかった、そんな公園だった。
私の家のすぐ目と鼻の先であったうえ、
ほかに近くで遊べる場所もなかったため、
私はよく弟を連れてその公園へ行った。
今日、この公園の門をくぐってみると、
奥の方に一組の親子連れがいるのが見えた。
小学生くらいの男の子ふたりと、
三十代半ばくらいのお父さんであろう。
どこから持ってきたのやら飲料の缶を地面に置き、
一人がしゃがみこんで数を数えている間に、
残った二人はそそくさとプラタナスの木々の幹に隠れていった。
私は門から園内に入ってすぐそばの、
古い木製のベンチに腰を掛けて
しばらくその遊びを眺めた。
彼らの背後には、私たち家族が過ごした場所が見えた。
しかしその場所には、かつて暮らした家屋が今は無い。
町を彩る家々は変わっていくけれども、
公園の木々と遠くの山々は、景色に昔の痕跡を残していた。
藤棚の柱の影が足元にとどくまで、
私はベンチに座り園内を眺めていた。
暖かい春の陽気が、公園の木々を包んでいた。